塗替え 2018年度は24橋14,040㎡、19年度は33橋20,974㎡を施工
耐候性鋼材は104橋、健全度Ⅲは新伝法大橋
――2018年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)と、2019年度の鋼橋塗り替え予定(同)は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でも良いので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から2014年5月30日にでた文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
橋本 2018年度は鋼橋24橋に対して14,040㎡の塗替(うち、5橋で一部溶射)を行い、国道2号 魚橋第1高架橋(上)等で、塗膜剥離剤により実施しました。2019年度は鋼橋33橋に対して20,974㎡の塗替(うち5橋で一部溶射)を予定しています。
魚崎第1高架橋の塗り替え状況
――もう少し具体的に聞きたいのですが、塗り替えは現在どれくらいの素地調整を基本としていますか。また1種ケレンの場合は基本的にブラストを必要としますが、そうした際はどのような塗膜処理+素地調整方法で施工しているのでしょうか
橋本 鉛、PCB等有害物を含む既設塗膜の除去方法は、塗膜剥離剤を用いた工法を標準とし、鉛、PCB等有害物除去後の素地調整工程は塗替時の塗装仕様によりブラスト又は動力工具を用いたケレンを行うこととしています。
――もう1つ耐候性鋼材は主にどのような部位が損傷しているのでしょうか。また補修方法はどのような手法で対策を施しているのでしょうか
橋本 耐候性鋼材について管内では104橋の橋梁に採用されています。 2018年度までの点検結果によると、健全度Ⅲが1橋、Ⅱが37橋あり次回点検までに対策を検討中です。
健全度Ⅲの橋梁は、大阪市に位置する国道43号の新伝法大橋ですが、1968年供用の橋長860.3m、13径間の単純鋼合成2箱桁橋で、このうち4径間目の箱桁を横に繋ぐI桁に腐食が確認されました。橋面からの漏水がこの箇所に集中したもので、H27年度に橋面防水工事を実施しており、腐食箇所について、鋼板当て板工事を実施する予定です。
新伝法大橋の損傷状況
昨年7月豪雨で国道27号が2日間全面通行止め
ドローンなどの技術を用いてスクリーニングしたい
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、整備局として道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください
橋本 大雨や台風等による土砂崩れや落石等の恐れがある箇所については法面工など安全性を高める対策を実施しています。
1996年度に道路防災総点検及び2006年度にその再確認を行っており、それらの結果を踏まえて継続的に対策を実施してきたところです。また、昨年も大規模な災害がありました。当整備局でも7月豪雨の際に国道27号が京都府の舞鶴市真倉で崩れて、2日間全面通行止めし、4~5日間片側交互通行を余儀なくされました。しかも同箇所は事前通行規制区間外でした。
国道27号の京都府舞鶴市真倉付近の崩落状況
同仮復旧状況
各地の甚大な災害を受けて政府では「防災・減災 国土強靭化のための3か年計画」を策定しており、当整備局でも重要インフラの再点検を行い、その結果を踏まえて対策を進めていきます。
のり面や斜面対策は同計画中の主要な対象となっています。緊急輸送道路や被災すると集落が孤立する恐れのある道路に面している斜面やのり面に対して、手厚く予算配分して3か年で集中して対策を進めていきます。昨今の雨の降り方の変化を考慮して、事前通行規制区間外であっても、不安があるのり面や斜面は対象に入れていきます。但し、こうした斜面やのり面は広大な山地の中にたくさん存在します。これらを人の手だけで点検することは困難です。こうした個所こそドローンなどの技術を使ってスクリーニングできないか模索するべきではないでしょうか。
――主な対策工法は
橋本 法枠工や落石防護工などです。ただ、それをやったからといって完全に斜面からの落石や大規模崩壊を完全に止めることはできません。例えば施工対象よりさらに上に民有地がある場合、そこは手付かずになる可能性が高く、もらい災害を受ける可能性もあります。そのため、本省では我々が所管している範囲に加えて沿道の(民地の)利用の仕方(規制)も次のステップとして考えています。
点検支援技術を試験的に採用
橋梁点検支援ロボットやJシステムなど
――新技術や、コスト縮減策または県独自の新技術・新材料などの活用について(具体的なNETIS活用技術の紹介などもお願いできましたら幸いです)
橋本 橋梁点検に関して新技術を取り入れています。橋梁定期点検要領が今年3月に改訂されたことにより、(点検ロボットなど)点検支援技術が活用可能になりました。そこで今後、どの部分にどの技術を活用することが真に効率化となるのか、方向性を見出していきたいと考えています。
近畿地方整備局では「橋梁点検支援ロボット」(QS-170024-VR)と「赤外線調査トータルサポートシステム Jシステム」(SK-110019-VE)を試験的に使っています。「橋梁点検支援ロボット」は、橋梁点検で、点検員の立ち入りが困難な箇所の土砂、汚れ及び錆などを取り除く噴射機能や自由度のあるロボットアーム先端に小型カメラを取り付けてうきや剥離、ひび割れなどの点検を支援するロボット技術です。「Jシステム」は、離れた場所から赤外線カメラにより点検対象を撮影し、解析を行うことで、うきや剥離を検出する技術です。
姫路大橋で疲労亀裂対策として当て板補強
住吉橋など3橋を架け替え
――最後に長大橋の補修補強は。先ほどの堺高架橋や国道2号の姫路大橋などがあると聞きますが、その対応状況について
橋本 姫路大橋は橋長が252m、上部工形式は単純合成鈑桁(6連)です。損傷状況および原因として、主桁、縦桁の亀裂(疲労)、塗膜割れが発生しており、一部MTを実施し亀裂を確認、削り込みを実施しました。それらを踏まえて補修設計を行い、H30年度に現時点で確認された全ての塗膜割れ(4223箇所)についてMT調査を行い、発見された疲労亀裂(783箇所)について全て削り込みを行い、一部あて板補強(44箇所)を施工しました。疲労亀裂対策について、あて板補強を引き続き実施予定です。
市川の両岸から撮影した国道2号姫路大橋(井手迫瑞樹撮影)
亀裂のパターン、塗膜割れ(パターン①)の状況、塗膜割れおよび亀裂個所数
削り込み状況
当て板補強工
当て板補強図(左)パターン1、(右)パターン4
補修状況/RC床版も劣化している(いずれも井手迫瑞樹撮影)
また、堺高架橋についてはピルツ・ゲルバー・ピルツという桁中間部にゲルバーを有する吊桁形式であり、耐震補強工事としてピルツ橋脚側に縁端拡幅工事を実施する予定です。
架け替えとしては国道9号若宮橋と国道24号井関川橋を実施します。
若宮橋は亀岡市内の一級河川犬飼川の河川改修に伴う架け替えです。現状は橋長32.7mの単純RCT桁3連の橋梁を、橋長55.5mの2径間連続プレビーム合成桁に架け替えます。これにより河積阻害率を大きく減らします。また、幅員も増やし歩行者や自転車が安全に通れるようにします。現在はう回路(仮橋)の設置中です。
井関川橋は、国道163号木津東バイパスの事業の一環として、道路線形に合わせて架け替えるもので橋長25mの3径間連続RCT桁橋です。現在はう回路に交通を切り替え旧橋の撤去を行っています。
国道26号住吉橋の架け替えも行います。橋長34mのプレビーム合成桁に架け替える予定です。現在は、架け替え工事に支障があるフェニックスの高木を移植している状況です。
住吉橋(現況)
架け替えを選択した
架け替え計画案
加えて一巡した診断結果に基づき、健全度Ⅲでも規模の大きな橋、例えば安治川橋などについては、淀川大橋のような対応ができないか個別に検討していきます。
――淀川に架かっている橋に関しては、過去、津波時や高潮時に被災する可能性があるため、架け替えを検討したこともあったように聞いていますが
橋本 架け替えを行う場合には堤防高に合わせ橋梁を現状より高く設定しなくてはいけませんが、その場合、路面が高くなることとなり、沿道の道路利用に大きな影響を与えます。そのため淀川大橋では現状の橋梁を活用することとし、大規模更新を行っています。
なお、昨年の台風時に潮位が室戸台風を超えて観測史上最高を記録した時、整備してきた陸閘を活用した効果もあり、周辺地域の浸水などの被害が出ませんでした。
猿飼橋を修繕代行
十津川村所管の鋼アーチ橋
――自治体の点検や修繕代行は
橋本 十津川村の鋼アーチ橋「猿飼橋」の修繕工事を行っていましたが昨年6月に完了しました。十津川村では、要請当時に技術職員が3人しかおらず、橋梁経験のある職員が不在で、アーチ橋のような特殊橋梁に対する技術的な蓄積がありませんでした。
現場で損傷状況を確認すると、橋全体で防食機能の劣化が進行しており、アーチ部材でも塗装の劣化、基部の腐食、支承取り付けボルトの腐食に加えてアーチ垂直部材の溶接部の一部で亀裂が確認されました。
そのため防食対策として塗装塗替えや配水管の取替、さらに鋼材の亀裂・疲労対策として当て板補修などを実施しました。
猿飼大橋
――ありがとうございました