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武若耕司委員長インタビュー

土木学会 「亜鉛めっき鉄筋を用いたコンクリート構造物の設計・施工指針(案)」を改訂

土木学会コンクリート委員会
亜鉛めっき鉄筋指針改訂小委員会 委員長
鹿児島大学
教授

武若 耕司

公開日:2019.04.15

運搬や施工時に多少傷ついても使用可能

 ――溶融亜鉛めっき鉄筋の特徴とは
 武若 亜鉛めっき層により鉄筋表面を覆うことでその皮膜効果で鉄筋腐食の要因である酸素や水の鋼材素地への接触を防ぐことに加え、亜鉛が鋼より先行して腐食することで、その際に亜鉛から鋼材素地に流れる電流によって鋼材を腐食から守る、所謂、犠牲防食作用を利用した防食鉄筋です。犠牲防食作用を利用しているため運搬時や施工時に多少鉄筋表面が傷ついても従来の防食鉄筋のようにリタッチせずとも品質は保てます。また、製作コストは従来の防食鉄筋に比べて比較的安く抑えることが可能です。防食効果は先ほど話したようにエポキシ樹脂塗装鉄筋などと同様の期間を期待できます。
 但し鉄筋はSi量がFe-Zn合金反応に大きな影響を及ぼすことから、JIS G 3112に適合する鉄筋であることはもちろん、適正なSi量(0.13~0.23%)を含有することを確認することを求めました。
 ――施工性というと現場では曲げ加工を求められることもありますが
 武若 曲げ加工はできないことはありませんが、めっき時の熱影響を受けやすいので予め精査して行うように求めています。膜厚と曲げ角度の限界(どれくらい曲げればめっき被膜が損傷するか、直径などに応じて限界値は異なる)は指針に記述してあります。メーカーサイドにも慎重に対応していただき、いくつかのパターンを示しました。

亜鉛めっき層の消耗も定量的に調査
 飛来塩分環境下でも100年は優に持つ

 ――耐久性の照査はどのように行っているのですか
 武若 亜鉛めっき層の消耗膜厚の設計値は、亜鉛めっき鉄筋周囲のpH、同含水率、鋼材位置における塩化物イオン濃度から示すことができるようにしました。


 pH(12.5)と塩化物イオン濃度の影響によって亜鉛めっき層が少しずつ消耗していくことを委員会の中で定量的な試験を行い調査・検討していきました。pHは基本的に変わらないと考え、アルカリによる損耗(腐食)は経時的に腐食する計算としました。一方で塩化物イオン濃度の影響に関しては、海水中、干満帯、飛沫帯など水が影響を及ぼす可能性の高い高含水状態の環境と、海岸付近の大気中等の含水率がそれほど高くない環境の2地域に区分分けして係数を付与し、前者を1、後者を0.7としました。これらは実際に亜鉛めっき鉄筋を埋設したコンクリート供試体を10年間実物暴露した結果から設定したものです。



 塩化物イオン濃度の違いによる亜鉛めっき被覆の浸食速度の評価は、塩化物イオンを含む鉄筋近傍のコンクリートを模した飽和水酸化カルシウム水溶液中での浸漬試験により行いました。その結果、めっき層は最も厳しい環境下でも年2μmしか消耗しないことが分かりました。つまり200μmの膜厚であれば100年持つわけです。現状で一般的に使用されている120~130μmの塗膜厚の鉄筋でも、60年程度は持つと考えています。これは海岸線の干満帯などを考慮していますので、それよりも環境の優しい飛来塩分地域などであれば100年以上は優に持つ見込みです。

 これらの数値は、適正な水セメント比によるコンクリートが適正なかぶり厚を確保して打設されていることが前提となりますので、これらの最大水セメント比あるいは最小かぶり等の数値についても、指針の中で明記しています。
 ――ひび割れ発生部などで局部的に先行して腐食することは考えられませんか
 武若 運搬時や施工時によるひび割れが生じていても犠牲防食作用が働くため直ちに局部的に先行腐食することはないと考えています。
 ――こうした照査や品質の確保を担保するための生産体制はどのようになっていますか
 武若 鉄筋に亜鉛めっきを施す工場としては、JIS H 8641「溶融亜鉛めっき」に適合するJIS認証取得工場の中から選定することを原則としています。

ユーザーが状況に応じて防食鉄筋を使い分けて欲しい

 ――最後に亜鉛めっき鉄筋とエポキシ樹脂塗装鉄筋やステンレス鉄筋などをどのように使い分けていくべきなのでしょうか
 武若 これはユーザーが状況に応じて判断するしかないと思います。より塩害環境の厳しい条件で、コストが高くなることも良しとすれば、FRP筋やステンレス筋などを選ぶでしょうし、コストを考慮し、施工の際にあまり注意をしなくてもよいことを利点とするならば亜鉛めっき鉄筋、実績や信頼性の面を考慮するのであればエポキシ樹脂塗装鉄筋――など選ぶ基準は環境条件、構造条件、施工者のスキルなどによって様々だと思います。我々はそうしたユーザーに対して少しでも選択肢の幅を広くできれば、と思っています。
 ――ありがとうございました
(2019年4月15日掲載)

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