道路構造物ジャーナルNET

阿久根川内道路も一部工事がスタート

鹿児島国道 鹿児島東西道路で九州地整の道路トンネル初のシールド工法を採用

国土交通省
九州地方整備局
鹿児島国道事務所
前 所長

武藤 聡

公開日:2019.05.16

塩害 3橋で電気防食を設置
 海岸沿いの橋は点検間隔を短期化

 ――塩害、ASRなどによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください
 武藤 ASRによる劣化は過去にありましたが、全て対策済みです。塩害は国道3号の大川大橋、女房川跨線橋、国道226号の田貫橋の3橋で外部電源方式による電気防食を採用しています。この3橋はすべて海岸沿いに架かる橋梁です。こうした海岸沿いの橋は押しなべて塩害の傾向があるため、間隔を短くして点検しています。電気防食以外にも表面含浸工(国道3号寺田橋(表面含浸工剤:シラン系鉄筋腐食抑制タイプ(プロテクトシルCIT)))を1橋で実施しています。各電気防食については効果の検証も行っています。
 ――2018、2019年度の鋼橋塗り替え予定および実績(橋数と面積)を教えてください。また、PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください
 武藤 鋼道路橋の塗り替えは、昨年度、今年度ともありません。最近では2017年度に横断歩道橋で塗り替えを行ったのが最後です。今後の塗替えにおいて塗膜を除去する際は、塗膜剥離剤を使用していくことになると思いますが、近年ではそうした実績はありません。
 ――耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
 武藤 管内で耐候性鋼材を採用している橋梁は11橋です。特に大きな問題は生じていません。

自然斜面・法面対策 73箇所で対策が必要

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などはありますか
 武藤 鹿児島はご存知の通り、台風の常襲地帯ですので、異常気象対策には経常的に取り組んでいます。国土強靭化において危険な斜面や法面に対する予算がついてきているので対策はやりやすくなったと考えています。
 過去の道路防災総点検において、管内では73箇所で対策が必要であり、173箇所でカルテによる対応箇所があります。要対策箇所については、落石防護ネットや法面の切り直し、吹付、法枠などの防災対策を行っています。予算状態によって年度別の施工箇所は変わってきますが、年間2~10か所で施工しています。
 ――新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について
 武藤 新設する歩道橋の基礎として、場所を取らずに施工でき、コスト縮減効果も有する小口径NSパイル(NETIS番号:TH-110020-VE)を今年度工事で施工する予定です。

薩摩川内市所管の天大橋で直轄診断

 ――最後に、自治体の土木構造物を診断代行あるいは修繕代行している例はありますか
 武藤 薩摩川内市が管理する天大橋で直轄診断を行っています。
 同橋(下写真)は同市が建設した橋長517.57m(幅員13m)のPC4径間単純プレテンT桁+4径間単純プレテンホロー桁+PC3径間連続ポステン箱桁(張出架設)+単純プレテンホロー桁+PC4径間単純ポステンT桁橋です。1日交通量は1万2千台に達する同市の重要な橋梁です。

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天大橋側面図

 市でも点検し、健全度Ⅲと判定していましたが、もう少し詳細な調査をしたいということで、鹿児島県内で初めての直轄診断となりました。
 3回に渡って診断した結果、ポステン箱桁部やプレテン部でASR由来によるひび割れを含めた劣化が見られました。直ちに重大な損傷を招くことありませんが、早期に補修が必要であるとの診断結果を薩摩川内市に報告しました。



天大橋の損傷状況(井手迫瑞樹撮影)

 ――ASRもどういう進展期か終局期かによって対応が変わってきますが、実際の点検ではどうでしたか
 武藤 前回点検よりひび割れの数は増えており、ASRはいまだ進展している可能性もあります。今後の補修補強も直轄で行う可能性があります。
 ――ありがとうございました
(2019年5月16日掲載)

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