耐震性能2への対策完了は84%で2026年度までの完了を目指す
――耐震補強の進捗状況は
岩見 緊急輸送道路を構成する15m以上の橋梁について耐震対策を進めています。耐震性能3の対策は完了していて、現在は耐震性能2の対策を行っています。2018年度末時点での進捗率は84%で、2026年度までの対策完了を目指しています。
――管内にロッキング橋脚はありますか
岩見 当整備局管理のものはありません。
――支承と伸縮装置の取替えについて、2018年度と2019年度の施工(予定)箇所数は
岩見 支承取替えについては、2018年度は2橋(国道116号阿賀野川大橋 上下)で実施しました。2019年度は国道17号の羽根川橋および国道7号の明神第2橋など5橋で実施予定です。伸縮装置の取替えはどちらの年度でも実施していません。
阿賀野川大橋の支承取替え
羽根川橋と明神第2橋の状況
耐候性鋼材採用の橋梁9橋のうち、1橋が判定区分Ⅲ
――2018年度の鋼橋塗替え実績および2019年度の予定は
岩見 2018年度は国道17号の新破間橋(860m2)など17橋の塗替えを実施しました。2019年度は国道116号の東部幹線水路橋(上り)(3,200m2)や国道17号の八色大橋(650m2)など22橋の塗替えを予定しています。
新破間橋の塗替え
――1種ケレンでしょうか、3種ケレンでしょうか。また、PCBや鉛など有害物質を含有する既存塗膜の処理は
岩見 原則、1種ケレンとなっています。有害物質を含有する既存塗膜の処理は、基本的に湿式工法を採用して、法令に順守して処分しています。
――耐候性鋼材を採用した橋梁数と点検結果は
岩見 管内に9橋あり、判定区分Ⅰが6橋、Ⅱが2橋、Ⅲが1橋となっています。
――判定区分Ⅲとなった橋梁の損傷状況と対策を教えてください
岩見 国道8号の新組跨線橋(上り)(単純鋼非合成鈑桁橋2連+3径間連続鋼非合成鈑桁橋+単純鋼非合成鈑桁橋2連、橋長170m、1981年架設)は、第3~5径間で耐候性鋼材を採用していますが、主桁にうろこ状の錆や層状剥離がみられ、端部では板厚減少をともなう腐食が確認されたことから、判定区分Ⅲと診断されました。
端部の腐食が特に激しい理由として、伸縮装置の止水機能損傷部から凍結防止剤散布による塩分を含む路面排水の漏水が継続したことにより、桁端周辺鋼材の表面の保護性さび生成メカニズムの機能が阻害されたことが推定されます。跨線橋であるため、補修工事にあたっては下を通る鉄道の事業者と調整中で、2021年度の施工を予定しており、現在設計中です。
新組跨線橋(上り)の損傷状況(伸縮装置の腐食と主桁の欠損を伴う腐食)
のり面等要対策箇所は2017年度末時点で約150箇所
2018年度は18箇所で対策を実施
――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいるなかで、具体的なのり面などの対策は
岩見 大雨などによる土砂災害や落石等の恐れがある箇所については、1996(平成8)年と2006(平成18)年に実施した道路防災総点検に基づき、防災対策を進めているところです。管内には2017年度末時点で約150箇所の要対策箇所があり、2018年度は18箇所の対策を行いました。
平成30年7月豪雨後には、のり面・盛土の緊急点検を行っています。土砂災害などの危険性が高く、災害が発生した場合に社会的影響が大きい箇所(通行止めが長期化する長大のり面や、鉄道・河川に近接する箇所)については、のり面・盛土対策を「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」として実施していきます。
左2枚:2018年度ののり面対策工事例/右:のり面、盛土に対する緊急対策
――2018年1月から2月にかけては全国的に豪雪に見舞われ、北陸地方でも記録的な大雪となりました。大雪時の対応をどのように考えていますでしょうか
岩見 昨年の豪雪では、気象予報に基づき、「タイムライン(段階的な行動計画)」に沿った対応をしていきました。降雪が予想された時点で、地方自治体、高速道路会社などの道路管理者と連携を図る情報本部を立ち上げています。今冬に向けては、同様に道路管理者や警察との情報伝達訓練を複数回行っています。また、気象予報もきめ細かく把握できるように変えました。
今年から全国でチェーン規制が導入されましたが、北陸では以前から大型車を対象にチェーン装着指導を行っています。今冬もチェーン指導を実施する体制をとるとともに、その訓練も行いました。
橋梁・シェッドの定期点検現場で点検支援技術の活用を実施
地方公共団体職員との意見交換会も開催
――新技術・新材料の活用事例は
岩見 道路橋定期点検要領の改定(平成31年2月)で、点検の支援にロボット点検技術などの新技術が活用できる選択肢が示されました。このことの理解を進めるためもあり、2018年度に直轄の橋梁・シェッドの定期点検現場で点検支援技術の活用を実施して、地方公共団体職員に見てもらうとともに、意見交換会を実施しました。
活用事例は、「道路橋の損傷写真を撮影する技術」の2技術(橋梁3橋、シェッド1箇所の定期点検で活用)、「コンクリート構造物のうき・剥離の非破壊検査技術」の3技術(橋梁10橋、シェッド2箇所の定期点検で実施)です。2018年11月には、飛行系(ドローン)による撮影技術の現地活用技術について、地方公共団体職員を交えた意見交換会を実施しています。
これらについては、北陸技術事務所公式チャンネルに活用状況の動画を公開しました。
意見交換会の開催と点検支援技術の活用事例
――それぞれ活用した具体的な技術を教えてください
岩見 「道路橋の損傷写真を撮影する技術」では、「マルチコプタを利用した橋梁点検システム」と「『橋梁点検カメラシステム視る・診る』による近接目視、打音検査等援助・補完技術」です。
「コンクリート構造物のうき・剥離の非破壊検査技術」では、「ポール型打音検査機」と「コンクリート構造物変形部検知システム」、「赤外線調査トータルサポートシステム Jシステム」です。
――北陸地方整備局では、NETISテーマ設定型(技術公募)で「道路トンネル点検記録の作成支援ロボット技術」の実証実験を行っていますが、現況は
岩見 公募された技術について、2018年度秋に現地実証を行いました。平成30年度第4回新技術活用評価会議を開催して、「社会インフラモニタリングシステム」、「走行型高速3Dトンネル点検システム」、「トンネル覆工点検システム」の3技術の評価を行い、その結果をまもなく公表する予定です。
技術評価を行った3システム
――ありがとうございました
(2019年6月16日掲載 聞き手=大柴功治)