西海岸道路もⅡ期線着手を検討
南部国道事務所 小禄道路、南風原BP、与那原BPの整備を推進
内閣府
沖縄総合事務局
南部国道事務所
前 所長
小幡 宏 氏
橋梁158橋、トンネル9箇所を管理
供用年次は比較的新しい
――管内の橋梁・トンネルの内訳は
小幡 橋梁は158橋、トンネルは9本を管理しています。橋種別では、鋼橋が68橋と最も多く、次いでPC橋67橋となっています。RC橋は7橋、混合橋(RC+PC)2橋、混合橋(PC+鋼)14橋となっています。供用年次別では、1990年代が39橋、2000年代が38橋、2010年代が40橋、1970年代以前が11橋で、比較的新しいと言えます。延長別では、100m以上が94橋で最も多くなっています。管内橋梁総延長は約19.4kmです。路線別では、国道506号が45橋、次いで国道331号が44橋です。
トンネルでは、NATM工法が5トンネル、在来工法と沈埋工法が各2本です。供用年次別では2010年代が4トンネル、1970年代以前が2トンネル、延長別では100m以上1km未満が7トンネル、1km以上が2トンネルとなっています。管内トンネル総延長は約2.9kmです。路線別では国道330号が4本、国道58号、国道506号が各2本、国道331号が1本です。
鋼橋は添接部などが腐蝕
コンクリート橋はPC桁でもひび割れを確認
――点検を進めてみての管内の損傷・劣化状況を橋種、部位ごとに詳しく教えてください
小幡 鋼橋では塗装が塗りにくい箇所――添接部のボルトや添接板、高欄、支承、伸縮装置等に腐食・錆が発生しています。路線ごとの損傷の違いはなく、経年劣化、高温多湿・海岸に近いことから飛来塩分が付着することが主な原因と考えられます。
コンクリート橋では、主桁のひび割れ(PCもRCもあり)、塩害(昭和50年代はじめまでの海砂使用による内在塩分量と飛来塩分が多い)が発生しています。
トンネルでは、目地部やクラックからの漏水が発生していて、乾燥収縮、防水シートの劣化などがおもな原因と推察されます。伊祖トンネル(約100m、在来工法)は県が施工して直轄に編入しています。
耐震補強は約9割を完了
健全度Ⅲは7橋 宮城高架橋で塗り替え
――耐震補強の進捗状況は
小幡 対象橋梁は147橋で約9割(131橋)の補強が完了しています。今年度は、南風原アーチ橋の一部で実施します。2026年度の完了を目指して、現在、39橋脚のうち12橋脚が完了しています。橋脚はRC巻きつけと鋼板巻き立て、鉛直材の下部を鋼板と炭素繊維シートで補強しています。
南風原高架橋の側面図
補強図
南風原高架橋の耐震補強状況
――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
小幡 定期点検で補修が必要(H26以降 健全度Ⅲ)と診断された橋梁は7橋です。健全度Ⅲの橋梁(すべて溝橋)のうち、主に主桁や堅壁で損傷が確認されています。健全度Ⅱの橋数も53橋あります。
健全度Ⅲの橋梁の分布および最近の主な保全工事
そのうち、国道58号大山地区管渠補修工事として、溝橋の補修が平成29年度に完了しています。頂版、側壁にひび割れが発生していて、ひび割れの補修、乾式PCM吹付けによる断面修復、けい酸塩系含侵材によるコンクリート表面保護の対策を行いました。
大山地区管渠補修工事状況(乾式PCMや電気防食などを用いて補修した)
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の実績は。また、架け替え予定のある橋梁はありますか
小幡 架け替えはありません。2016年度には、国道506号宮城高架橋で塗装塗替え、国道58号白比橋でひび割れ補修、断面修復、炭素繊維シート補修、塗装塗替え、国道58号長田橋・比謝橋で断面修復、塗装塗替え、伸縮装置取替えを実施しています。17年度はなく、18年度には、国道506号宮城高架橋で塗装塗替えを行っています。
宮城高架橋の塗り替え工事
白比橋では塗り替えや断面修復、ひび割れ注入、鋼桁の炭素繊維シート補強などを行った
長田橋の外観および損傷状況
伸縮装置の取替
塗装塗替え
比謝橋でも同様の補修を行った
ASRは架設から20~30年後に発生
床版防水の設置率は不明
――コンクリート桁・床版部にはどのような損傷が発生していますか
小幡 コンクリート桁はひび割れが発生していて、PC緊張力によるものないしASRです。架設から20~30年後に発生しています。鋼床版の疲労き裂実績はありません。コンクリート床版は乾燥収縮、塩害によるひび割れがあります。沖縄では疲労損傷の進行は緩やかで、疲労による補修実績はありません。塩害での打ち替え事例はあります。
――管内橋梁における床版防水工の設置状況は把握していますか
小幡 設置率は不明です。施工に際しては、シート系と塗膜系を現地条件で使い分けています。現時点での発注予定はありません。
――支承、伸縮装置の取替えについて、2018年度、2019年度の施工予定箇所数は
小幡 両年度での実績、予定はありません。
――塩害、ASRによる劣化の有無、劣化があればその状態と対策工法を教えてください
小幡 塩害では、国道58号の長田橋、比謝橋があります。架設後60年以上が経過していることと、床版に未除塩の海砂の使用による塩害によって部分的に損傷が発生しました。対策として、保護塗装や断面補修を行いました。
――海洋博に間に合わせるために突貫施工したこともあり、沖縄でもNEXCOでは塩害による損傷が大きいと聞いています。長田橋、比謝橋の建設年次は
小幡 1950年代で米軍が建設したものになります。
――床版厚はどれくらいですか
小幡 長田橋の床版厚は240mmです。床版は剥離や、鉄筋露出、うき、漏水・遊離石灰 コンクリート補強材の損傷などがありましたので、表面含浸工の塗布および断面修復工の施工を行いました。同時に主桁や横桁で腐食や防食機能の劣化があったため、全面的に塗装塗替えを行っています。また、伸縮装置についても、後打ちコンクリートにうきが見られたため、伸縮装置の取替えを行っています。
長田橋の床版の損傷状況
同橋の補修状況
比謝橋の床版厚は230mmで、長田橋と同様の損傷が起きていたため、同様の補修を行いました。
比謝橋の床版損傷状況
同橋の補修状況
山下垣花高架橋で過去にPC桁や下部工を補修
南城市の橋梁で九州から運んだプレテン桁がASRに
――ASRについては
小幡 山下垣花高架橋でPC桁や下部工にひび割れが発生しました。ひび割れを断面修復により修繕し、水の進入防止を目的として桁に保護塗装をしています。
――過去の話ですか
小幡 現在も続いていますが、損傷の程度が進行していないので、経過観察となっています。
――同橋については平成15年ごろにコンクリート保護塗装を含浸材系に塗り替えたと思いますが、それから進行はしていないですか
小幡 そうです。
――塗装後の補修は行っていませんか
小幡 行っていません。
――山下垣花高架橋以外でのASRの損傷はありますか
小幡 山下垣花高架橋以外に、過去3年で第二北前橋のコンクリート健全度調査の結果、ASRによる損傷があります。
――沖縄では琉球石灰岩を使用しているので、ASRによる損傷が発生していると聞きますが
小幡 南城市で、九州から持ってきたプレテン桁がASRにより損傷しました。損傷はひどくないので経過観察になっています。昔、台湾から入ってきた骨材でも反応があったと聞いています。