道路構造物ジャーナルNET

2019年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ④巴コーポレーション

戦略的には利益重視で積極展開 「人材確保」で社外発信力を強化

株式会社巴コーポレーション
代表取締役社長

深沢 隆

公開日:2019.09.17

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第2回は、巴コーポレーションの深沢隆社長と日本ファブテックの小野重記社長の記事を掲載する。

 ――昨年度の業績は
 深沢 売上高325億8,000万円、営業利益32億円、利益率9.8%となり、まずまずの業績を収めることができた。
 ただ、建築鉄骨では特に工事労務費の高騰、鋼橋では技術提案履行費用が想定よりも嵩むなど、採算の足を引っ張る形となった。生産消化に汲々として、コスト競争力向上の取り組みが疎かになったと総括できる。
 ――今年度の業績見通しは
 深沢 今年度は、中期5ヶ年経営計画『NEXT5』の最終年度に当たる。
 この中期経営計画においては、売上高320億円、営業利益22億円、利益率6.9%を、また、令和元年度の事業計画においては、売上高385億円、営業利益26億円、利益率6.7%を目標としている。
 対前年度増収増益を狙いたいところであるが、①日米貿易戦争の余波を受ける形での大型総合建設案件の期ズレ、②建設市場環境の変化に伴う生産量目確保、かつ追加工事金獲得の苦戦等から、7月に社外発表を行い、完工高290億円、営業利益17億円、5.9%に下方修正したところである。
 ――具体的には
 深沢 建築鉄骨は、首都圏を中心に大型案件計画が目白押しである。しかしながら、①米中貿易戦争による余波、②少子高齢化が進むなかでの住宅系の開発が主体であること、③現段階のいわゆる『端境期』におけるゼネコン受注競争の激化――などの懸念材料があり、過度な期待はかけられない。
 弊社の得意とする大空間構造においても、少なからず影響を受けることから、今後の動向を注視したい。
 橋梁は、昨年比較的多かった『一括発注方式』の恩恵に浴する形で、順調に受注を伸ばすことができたが、今年度は国交省の上期鋼橋発注量が例年になく少なく厳しい展開となる。
 鉄塔は、経済産業省の指導で東北、東京、電源開発の電力3社で4万7,000tを共同調達することになっている。すなわち、労務費高騰の状況下にあるにも関わらず、狙いは電力料金値下げにターゲットを絞ったコストダウン要求であり、熾烈な価格競争が予想される。鉄塔のパイオニアを自負する弊社としては、どのように対処すべきか実に悩ましいところである。
 ――そうした課題に対する対応策は
 深沢 従前通り、戦略的には、売上高には拘らず、利益重視でやっていく。
 営業的には、まずは得意分野において保有技術を活用した優位的営業展開により生産量目をどれだけ確保できるかにかかっている。
 不足分については、無理した競争はできるだけ回避する形での補填を図る。この際にはグループ間、あるいは事業部門間で要員交流等の調整が必要となる。
 いずれにしても、最終段階ではコスト競争を強いられることから、①事前検討の充実、②ソフト、ハードの整備――など、局面打開に向け真正面から取り組む必要がある。
 また、当社特有の鉄塔あるいは鉄構エンジニアリング事業においては、価格競争に巻き込まれない形での事業の推進強化を図っていく。そのためには、自社技術の活用方法がキーポイントであり、技術開発にしっかり取り組みたい。
 働き方改革の取り組みとして、すでに①休日取得を含めた待遇見直し、②工場管理棟、寮・社宅等の整備、③工場棟の耐震補強と併せた形での作業環境改善――を鋭意進めている。また、女性活躍についても推進を図っている。
 しかしながら、生産効率の向上あっての働き方改革であり、今までと違う着想や取り組みが求められており、現場で働く人の知恵やアイデアを結集した形で進める必要がある。
 また、人材をどれだけ確保できるかが今後、企業の生き残りをかけた大テーマとなる。そのための社外発信力強化を含めた対策を継続していきたい。


YSアリーナ八戸
(聞き手=大熊稔、文中敬称略 2019年9月17日掲載)

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