仙台南部道路の付加車線設置事業は2021年度の完成目指す
NEXCO東日本仙台工事 2020年度内の完成目指し常磐道の4車線化進める
東日本高速道路
東北支社
仙台工事事務所長
広瀬 剛 氏
吉田橋 橋長329m、鋼重は1,300t
常磐線を跨ぐ箇所はPCaPC床版に
――主な橋梁は
広瀬 山元IC側の吉田橋から説明します。
同橋は橋長329.0m、最大スパン80m、鋼重1,300tの鋼5径間連続非合成細幅箱桁橋です。床版はA1~P4が現場打ちPC床版で、JR常磐線を跨ぐP4~A2間のみプレキャストPC床版を採用します。同径間の上部工はJRに委託(施工は東鉄工業)しています。上部工の架設はトラッククレーン+ベント工法で施工します。
吉田橋の施工(井手迫瑞樹撮影)
同橋の基礎の施工(井手迫瑞樹撮影)/吉田橋の架設計画(参考図)
長瀞橋 Ⅰ期線3径間をⅡ期線では2径間に
A1-P1間は多軸式特殊台車で施工予定
――長瀞橋は
広瀬 県道相馬亘理線を跨ぐ箇所に計画している橋長120.0m、最大スパン72.4m、鋼重460tの鋼2径間連続合成細幅箱桁橋です。床版は現場打ちPC床版を採用しています。同橋のⅠ期線は、3径間で建設しましたが、Ⅱ期線では2径間としています。これは県道を斜めに跨いでいるためです。架設はA1~P1間について多軸式特殊台車で施工する予定です。他はトラッククレーン+ベントで架設します。
A1側に製作ヤードがあり、ここで地組をします。多軸式特殊台車はA1ヤードの対面の敷地で組み立て、地組した桁をA1~P1間に運んで夜間架設します。夜間架設は10月の予定です。
長瀞橋の施工状況(井手迫瑞樹撮影)
長瀞橋の架設計画
――鐙川橋は
広瀬 鐙川排水路ならびに柴鳥排水路などを跨ぐ箇所に架設する橋長196.9m、最大スパン94.5m、鋼重750tの鋼3径間連続合成細幅箱桁橋です。現場打ちPC床版を採用しています。架設はクローラクレーン+ベントで施工する予定です。
鐙川橋は下部工の施工が進んでいた(井手迫瑞樹撮影)
荒浜橋 多軸式特殊台車で引きだして施工
――荒浜橋は
広瀬 県道塩釜亘理線を跨ぐ箇所に建設する橋長60m、鋼重205.1tの鋼単純合成細幅箱桁橋です。町道と県道が複雑な形で交差する付近に建設するため、架設には多軸式特殊移動台車を用います。盛土ヤードで桁を組んで橋台上にローラーを組み、多軸式特殊台車で引き出す(引き出し長は47m)架設方法を取ります。現場に架設ベントを立てられないための苦肉の策です。上部工架設時は県道を止め1夜間で施工する予定です。移動台車による安全な施工のため、走行部の舗装の平坦性には気を付ける必要があります。
荒浜橋の施工状況(井手迫瑞樹撮影)
荒浜橋架設ステップ①
荒浜橋架設ステップ②
阿武隈大橋 管内最長の橋長534m ニューマチックケーソンを採用
NEXCOでは珍しい鋼床版形式
――阿武隈大橋は
広瀬 同橋は阿武隈川を渡河する橋長534m、最大スパン110m、鋼重約3,470tの鋼5径間連続鋼床版2主箱桁橋です。ここは橋脚基礎にニューマチックケーソンを採用しています。橋台部基礎は場所打ち杭です。蛇足ですが、厳密にいうと阿武隈大橋のある岩沼IC~亘理ICは仙台東部道路です。常磐道は亘理が仙台側の起点です。仙台東部道路のⅠ期線は国交省が整備していますが、Ⅰ期線同様、Ⅱ期線の橋台も堤体の中に設置することもあり、Ⅱ期線の橋台の施工は国交省に委託しています。橋脚は当社で施工しています。
施工中の阿武隈大橋の全景(井手迫瑞樹撮影)
阿武隈大橋の下部工施工状況(井手迫瑞樹撮影)
――ニューマチックケーソンを施工する際の配慮は
広瀬 施工は築島方式で行っています。矢板で4面を仕切って、内部をドライにして、その後に盛土して平らな面を造って、そこに刃口を据えて、ようやく掘削を開始していくわけです。夜掘削して、昼間にケーソンの鉄筋を組み、コンクリートを打設し、ケーソンを沈下させていきます。24時間3交代で動いていました。
ケーソンの施工を行うための設備(井手迫瑞樹撮影)
施工ロット(P2橋脚)
今回のケーソンは、それほど大きくなく、高さは9mほどです。着底位置は河床高から約13mです。先端の気圧は1.2~1.4hPaですので、今回は有人で掘削しています。元請は大成建設で、その下で大本組がケーソン基礎を施工しました。
下部工はケーソン基礎の施工を完了し、柱を施工中です。
――ここは汽水域ですか
広瀬 そうです。ただⅠ期線の状態を見ると塩分の影響はさほどなく、エポキシ樹脂塗装鉄筋の採用など特別な対策は施していません。沿岸から6km離れていますし、道路橋示方書の塩害地域区分内ではありません。
下部工は非出水期に全部完成しないと供用に間に合わないため、施工を急ピッチで進めました。次の非出水期は上部工を施工する予定です。
阿武隈大橋の架設計画(井手迫瑞樹撮影)
阿武隈大橋の現況写真(2019年6月中旬、東日本高速道路提供)
ケーソンのマスコン対策 普通コンクリートを採用
ひび割れ抑止 ワイヤーメッシュを鉄筋間に入れ、ハイパーネットも採用
――橋脚の柱部打設はプレキャスト型枠による施工ですか
広瀬 場所打ちです。本当はプレキャスト型枠を試したかったのですが、設計変更が間に合いませんでした。
なお、ケーソンのマスコン対策には、早強コンクリートを使わずに普通コンクリートを採用しています。温度応力解析を行い、補強鉄筋も配置しています。また足場としても使えるワイヤーメッシュ(φ5mm程度、約10cm角の格子)を鉄筋間にいれることで、ひび割れ抑制と施工効率の向上を実現しています。さらにひび割れ抑止を目的としてハイパーネットを採用しています。結果として有害なひび割れはありませんでした。
橋脚の対策は普通コンクリートに膨張材を使用しています。型枠脱型後に養生マットを採用し、養生マット撤去後には、気泡緩衝材を設置して乾燥を防止しています。養生日数は従来の倍(5日→10日)にしました。また、ケーソンと同様、ハイパーネットを設置しています。
――上部工は
広瀬 仮橋上に桁を運んできて、クレーンで架設していきます。橋脚間には数か所ベントを設置する必要があります。
――ベント基礎は
広瀬 H鋼杭で支持します。
早股こ道橋 PC桁を相吊りで架設
市道を通行止めして2夜間で施工
――早股こ道橋は
広瀬 岩沼市道を跨ぐ箇所に架ける橋長27.4mのPC単純合成I桁橋です。4本の主桁を架けるわけですが、大型クレーンを据えられないため、550t吊トラッククレーン2台による相吊で、市道を通行止めして2夜間(7月16~17日)で架設しました。同日は維持管理、鳥の海PAなどの施工もあり、仙台東部道路、常磐道本線も夜間は止まっている状態下での施工でした。
早股こ道橋の下部工施工状況(井手迫瑞樹撮影)/550t吊クレーン2台で相吊架設(東日本高速道路提供)
――各橋の鋼桁上の床版はプレキャストPC床版ですか現場打のPC床版ですか
広瀬 基本的には現場打のPC床版を用います。