塩害やASRの疑いある橋梁対策も
北部国道事務所 名護東道路などの建設を進める
内閣府 沖縄総合事務局
北部国道事務所長
崎間 斉 氏
塩害 辺野喜橋で対策
ASR 幸喜橋、同橋側道橋で補修
――塩害、ASRによる損傷の具体的状況と、対策について
崎間 管内ではこれまで57橋で塩害を確認しており、46橋で延命のための補修を行っています。損傷部位は桁下フランジに集中しており、浮き、ひび割れ、剥離、鉄筋露出を確認しています。
過年度には、国道58号の辺野喜橋で塩害補修を行っています。劣化部位は主桁・横桁・床版・橋台で、浮き、剥離、ひび割れを確認しています。なおひび割れ注入、充填工や断面修復工などのほか、コンクリート表面にシラン系表面含浸材(アクアシール1400)を塗布することによる対策も施しています。
また、塩害対策としては過去に12橋で電気防食を施しています。その内、安根橋、新数久田橋、許田新橋上下線は外部電源方式によるチタン溶射方式を採用しています。
電気防食橋梁の一覧
ASRは7橋(チヌフク橋、ナンガー橋、柳橋上下線、幸喜橋、幸喜橋側道橋、東寺川橋下り線)で確認しました。
ASRによる損傷橋梁一覧
ASRによる損傷状況(ナンガー橋)
既に一番損傷の酷かった柳橋下り線では過年度に補修を終えています。2018年度には、国道58号幸喜橋および幸喜橋側道橋において、ひび割れ注入工、うき・剥離には断面修復工、桁内部への水分進入を防ぐためにシラン系含浸材(アクアシール1400)の塗布、中空床版内の水抜き工を施しました。
ASRによる損傷状況(柳橋)
――ASRの原因はどこにあるのでしょうか。沖縄発の論文では台湾花連産骨材による影響が指摘されていますが
崎間 ナンガー橋においてASRの詳細調査を行い、岩種の特定まで行っています。ただ産地を特定するには、架設当時の材料承諾書等の確認が必要となるが、書類が残っていないので確認出来ない状況です。岩種は粗骨材が変斑れい岩、苦鉄質片岩、細骨材が安山岩、花崗岩、砂質片岩です。
――鋼橋の塗替えは
崎間 2018年度は仲泊大橋でタッチアップ塗装を約360㎡行いました。2019年度の塗り替え予定は今のところありません。
――PCBや鉛を含む既存塗膜がある橋梁について塗り替えの際の除去はどのように行っていますか
崎間 平成29年度仲泊大橋(下り)他橋梁補修工事では、 3種ケレンによる塗膜除去の際、鉛含有量の気中濃度を測定し基準値内であることを確認しました。その後、防塵マスクを装着した作業員により塗膜を除去(3種ケレン)しました。除去した鉛含有塗料は福岡県の処分場(光和精鋼(株))で処分しています。平成26年度長堂橋塗替工事、平成27年度北部国道管内橋梁補修工事(東寺川橋)では、鉛が基準値を超えていたことからインバイロワン工法(塗膜除去工)にて対応しました。
仲泊大橋のタッチアップ塗装
――耐候性鋼材を採用している橋梁は
崎間 管内ではありません。
――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいますが、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強、補修して道路を守っていくのか、具体的な事例や計画を教えてください
崎間 防災対策箇所(1996年(平成8年)の総点検で確認された箇所)は毎年点検を行い、変状を確認しています。その他法面も、構造物点検にて5年に1度点検し変状を確認しています。さらに大雨や台風直後にも変状を調べています。各点検において変状が確認された箇所については、詳細調査等により対策を検討し適宜補修しています。ただし現時点において、橋梁のような補修計画は作成していません。
最近では、2017年の大雨で国道58号国頭村宇嘉地区において、土砂が流出し通行規制を実施した箇所で対策工を実施します。
仲泊大橋でTAPS溶射を用いた高力ボルトを採用
長期防食性を考慮
――新技術(NETIS工法の活用)やコスト縮減策は
崎間 仲泊大橋において、塩害環境が厳しい中、飛来塩分がたまりやすい鋼橋上部工の添接部のボルト・ナットに長期防食性が確保されたアルミニウム・マグネシウム合金を溶射した高力ボルトをNETISの中から選定して採用しています。
TAPS溶射を用いた高力ボルト
――橋梁の架替や大規模修繕、トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください。また修繕代行についても詳しく言及してください
崎間 橋梁の架替については、2019年度以降国道58号後原橋で予定しています。
トンネルの点検状況については、全ての10トンネルで点検を実施しており、新要領に基づき、今後も定期点検を5年に1度の頻度で実施予定ですが、トンネルやのり面についての長寿命化修繕計画は作成していません。
修繕代行は、実績がありません。
――懸案の平南橋は
崎間 以前から手を入れており、2017年度に点検した結果、損傷はさほど進んでいませんでした。2019年度は、犠牲陽極材による補修工事を行う予定です。当分架け替えの予定はありません。
平南橋
――ありがとうございました
(2019年4月25日掲載)