道路構造物ジャーナルNET

離島中心に塩害やASRに対応

鹿児島県 50年以上経過している橋梁が全体の約3割占める

鹿児島県
土木部
道路維持課長

橘木 竜一

公開日:2019.05.16

ASR 甑島の1号橋で散見 ひび割れ注入や表面含浸工で対応
 表面含浸工は珪酸塩系を採用

 ――ASRによる損傷の発生状況と対策は
 橘木 離島地域の一部の橋梁で発生していて、橋台に亀甲状のひび割れが見られています。対策としては、ひび割れ注入工や表面含侵工を実施しています。


ASRにより損傷した離島地域の橋梁と橋台の損傷状況

 ――具体的な橋梁名とその状況を教えてください
 橘木 甑島の長浜手打港線にある1号橋で、終局状態です。
 ――表面含侵工について。藺牟田瀬戸架橋では珪酸塩系含浸材を使用していると聞きましたが、1号橋では
 橘木 珪酸塩系を採用しています。
 ――ASRが生じた理由は
 橘木 離島であることから飛来塩分が多い地域であること,水分が滞留しやすい等の様々な原因があると考えています。

鋼橋塗替え 18年度は4橋、19年度は1橋施工
 PCB含有塗膜は2021年3月までに処理 塗膜剥離剤を使用

 ――2018年度の鋼橋塗り替えの橋数と面積と19年度の予定について教えてください。また、溶射などの新しい重防食の採用事例はありますでしょうか
 橘木 2018年度は、4橋(武之橋、長里こ線橋、桜橋、俣瀬橋)で約3,900㎡を実施しました。19年度は、俣瀬橋の1橋で約1,000㎡を予定しています。新しい重防食の採用実績はありません。


(一)山間役勝線 越次橋の塗替塗装

長里こ線橋での塗膜剥離剤を用いた塗替え状況

 ――PCBや鉛など有害物質を含有する既存塗膜の処理については
 橘木 PCB等については、これまで工事を行った橋梁では着手前に含有量試験を行っており、その結果、基準値を超える(低濃度も含む)PCB等の有害物が検出された実績はありません。確認された場合は、法令に基づいて作業者および近隣環境へ配慮しながら適切に除去、処分を行うこととしています。
 ――ケレンの種類について県での基準はありますでしょうか。1種ケレンで塗り替えていないと、当時の塗膜が埋まっている可能性があります。また、昨年11月28日に、環境省から「高濃度ポリ塩化ビフェニル含有塗膜の調査について」と題した通知が届いていると思いますが、そこにPCBを含有する塗料について述べられているので
 橘木 1種、2種、3種でとくに統一は行っていません。PCBの含有に関しては現在、対象橋梁について調査を行っているところであり、高濃度PCBに関しては2021年3月までに処理を完了することとしています。
 ――鉛対策としての塗膜除去方法は
 橘木 塗膜剥離剤を使用しています。

耐候性鋼材を採用した橋梁数は74橋
 橋梁の損傷は健全度ⅠないしⅡ

 ――耐候性鋼材を採用した橋梁数と、劣化状況、健全度を教えてください
 橘木 耐候性鋼材を採用した橋梁数は74橋であり,劣化としては、主に桁端部において伸縮装置からの漏水などによる劣化・損傷の事例がありますが、健全度はⅠもしくはⅡ判定となっています。
 ――耐候性鋼材は腐食すると非常にケレンが難しいという特性があります。Ⅱ判定がありますが、今後、耐候性鋼材の措置をどのように考えていますでしょうか
 橘木 橋梁毎に状態を把握した上で,適した対策を行っていきます。

道路防災要対策は936箇所 2017年度末で791箇所が完了
 道路保全に年間約50億円の予算を計上

 ――異常気象などによる土砂災害が相次ぐとともに、広域化、甚大化しています。のり面の要対策箇所数と、どのように手を打っていくかの考え方を教えてください
 橘木 のり面については、カルテを作って定期的な点検を行っています。そのなかで、要対策箇所は936箇所(平成8年(1996年)道路防災総点検)となっており、2017年度末時点で完了しているのが791箇所です。残る箇所についても、引き続き緊急性を考慮しながら要対策箇所の対策工に取り組むとともに、日常パトロールを行い、通行車両等の安全確保に努めています。
 ――毎年、台風などの災害が発生した時に、要対策箇所数は変更しているのでしょうか
 橘木 基本的に1996年の数字は固定しています。ただ、新たな、危険箇所も確認されており、それらも含めて緊急性が高い箇所から対策を進めています。
 ――具体的な対策工は
 橘木 現場によって違いますが、ストーンガード(落石対策工)やのり枠工が多くなっています。
 ――規模は
 橘木 これも現場によりますが、長大のり面はほとんどないと思います。
 ――新技術・新材料の採用は。また、コスト縮減策がありましたら
 橘木 県独自の新技術・新材料の採用はありません。コストの縮減策としては、橋梁の修繕と耐震補強の同時施工を行い、足場などの経費を削減できるように努めています。
 ――橋梁の架け替えや大規模修繕、トンネルや法面における長寿命化修繕計画は鹿児島県では作成していますか
 橘木 橋梁、トンネルについては、2018年度末までで完了した近接目視点検1巡目の結果を踏まえて、長寿命化修繕計画を見直す予定です。道路法面の長寿命化修繕計画については、今後検討していく予定です。
 ――ちなみに鹿児島県では、道路保全費に毎年どのくらいの費用をかけていますか
 橘木 道路災害防除と道路補修費の合計では、2018年度で約50億円の予算を計上しています。今後も必要な予算を確保していきたいと考えています。
 ――ありがとうございました
(2019年5月16日掲載)

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