2019年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ③日本ファブテック
工場再編で内製化を推進 自社商品の拡販も積極化
日本ファブテック株式会社
代表取締役社長
小野 重記 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。第2回は、日本ファブテックの小野重記社長と巴コーポレーションの深沢隆社長の記事を掲載する。
――業界の現況について
小野 首都圏を中心に大型再開発が数多く計画されているが、足元では東京五輪関連施設の鉄骨製作が完了し、次なる大型案件はオリンピックイヤーである来年はあまり動かない。よって、工場の鉄骨製作の山積みは2割程減少し、今年度後半から来年度にかけて端境期に入る。一方、計画のずれ込みなどで21年度に大型案件の着工が集中する見通しとなり、その鉄骨製作が集中する22、23年度はわれわれファブがもう一度大きな山を迎える。
鋼橋は、昨年度の受注が堅調だったため、今年度の工場稼動は順調に推移する見込みだ。ただ、今年度の新設橋梁の発注量は前年度比で少なくとも20~25%落ち込むとみており、受注面での苦戦が必至な情勢にある。
――前年度の業績は
小野 18年度の受注高は当初目標を上回る497億円となった。構成比率は鉄骨39%、橋梁61%。また売上高は470憶円、経常利益は24億円だった。昨年度は工場の山積みが高くて大変な1年だったが、原価低減の推進効果などで特に鉄骨の収益が改善し、利益の確保に貢献した。
――工場の体制の変化は
小野 取手工場(茨城県)の工務部隊と設備の一部を千葉臨海工場に移し、今夏から千葉で鉄骨の柱加工を開始した。千葉でのセグメント製作が終了する来年8月以降は、取手の柱ラインをすべて千葉に移し、同工場で柱を年間7,000t以上加工する。それに伴い取手の鉄骨部門は大型の梁製作に特化した体制に移行する。これから出てくる大型案件の梁せいは1,200~1,400mmに達するものが多いため、それら大型部材に対応する一次加工ラインを来年7月までに新設し、梁だけで年間8,000~1万tを加工する計画だ。また今年3月に、それまで別会社だった石下工場(茨城県)を弊社第5の工場とし、Mグレードを取得した。
――今年度の業績目標は
小野 売上高は450億円。受注目標は、前述した新設橋梁の受注環境の厳しさや鉄骨発注の端境期などを考慮して、前年度を大幅に下回る380億円としている。部門別の受注目標は重量ベースで鉄骨6万t、橋梁1万5,000t。この最低限の受注量で3~3.5%の経常利益を確保することが、将来に向けたビジネスモデルのベースになると考える。その達成に向け、工場や設計の生産性向上、年々上昇している固定費の圧縮等に努めていきたい。
――今年度の設備投資は
小野 千葉臨海工場は仕口用溶接ロボットを1台増設するほか、天井クレーンを追加。取手工場は梁加工ラインの新設とともに、老朽化した橋梁製造装置の更新、また各工場の事務所の建て替えを、熊谷を手始めに3年計画で進める。
飯能茜台大橋
――自社商品の動きは
小野 熊谷に置いていたCAD/CAMシステム『KAP』とスリーブ孔補強工法『EGリング』の事業部門を、弊社親会社である清水建設の本社近くに移転した。KAPシステムの販売に加え、鉄骨の積算や鉄骨製作の一般図作成などの業務を、同システムを活用しながら展開していく。またEGリングは、取り付け時の溶接量を大幅に削減し、施工性を向上させた改良版を発売した。現在、拡販に向けて営業を積極化させるとともに、設置可否判定ソフト搭載CADの拡大などにも取り組んでいる。
――今後の抱負を
小野 取手と千葉の再編が完了する来夏以降は、外注に頼ることなく年間6万tの鉄骨を自社で賄える体制が整う。品質の確保、トレーサビリティーの明確化、そしてコスト競争力を一層高めるためにも、可能な限り自社生産一貫体制の実現が私のものづくりの基本的な考え方。また一方では、10年、15年後に向けた事業の長期ビジョンを40代社員によるワーキンググループを立ち上げ、検討を始めた。
(聞き手=田中貴士、文中敬称略 2019年9月17日掲載)