耐震補強対象橋梁は414橋
378橋を完了、2018年度は14橋で対策を実施
――橋梁耐震補強の進捗状況は
向井 当県では平成8年道路橋示方書の耐震基準より古い基準で設計された15m以上の橋梁を耐震補強の対象としています。対象橋梁は414橋あり、2017年度までに378橋の対策を完了しています。残る橋梁36橋のうち、2018年度は14橋で耐震対策を行う予定です。主な橋梁は西予市の肱川に架かる橋で黒瀬橋(1957年供用、橋長93m、鋼トラス橋)、野村大橋(1964年供用、橋長71m、PC橋)、松山市の重信川に架かる出合橋(1979年供用、橋長210m、鋼橋)などです。いずれも橋脚の巻き立てと落橋防止装置設置工を施しています。
――河川内の橋梁ですが、補強により河積阻害率を上げないための方策は何か取っていますか
向井 黒瀬橋、野村大橋についてはRC巻き立てによる補強、出合橋のみPCMにより断面を薄くして補強を行い、河積阻害を防いでいます。
――支承およびジョイントの取替、ノージョイント化の進捗状況と今年度の予定は
向井 Ⅲ判定とされたものを対象に順次対策を施しています。鋼製支承はピンローラー支承の損傷が目立ちます。
但し、今年度は、支承取替、ノージョイント化の事例はありません。ジョイント取替は日向谷第一橋、遍路橋、新長浜大橋で行っています。
日向谷第一橋(左)、新長浜大橋(右)の伸縮装置取替
遍路橋の伸縮装置交換にはヒノダクタイルジョイントを用いている
塩害対策は事後保全だけでなく予防保全も
ASRは4橋で確認、2橋対策完了、2橋調査設計中
――塩害及びASRによる損傷の有無を教えてください。またある場合はどのような対策を施していますか
向井 ASRは4橋で確認されています。新居浜東港線の東田大橋、南川壬生川停車場線の吉田橋、壬生川新居浜野田線の野田跨線橋、国道197号の二名津3号橋です。このほか5橋でASRの疑いがありましたが、詳細調査の結果、反応が収束しており、対策は不要と判断しました。
東田大橋(橋長26m、PC橋)では主桁、吉田橋(橋長236m、PC橋)では橋脚でASRの疑いの濃い損傷が生じており、亜硝酸リチウム注入(ASRリチウム工法)およびけい酸リチウム系表面含浸材を塗布する補修工を施しています。野田跨線橋(橋長147m、PC橋)の下部工(柱部)、二名津3号橋(橋長:36m、鋼橋)の橋台は調査設計中です。
一方、沿岸部の橋梁で塩害の影響は顕著です。鉄筋近傍でも塩分量は多く、経年による中性化と複合して、鉄筋の腐食膨張や被りコンクリートの剥落を招いています。損傷した橋梁については、ひび割れ注入、鉄筋防錆や断面修復などの補修を施していますが、健全な橋梁についても表面被覆や表面含浸などの予防保全的な対策を施していく必要を痛感しており一部の橋梁ではすでに施工しています。
コンクリート部材の補修
鋼素地調整は基本的に3種を採用
河之瀬橋などでは塗膜剥離剤を使用して既設塗膜を除去
――鋼橋の損傷状況および鋼橋の塗り替え状況は
向井 沿岸部では塗膜劣化のみならず、腐食あるいは孔食までに至っているケースも見受けられます。そうした著しく板厚が減耗している箇所では当て板しか対策が無いように感じます。実際にそうした対策を施した橋梁もあります。
――通常の県管理レベルの橋梁では、端部の劣化がほとんどですが、愛媛県管理の橋梁では海側に面している最外桁全体が損傷しているイメージでよいのでしょうか
向井 そのイメージの橋梁もあります。全体的に断面が細っているような橋梁も見受けられます。
――塗り替えは常に先手を打たないと大変なことになりそうですね
向井 そう思います。
――塗り替えの素地調整の基本レベルは何種ですか。また、PCBおよび鉛を含む塗膜除去はどのような工法を用いていますか
向井 今年度は、日吉大橋(鬼北町日吉、橋長99m、鋼単純鈑桁橋)、古川橋(西条市古川乙、橋長273m、PC橋)、河之瀬橋(西条市河之瀬、中山川支流渡河部、橋長18m、鋼単純方杖ラーメン橋)などで塗り替えを行いました。河之瀬橋では塗膜にPCBや鉛など有害物を含んでいたことが確認されたため、塗膜剥離剤を使用して既設塗膜を除去しています。素地調整レベルは基本的に3種を採用しています。
河之瀬橋の塗り替え
塗膜剥離剤(パントレ)を用いた既設塗膜の除去
耐候性鋼材採用橋は151橋で採用 健全度Ⅲが12橋
床鍋橋で不安定錆を取り除き弱溶剤系ふっ素樹脂塗料で塗り替え
――耐候性鋼材の採用状況と健全度の状況は
向井 151橋採用しています。健全度Ⅲが12橋あります。これらは不安定錆が発生しており、橋によっては腐食や孔食が生じているものもあります。今年度は床鍋橋(新居浜市別子山の床鍋谷川渡河部、橋長54m、鋼橋)で耐候性鋼材の不安定錆をディスクサンダーなどで除去し、弱溶剤形ふっ素樹脂塗料などで塗り替える対策を施しています。
不安定錆が生じていた床鍋橋におけるケレン作業
ケレン完了後、弱溶剤形ふっ素樹脂塗料を塗装
――金属溶射など新工法の採用はありますか
向井 新設橋ではありませんが、新設した九島大橋でアルマグ溶射を採用した事例があります。
自然斜面要対策箇所は2,008、緊急輸送道路上は9割超の対策を完了
古い法面の要対策箇所は1,365箇所
――7月の豪雨災害のみならず、近年では異常気象などによる災害が頻発しています。とりわけ自然斜面や古い法面が崩壊し、崩土が道路を埋めてしまうことで集落が孤立する事例も頻発しています。そうした事態への事前対策は進んでいますか
向井 自然斜面については、1996年に法面防災点検を実施しております。要対策箇所は2,008箇所に上ります。その中で緊急輸送道路に指定されている606箇所を優先して対策工事を実施しています。
現状では全体で1,225箇所(約61%)の対策を完了しています。なかでも緊急輸送道路上の自然斜面は550箇所と9割超の対策を終えています。緊急輸送道路上の要対策箇所は2023年までには、対策を完了させたいと考えています。ただし、昨夏の豪雨があったため、見直しをかけています。
古い法面は笹子トンネルの崩落事故を踏まえまして、2012、13年の2か年でストック点検を行いました。その結果、要対策箇所は1365箇所に上ることが確認されています。早急な対応を要するA判定箇所から順次実施している状況です。こちらはまだそれほど進んでいません。薄いモルタルで吹き付けられた箇所の剥落や、古いPCアンカーの緊張が抜けているなどの箇所はあるため、注意しています。
自然斜面や古い法面の補修には年間8億程度を投資しています。工法としては法枠、アンカーフレーム、擁壁、ストーンガードの設置などです。
――新技術、新工法の活用は
向井 県独自の新技術。新工法の採用はありません。国や他県の実績を踏まえて採用しています。コスト縮減策としては、橋梁の長寿命化修繕と耐震補強の同時施工を行うことで仮設足場工のコストを縮減できるよう心がけています。
――ありがとうございました
(2019年2月1日掲載)