4,843橋、206トンネルを管理
100m以上の長大橋は789橋、トンネルは矢板工法が79箇所
――次に現在管理している橋梁・トンネルの内訳は
橋本 当整備局が管理する2㍍以上の橋梁は4,843橋です。そのうち100㍍以上の長大橋は789橋となっています。工種別ではRC橋が最も多く43%となっています。次いでPC橋が30%、鋼橋が21%です。
橋梁種別ごとの橋梁数と延長
橋長別橋梁数
トンネルは206箇所あります。
工種別は矢板工法が79箇所、NATMが108箇所、開削工法が10箇所、その他9箇所となっています。
トンネル層数と工法種別数
供用年次が明らかな橋梁において50年を超える橋梁数の割合は、約33%に達しており、これが20年後には約64%まで急激に増加します。50年を超えるトンネル数の割合は、現在の約30%から20年後には約44%となり、トンネルも高齢化が急速に進んでいきます。
供用経過年数別橋梁割合
路線別橋梁数
供用年次別トンネル数
路線別トンネル数
橋梁の健全度Ⅲは6%、トンネルは同30%
鋼橋疲労亀裂は大型車が多い国道2号・25号・43号などで多く発生
――点検を進めて見て管内の構造物の劣化状況について教えてください
橋本 近畿地方整備局が管理する橋梁の劣化状況は、鋼橋では防食機能の劣化、腐食、PC・RC橋では漏水・遊離石灰、剥離・鉄筋露出、うきのような防水・排水不良が要因と考えられる損傷が多くなっています。PC橋・RC橋では乾燥収縮をはじめ種々の要因で発生するひびわれが最も多くなっています。
橋種別損傷傾向
新しい橋梁点検要領により実施された2014~18年度点検における健全性の区分についてはⅠが65%、Ⅱが29%、Ⅲが6%、Ⅳが0.02%(対策済み)となっています(速報値)。
橋梁の健全度内訳
同様に新しいトンネル点検要領により実施された2014~18年度点検におけるトンネルの健全性の区分についてはⅠが3%、Ⅱが67%、Ⅲが30%、となっています(下円グラフ)。
――橋梁数が4,843橋ある中で、290橋以上がⅢ以上の判定ということになりますが、路線ごとの特色を述べてください。また今後の長寿命化修繕への対応も答えてください
橋本 鋼橋の疲労亀裂は大型車が多い国道2号・25号・43号などで他路線よりも多く発生しています。塩害は凍結防止剤の影響が考えられる国道161号や海沿いの路線である国道42号で見られます。鋼橋形式が比較的多い2号・29号では防食機能の劣化や腐食などの損傷が生じています。コンクリート橋が比較的多い1号・28号などではひび割れや漏水・遊離石灰などの損傷が多い傾向となっています。
コンクリート床版における路線別の損傷種類の内訳
コンクリート床版における供用年次別の損傷内訳
当整備局としては、出来るだけⅡをⅢに転移させないように早めに手を入れていきたいと考えています。まずはⅢの修繕着手率は現状で7~8割程度ですが、これを早く完了させ、予防保全としてⅡの補修にも着手していきたいですね。
耐震補強は今年度14橋
――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況は
橋本 今年度は14橋について耐震補強を行う予定です。また、昨年度「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が策定され、道路橋の耐震補強も対策メニューに盛り込まれました。主な補強として水平力分担や落橋防止装置の設置などを43橋で実施する予定です。
――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また、具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。また、トンネルの点検状況、トンネルについて橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
橋本 健全性の診断における判定区分Ⅲについては早期に補修設計及び補修工事を行うこととしています。
例としては淀川大橋があります。同橋は大正15年(1926年)に架設された淀川渡河部に架かる橋長724.516㍍の鋼6径間単純上路式ワーレントラス桁+鋼12径間単純鈑桁(いずれもリベット接合)で、90年が経過しており、第二次世界大戦の被災や阪神淡路大震災なども経験しています。25年度の定期点検やそれ以前の診断の結果、床版の漏水、剥離・鉄筋露出、貫通ひび割れ、補修材の再劣化、鋼材腐食など様々な種類の著しい損傷が見られています。これまでの間に何回かの補修補強工事も実施されていますが、今回抜本的な対策として床版の取替工事を実施するに到りました。
同橋では、直轄事業で初めて設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用しました。具体的には傷みの激しい既存床版(RC床版構造)を鋼床版に変更し、健全化するもので、合わせて桁の損傷部にも状況に応じて補修補強をかけています。
淀川大橋の施工状況
上部工補修補強 2018年度54橋、19年度45橋で対策
床版の損傷は主に防水や排水の不良が要因
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2016年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです。
橋本 上部工補修・補強の実績は、2018年度は54橋です。うち、コンクリート桁が47橋、RC床版が30橋(桁と床版は重複あり、以下同)、2019年度は45橋の上部工を補修ないし補強する予定で、うちコンクリート桁は20橋、RC床版は30橋施工する予定です。
コンクリート床版の損傷状況についてですが、2014~17年度に調査したうち損傷の見られた238橋では、コンクリートの剥離・鉄筋露出が123橋、漏水・遊離石灰が92橋、うきが80橋、床版ひび割れが46橋、補修補強材の損傷が24橋で生じています。主に防水や排水の不良が要因と考えられる損傷が多い傾向となっています。さらに年次を調べたところ、1956~75年に建設された橋梁で損傷が比較的多くなっています。
コンクリート床版の損傷原因
床版防水については、昨年度は13橋、今年度も10橋で設置する予定です。
鋼床版の疲労については、国道43号の岩屋高架橋(上り線)で、鋼床版の縦リブと横リブの溶接部に亀裂が確認されました。点検中に削り取り除去を実施しましたが、亀裂消滅に至りませんでした。現状はストップホールを設けることができないため、MTで亀裂の進展を確認する必要があります。今年度当て板補強を実施します。
国道26号紀の国大橋では、鋼床版の縦リブと横リブの溶接部に亀裂が確認されたため、削り込みにより亀裂除去を行い、車道下部の縦リブと横リブ交差部にL型鋼設置による補修を行いました。この3月に補修を完了しています。
紀の国大橋(全景)
塗膜割れとMTによる検査
国道1号古川高架橋(下り線)では、箱桁内の主桁垂直補剛材と鋼床版との溶接ビード部から生じたと思われる塗膜割れがあり、MT調査を実施したところ長さ60㍉の亀裂が確認されました。亀裂進展の有無を追跡調査しており、進展状況に応じて垂直補剛材の剛度を小さくする半円形除去加工による補修やあて板等の補修を行います。
古川高架橋の損傷状況
国道43号安治川橋(下)では、箱桁内の鋼床版の縦リブと横リブの溶接部に塗膜割れが多数確認されました。そのためMTなどで詳細調査を実施し、保守方法について検討していきます。
安治川橋の亀裂損傷写真
支承は3橋で取替
塩害は35橋、ASRは58橋で発生している疑いあり
――支承取替やジョイント交換の今年度予定は
橋本 支承は3橋で鋼製支承をゴム支承に取り換えます。ジョイントは鋼製伸縮継手を9橋、埋設型伸縮継手を1橋で交換します。ノージョイント化の施工予定はありません。
――塩害やASRによる劣化の発生状況は
橋本 塩害は35橋で発生している疑いがあります。海岸沿いを走る国道42号が最も多く16橋となっています。また、ASRは58橋で発生している疑いがあります。国道2号が最も多く29橋と半分を占めています。
塩害及びASRの発生状況
――対策実施例は
橋本 過年度に塩害対策した代表的な橋としては、国道42号の和歌山県みなべ町の海岸部に位置する南部大橋があります。1956年竣工の単純RCT桁橋で、塩害により、上部工の剥離・鉄筋露出・うきが確認されました。
南部大橋の主桁コンクリート補強材の損傷
南部大橋の主桁のコンクリート剥落・鉄筋露出(左・中)、同床版の損傷(右)
同横桁のひび割れ状況
そのため、塩化物イオン量調査などを実施した上で対策工を検討し、電気防食、断面修復、ひび割れ補修等を実施しました。
ASRについては、国道2号の曽根高架橋があります。兵庫県高砂市に位置する1975年竣工の単純PCポステンT桁橋21連等で、平成29年度の補修工事でP16橋脚左梁終点側面のうき箇所をはつり除去したところ、ASRの影響と思われるスターラップの破断が確認されました。
今年度、断面修復やフレア溶接等による補修工事を実施予定です。また、経過観察方法については、現在検討中です。
曽根高架橋の損傷状況