道路構造物ジャーナルNET

オール水性塗料で安全性・環境性を向上させる

首都高速 鋼橋塗装設計施工要領改訂の詳細について聞く

首都高速道路
技術部長

大塚 敬三

公開日:2019.08.30

安全対策も明文化
 受発注者とも責任者を明確化

 ――要領改訂では、発注者でありながら安全対策も明文化していますね
 大塚  当社の現場では2度火災事故が起きてしまいました。また含鉛塗料を除去する現場での鉛中毒も起きています。安全対策については、法律上は受注者の責任であるわけですが、そうした事故の経験から、今回、発注者としても安全対策に関わるよう踏み込みました。
 ――発注側としても安全へ踏み込んだことで、現場を把握する義務が生じてきますが
 大塚  社内的にも職務命令を出し、各局、および工事事務所ごとに火災や有害物質に関する安全対策を管理、監督する者を配置し、責任を明確にしています。安全対策の管理、監督にあたっては土木工事安全衛生管理指針に基づき管理を行います。
 既設塗膜に鉛が含まれる場合は、法令に基づき、受注者には、鉛作業主任技能講習を修了したものを鉛作業主任者に選任することを求め、鉛を吸引・接触しないように指揮し、鉛粉塵対策の設備、装備、施工法を毎週1回以上チェックリストで点検させています。また、鉛中毒の初期症状について理解し、毎朝KY(危険予知)で自覚症状者がいないことをチェックリストで確認させています。
 また、作業班ごとに保護具着用管理責任者を選任し、電動ファン付きマスクの作動確認、フィルタの目詰まりの有無をチェックリストで確認させています。

設備・装備・廃棄物処理についても細かく規定
 外国人労働者にも配慮した現場内表示を併記

 ――設備面は
 大塚  鉛粉塵発生区域との境界部に更衣室、洗身室、前室の3つで構成されたセキュリティルームを設けて、各部屋にその役割を明記しています。洗身室にはエアーシャワー、エアブロー、靴底洗浄機もしくは粘着マット、ウエットティッシュを常備し、HEPAフィルタ付き真空掃除機で1日1回以上清掃し、これをチェックリストで管理させています。


セキュリティルーム例(Ⅲ-32)

セキュリティルーム例図(Ⅲ-36)

 鉛粉塵発生区域の入口(セキュリティルームの入口)に喫煙、飲食の禁止表示を含む警告標識を表示させています。鉛血中濃度60μg/dl以上の者は作業の有無、滞在時間に関わらず鉛粉塵発生区域に立ち入らせていません。また、鉛粉塵発生区域の鉛濃度を1年以内毎に1回測定し、0.05mg/m2以下であることを確認しています。
 鉛粉塵発生区域内に小さく仕切った作業空間を作り、素地調整作業は、その中で作業させています。作業空間内は負圧集塵機で負圧環境を維持する「プル換気方式」を採用しています。作業空間は毎日作業終了時にHEPAフィルタ付き真空掃除機で清掃させています。
 15分以内で作業空間の空気を入れ替える計算と、その結果に伴った負圧集塵機を配置し、1ケレン作業員に付き1吸引ダクトを配置して、粉塵の拡散を防いでいます。
 作業空間ごとに粉塵濃度(カウント値)をデジタル粉塵計により測定し、320を超えた場合は、その原因を確認して是正しています。
 鉛粉塵発生区域外に休憩室と手洗い設備を設けています。手洗い設備に硝酸水溶液、石鹸もしくは手洗い用溶液、つめブラシ、うがい液を常備し、鉛粉塵発生区域外に出たものは速やかにこれを用いて手洗いおよびうがいをさせています。
 休憩室の床面などは、毎日1回以上HEPAフィルタ付き真空掃除機もしくは湿潤化した使い捨て清掃用不織布を用いて清掃し、これをチェックリストで管理させています。

 ――装備については
 大塚  ブラスト以外の作業を行う場合、鉛粉塵発生区域に立ち入る者は作業の有無、滞在時間によらず電動ファン付きマスクを着用させています。さらに動力工具を使用する作業員はフルフェイスタイプの電動ファン付きマスクを着用させています。フィルタ交換のランプが点灯したら速やかに作業を停止し、フィルタを交換させています。フィルタは粒子補修効率0.3μm粒99.97%以上の専用フィルタを使用させています。使用した電動ファン付きマスクは、ウエットティッシュなどで清掃し、鉛粉塵発生区域外に保管させています。循環式ブラストを施工する場合は、法令に基づき、送気マスクを着用することになります。

 鉛粉塵発生区域に立ち入る者は、作業の有無や滞在時間に拠らず、防護服・シューズカバー・防護手袋を着用させています。防護服はJIS T8115の浮遊個体粉塵防護密閉(タイプ5)以上に適合し、帯電防止機能を持つ、化学防護服を使用させています。一度脱いだ化学防護服・シューズカバー・防護服は再利用せずに処分させています。

 ――廃棄物の処理はどのようにしていきますか
 大塚  除去した塗膜片とそれ以外(防護服、養生シート等)は分別して梱包し、梱包物名を容器面に油性ペンで記載させます。塗膜片は作業日ごとにUNペール缶など指定容器に梱包させています。梱包した廃棄物は速やかに指定の場所に搬出することを施工計画書に明記させ、実施させています。

 ――健康診断は
 大塚  鉛粉塵発生区域内で作業する者の雇い入れがあった場合もしくは配置換えにより、鉛粉塵発生区域内で作業することになった者は、その作業種別によらず6カ月以内毎に鉛健康診断を受診させることを確認します。鉛健康診断で鉛血中濃度が40μg/dl以上の者は速やかに医師の意見を聴取し、その結果を受注者が確認していることを確認しています。鉛健康診断を受けた者に対し、診断結果を遅延なく通知していることを確認しています。

 ――4月から外国人労働者の受け入れが拡大しています。先の鉛血中濃度に関する労働災害を考慮しても、彼ら彼女らへの周知は大切だと思いますが
 大塚 そう思います。まずは自分たちの雇った外国人労働者の国籍や言語は当然把握してもらい、彼ら彼女らが働く現場内の表示には、彼らの母国語を併記するようにしてもらいます。

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