耐震補強 要対策98橋中 対策済みおよび対策中は53橋
緊急輸送道路上の要対策橋は61橋 34橋が対策済みまたは対策中
――耐震補強の進捗状況については
多和田 優先的に補強する必要のある平成8年より前に建設された多径間の橋梁は98橋(平成23年長寿命化修繕計画策定時)で、耐震補強済みおよび耐震補強中は53橋(54.1%)となります。
また、緊急輸送道路上にある橋長15m以上の管理橋梁は176橋あり、優先的に補強する必要のある平成8年より前に建設された多径間の橋梁は61橋で、そのうち34橋(55.7%)については、耐震補強中および耐震補強済みとなっています。
――現在、どのような対策を行ってますか
多和田 緊急輸送道路に関しては耐震性能2、迂回路がある橋梁や一般県道で落橋しなければいいものは耐震性能3で行っていく方針です。予算の一部を点検に回さなくてはいけないこともあり、なかなか進捗が図れない状況です。
――残りの45橋については
多和田 2019年度以降も継続して対策を行います。
――落橋防止装置の設置状況は
多和田 把握できている範囲では、111橋の設置が完了しています。
――設置が必要な橋梁数(全数)と、2018年および2019年度の設置予定は
多和田 単径間の曲線橋、斜橋等も該当するものがあると考えられ、全数については把握できていません。診断結果の状態の悪いものから補修補強設計を行っていて、その段階でしか把握できません。2018年度は八重山事務所管内の1橋、2019年度は今のところ予定がありません。
耐震補強の実施例(山原橋)
長寿命化 2012年から10年間で544橋の対策を計画
現在対策を完了、または着手済みは197橋
――橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況と、具体的な補修・補強内容を教えてください
多和田 橋長2m以上の道路橋672橋のうち、2012年度から10年間で544橋の対策を計画しています。この544橋は予防保全を含めた補修計画です。現在は、197橋(36.2%)が補修中および補修済み(完了95橋)となっています(2017年度末時点)
架け替え予定の橋梁では、八重山事務所管内の浦内橋(西表島)、北部事務所管内の大保大橋(大宜味村)があります。
――2018年度と2019年度の補修着手予定の橋梁数は
多和田 緊急輸送道路上の橋梁について2018年度で29橋(補助国道8橋/地方道21橋)対策を行いました。19年度で31橋(補助国道7橋/地方道24橋)について対策を施す予定です。
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と、2018年度および2019年度の予定数量は
多和田 2016~18年度は38橋ですが、年度による重複もありますので、実質的には約30橋となります。2019年度は6橋を予定しています。
――内容は断面修復などでしょうか
多和田 断面修復に加えて、ひび割れ注入などになります。
――床版打ち替えは
多和田 大掛かりなものはありません。
――コンクリート桁や床版部ではどのような損傷が出ていますでしょうか
多和田 一般的なもので、鉄筋腐食、ひび割れ、うき・剥離、漏水・遊離石灰などが発生しています。
――床版防水の設置状況は把握していますか
多和田 すべての管理橋梁について把握しているわけではありません。各年代の道路橋示方書(設計要領)に基づいて設計してきていますので、その当時の要領にあれば、施工しているという状態です。補修時には、防水工を行っています。
浦内橋と大保大橋を架け替え
――架け替え予定は浦内橋と大保大橋ですね。浦内橋は西表石垣国立公園内の浦内川に架かっていることから施工条件がかなり制約されていると聞きます
多和田 仰るように国立公園内となるので制約があります。
浦内橋全景/床版の損傷状況
過去に補修も行ったが
――仮橋を設置して、旧橋を撤去して、その位置に新橋を建設するのでしょうか
多和田 そうです。旧橋のそばに仮橋を設置し、旧橋を撤去後に新橋を建設する計画となっています。
――架け替え橋の橋長および形式は
多和田 橋長約280mで事業費約50億円となります。鋼橋をPC橋にします。
――同様に大保大橋は
多和田 県道9号線の大保川渡河部に架かる橋長約130mのPC橋えです。架け替えは鋼橋形式を採用する予定です。事業費は約20億円です。
大保大橋/大きなひび割れが生じている
大保大橋 路面状況/桁下の状況
――大保大橋の損傷状況は
多和田 鉄筋腐食に加え、PC鋼線も一部腐食しています。架け替えに伴い、本線線形の見直しも行います。
――浦内橋と大保大橋は着手済みですか
多和田 はい。また、大きな補修では池間大橋があります。
池間大橋 下部工に数mm程度のひび割れ
ASRによる骨材膨張の可能性も
――池間大橋の具体的な補修内容は
多和田 下部工に塩害とASRが出ていますので、はつって断面修復、鉄筋とフライアッシュコンクリートによるRC巻き立てを行います。平成4年に供用してから30年近く経過しており、鉄筋は普通鉄筋を使用していました。エポキシ樹脂塗装鉄筋の使用開始は平成10年頃からです。上部工も普通鉄筋ですが、水セメント比が小さいコンクリートを使用しているので、それほど鉄筋腐食は発生していません。補修と耐震補強をあわせて施工しており、ダンパーの設置も行っています。
池間大橋や(池間大橋の宮古島側アプローチ部にある)世渡橋ではASRの症状が出ている
――事業費は
多和田 40~50億円となります。
――工事の進捗率は
多和田 約4割です。
耐震補強を進める池間大橋/塩害により損傷した池間大橋の橋脚
橋脚のチッピングおよび配筋(エポ鉄筋を採用)
橋脚の巻き立て状況/支承補強配筋状況
支承補強完了状況/ダンパーの設置工
――伊良部大橋の取材時に、点検しているのは見ていました。写真資料を見ると、ひび割れ幅が大きく見えますね
多和田 一部の橋脚でひび割れが発生しており、ひび割れ幅は約1~数mm程度となっています。
――内部の鉄筋は
多和田 断面欠損には至ってないですが、錆びています。
――飛沫帯はどのへんまで達しますか
多和田 満潮位の上方約2m程度の範囲です。やはり、その周囲の損傷が激しくなっています。
この状態になっているのは橋脚の内2本程度です。
――鉄筋が腐食膨張してはいないですか
多和田 顕著なひび割れが発生している箇所では、鉄筋の腐食膨張が見られています。
――ASRによる骨材膨張ではありませんか
多和田 表面に明確なひび割れが発生しているわけではありませんでしたが、コアを採取したところ、かぶりコンクリート内にひび割れが発生していました。原因を調査したところ、台湾産川砂によるASRで複合的に損傷が発生していると推察されます
――富山でも骨材由来のASR(と凍結防止剤)などで損傷が出ているので、同じような症状があるかもしれません。
多和田 台湾産の骨材は、安山岩などのように、早い段階でひび割れが出てくるものではない遅延膨張性の骨材なので、時間の経過とともに出てきています。
――上部工は損傷がないということでしたが
多和田 部分的に、施工時に残置していた構造上必要のない落とし物鉄筋の腐食がありました。それは除去して断面修復し、含浸材を塗布しています。
――含浸材はシラン系、珪酸塩系でしょうか
多和田 シラン系です。