ショーボンド建設 補強工事に特化したアドバンテージを今後も生かす
ショーボンド建設株式会社
代表取締役社長
岸本 達也 氏
ショーボンド建設が快調だ。東日本大震災、熊本地震などの地震災害の発生や大規模更新・大規模修繕、長寿命化修繕計画などの進展もあり、業績を確実に伸ばしている。橋梁保全のパイオニアとして黎明期から保全に特化して他の建設会社と一線を画してきたが、維持管理時代の到来によりその業務はメインストリームとなりつつある。同社の特徴と今後の指針などを岸本達也社長に聞いた。(井手迫瑞樹)
ゼネコンからショーボンドへ
元々、材料に関心が強かった
――ショーボンド建設に入社する前は熊谷組にいたそうですね
岸本社長 熊谷組では、1986年に入社以来15年間勤務していました。原子力開発室土木技術部で設計業務に携わったのち、エンジニアリング本部で技術営業を行いました。最後の5年間は横浜支店でコンサルタントや現場に向けた設計対応、次いで同支店で河口堰やNATMトンネルの建設現場に従事しました。
――ショーボンド建設に転職したのはなぜですか
岸本 母校の東京大学では、岡村甫先生や前川宏一先生のもとで学ばせていただいたのですが、主たる研究内容はバイブレータをかけなくても打設できる自己流動性コンクリートの開発でした。土木工学に進みましたが、志向としてはもともと構造より材料の方にありました。将来的なニーズを考えると、補修に特化したショーボンド建設は興味深いなと感じた頃、当時のショーボンド建設の役員が、つくばの補修工学研究所を案内してもらいまして、その実験設備にも心が動かされました。
――ショーボンド建設入社後はどのような仕事に従事されたのですか
岸本 熊谷組での経験を活かし、当初はトンネル補修工事の現場に従事しました。その後、首都圏北陸支社の技術部長を6年ほど勤めました。具体的にはコンサルへの既存工法の織り込み営業や、現場での設計変更対応・トラブル対応、新技術の開発・現場導入などです。熊谷組の設計担当時も同じようなことをやっていたので、施工する部位や新設と補修という工種が変わった以外それほど戸惑いはありませんでした。09年以降は横浜支店長を皮切りに各支社長を務め、15年に副社長兼本社営業本部長、17年からは当社の代表取締役社長、18年からはショーボンド建設ホールディングスの同職も兼務しています。
トラブル対応に経験を生かす
事前調査には最善を尽くさねばならない
――心に残っている現場を特に上げると
岸本 トラブル対応なのですが、05年秋にある橋梁下部工の耐震補強を行っている現場で水が噴き出てきた、と一報が入りました。フーチング部掘削に際して山留のためのH鋼を打ち込んでいる作業中、配水管に穴をあけてしまったのです。その配水管は図面に描かれていないものでした。毎分2㎥の漏水が出ていました。ショーボンド建設には保全のプロはたくさんいますが、地中掘削のプロはいません。どの範囲を掘れば的確に穴の開いている部分を掘り出せるかはわかりません。そこで私の知識が役に立ちました。その日から昼夜突貫作業となりましたが、土留め設置、地盤改良、掘削を行いヴィクトリックジョイントで繋ぐことで早期に水道管を補修し、補強工事も行うことができました。ここでは、図面に書かれていなくても事前調査には最善を尽くさなくてはいけないという強い教訓を得ました。
昔とは違う強み
ノウハウ、熟練度、大口購買ゆえの価格交渉力
――ショーボンド建設の強みは材工一体という印象がありますが
岸本 そうですね、昔はひび割れ注入、断面修復、鋼板接着、保護塗装などにエポキシ樹脂注入剤など自社材料を使用する工種が主体であり、材料原価の低減が図れるという強みがありました。また、早めからコンサルタントや発注者に接触してニーズをとらえ、自社技術を絡めた形で設計に織り込み受注に結び付けるという点も強みがありました。
しかし現在は、支承取替や耐震補強、塗装塗替え等に工種が移っており、自社材料を使用するケースは3割強ほどに減少しています。
現在の強みは、当社社員はもとより、協力業者も含めて補修補強工事に特化し、ノウハウを蓄積しており熟練度も高いため、工事上の手戻りが少なく、生産性も高く工期を遵守及び短縮できる点です。また、現在は大型工事も増えており協力業者に1年中、当社からの仕事を確保できるため(工事当たりの)労務単価が過度に上がることもありません。加えて会社全体で同種の補修補強工事のみを施工しているため、自社材料でなくとも材料会社に対して大口顧客として価格交渉がしやすく、ここでもコスト縮減を図り競争力を高めることができます。これらの点が強みと言えるでしょうか。
七滝高架橋耐震補強
本庄橋のアウトケーブル補強
――人員を確保できているという点は昨今の人手不足を考慮するとかなりの強みですね
岸本 そうですが、現在は人員という点ではちょうど仕事に対して均衡しているような状況です。今以上に売り上げを伸ばすためには新たな協力会社を探すかメタルやPCのファブ、ゼネコンなどと協力することでJVとして仕事を取っていくことが必要ですし、一部の現場ではすでにそうしたことを行っています。