道路構造物ジャーナルNET

橋梁3456橋とトンネル94箇所を管理

北陸地方整備局 難工事が多いトンネル掘進、橋梁では塩害対策事業が進む

国土交通省
北陸地方整備局
道路部長

岩見 吉輝

公開日:2019.06.16

八十里越 トンネル11本のうち7本が完成
 5号橋梁下部工事では高橋脚対応のため、3H工法を採用

 ――国道289号八十里越は
 岩見 国道289号の新潟・福島県境部の現道区間は19.1kmが通行不能区間となっており、現在は大幅な迂回を強いられています。その解消を目指して延長約20.8kmの事業を新潟県、福島県とともに進めていて、当整備局は11.8km(新潟県内約8.3km、福島県内約3.5km)を権限代行区間として担当しています。事業進捗率は約81%(2018年度末)です。事業箇所は雪深く、施工可能時期が5月~11月という短い施工期間で進めなければなりません。権限代行区間にはトンネル11本と橋梁10橋があります。


事業概要図

 ――トンネルの進捗状況は
 岩見 7本が完成しています。残り4本のうち、1号トンネル(延長773m)は、2016年から工事着手し、2018年11月に貫通、2019年度に完成予定です。2号トンネル(延長504m)は2019年2月に工事発注しています。3号トンネル(延長168m)と4号トンネル(延長178m)は2019年度に工事発注予定で、これにより権限代行区間の全トンネルに着手することになります。


1号トンネル施工状況

 ――2号トンネルの発注では、北陸地方整備局では初めてとなる新技術導入促進(Ⅱ)型総合評価落札方式を試行しています(※)。
※技術提案に基づき、実用段階に達していない技術を工事の実施過程で実証・検証することにより、新技術を活用した効率的な施工管理、安全管理などによる工事品質の向上等につなげることを目的とするもの。
 岩見 「AIなどの先端技術を活用したトンネル切羽等の地山判定手法」を技術提案テーマとしました。
 ――橋梁部の進捗状況について
 岩見 10橋のうち、5橋が完成済み、3橋が工事着手済みで、残りの2橋の発注は未定です。着手済みの3橋では、3号橋梁(鋼単純細幅箱桁橋、橋長64m)と6号橋梁(橋長15m)が上部工事、5号橋梁(鋼4径間連続細幅箱桁橋、橋長338m)が下部工事と上部工事を進めています。


5号橋梁 橋梁一般図

 ――3号橋梁は架設が完了していますか
 岩見 2019年度に送出し工法にて架設予定です。
 ――5号橋梁の下部工事は
 岩見 3橋脚のうち、2橋脚(P2、P3)が完成していて、残りのP1橋脚が2019年度完成予定です。P2橋脚の橋脚高が81.1m、P1橋脚が61.1m、P3橋脚が40.9mといずれも高いため、SRC中空構造の3橋脚の構築では3H工法という新技術を活用しています。軸方向の鉄筋の代わりに、スパイラルカラムと呼ばれる鉄筋を巻き付けたH形鋼を建込み、型枠と足場が一体となった昇降式移動型枠を上方に移動させながらコンクリートを打設することで、施工の合理化と工期短縮を図りました。


5号橋梁下部工/3H工法による橋脚構築

猪谷楡原道路 猪谷橋はケーブルエレクション斜吊工法で架設予定
 片掛橋では竹割工法による土留めを併用して施工ヤードを確保

 ――国道41号猪谷楡原道路(猪谷~片掛)は
 岩見 富山高山連絡道路(延長約80km)のうち、富山県側県境部に位置する延長7.4kmの道路です。事業進捗率は約79%(2018年度末)で、現在、富山市猪谷~片掛間1.6kmを施工中で、神通川の深い谷を跨ぐ橋梁2橋があります。


事業概要図

 アーチ部径間長が220mの長大橋となる猪谷橋(鋼単純非合成鈑桁橋+中路式ローゼ桁橋+鋼単純非合成鈑桁橋、橋長275m)は、ケーブルクレーンによるケーブルエレクション斜吊工法で架設する計画で、アーチ部の架設にむけて桁の工場製作を進めています。中路式ローゼ桁は、雪深い山間地域であるため、部材上からの落雪を考慮して上横支材を省略した構造になっているのが特徴です。


猪谷橋のイメージパース図と施工状況

 富山市側の現道に取り付く片掛橋(PC4径間連続ラーメン箱桁橋、359m)は、ニューマチックケーソン基礎を施工中です。左岸側のP3橋脚は現道となる国道41号と神通川に挟まれた急傾斜の狭隘な斜面に位置するため、竹割工法による土留めを併用して施工ヤードを確保しています。


片掛橋の下部工施工

 ――国道7号栗ノ木道路・紫竹山道路は
 岩見 新潟バイパス紫竹山IC~国道7号栗ノ木交差点までの延長2.1km(栗ノ木道路1.4km、紫竹山道路0.7km)の道路です。新潟バイパスと新潟市中心部を結ぶ万代島ルートの一部で、上越新幹線と在来線を交差する箇所以外は立体道路となっています。現在は、紫竹山ICのランプや側道の工事などを行っています。


事業概要図

 ――国道8号豊田新屋立体は
 岩見 富山外郭環状道路(延長約40km)の一部を構成する国道8号のうち、富山市小西~同市粟島町間の延長2.9kmの事業です。現道を拡幅して立体化することで、通過交通を自動車専用部でさばいて、長トリップと短トリップを分離します。現在は、拡幅部にあたる構造物の整備や河川の付替等を進めています。


事業概要図

金沢東部環状道路 国道159号や国道8号の渋滞緩和を目指し4車線化
 柏崎バイパス トンネル工事で切羽安定度予測システムを活用

 ――国道159号金沢東部環状道路は
 岩見 金沢都市圏を囲む金沢外環状道路の一部となる金沢市今町~同市鈴見台間の延長9.4kmの道路です。金沢都市圏は平野部が細長く、山が迫っています。平野部には国道159号や国道8号がありますが、朝夕の交通渋滞が慢性化していますので、山側に道路を整備することで交通容量の拡大と分散を図っていきます。現在、Ⅰ期線の2車線は完成していて、4車線化を進めています。事業進捗率は約90%(2018年度末)です。


事業概要図

 ――トンネル工事の進捗状況は
 岩見 5本のうち、3本が完成しています。2017年度から、月浦トンネル(延長1,020m)のⅡ期線側の工事を行っています。月浦トンネルの地山を形成する大桑層(おんまそう)は、貝の化石が多く出土する細粒から中粒の砂岩で、固結度が非常に低い地盤になっています。また、歩道計画のある大断面トンネル(断面積110m2)で扁平形状であること、Ⅰ期線のトンネルと近接することから、施工に際して既存トンネルやのり面の変状を常時観測・監視するなどして、慎重に工事を進めています。2019年2月現在で、延長の1割程度の掘削が完了しています。


月浦トンネル平面図

月浦トンネル(Ⅱ期線)施工状況

 ――国道8号柏崎バイパスは
 岩見 柏崎市街地の交通混雑の緩和と道路ネットワークの強化を目的とした柏崎市大字長崎~同市大字鯨波間の延長11.0kmのバイパス事業です。バイパスの中間区間(延長2.6km)は暫定2車線で開通していて、その西側の柏崎トンネル(山岳部)工事を2017年度から進めています。


事業概要図

 ――トンネル工事の詳細は
 岩見 延長1,128mの柏崎トンネルは土被りが小さい丘陵地帯を貫くトンネルで、崩れやすい地質であるとともに、大量の湧水も発生します。そのため、AIを使って切羽の安定度を自動的に予測できる新技術を活用して、地山等級の判定に役立てています。補助工法として、注入式長尺先受工法などを採用しながら、慎重に工事を進めているところです。2019年2月現在で、トンネル延長の約3割まで掘削が完了しました。


柏崎トンネル施工状況

 ――国道17号浦佐バイパスは
 岩見 新潟県南魚沼市市野江甲~魚沼市虫野間の延長6.6kmの事業で、中間部分の4.0kmは開通済みです。終点側の魚沼市虫野地先の丘陵端部を通過する延長127mの虫野トンネル1本があります。2019年2月に工事発注を行い、2019年度の完成を目指しています。


事業概要図

 ――国道17号三俣防災は
 岩見 南魚沼郡湯沢町三俣~同町神立に至る延長約2.6kmの事業です。事前通行規制区間(連続雨量180mm)の解消、急勾配区間における登坂不能車の発生やトンネルの幅員狭小による事故危険区間の解消を目的としています。現在、測量・地質調査や道路設計中です。


事業概要図

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