橋梁はRC橋が最多の953橋、PC橋615橋、鋼橋445橋
90m以上の比較的長大な橋は166橋
――次に県が管理する道路構造物の内訳について
向井 橋梁は2,735橋、トンネルは171箇所をそれぞれ管理しています。急峻な山地が多いことから構造物は比較的多くなっています。
――橋梁から聞きます。橋種別の管理数は
向井 RC橋が最も多く953橋、次いでボックスカルバートが630基、PC橋が615橋、鋼橋が445橋、その他が92という内訳です。
愛媛県の架設年代別、橋長別、橋種別橋梁(愛媛県提供、以下注釈なきは同)
――補助国道、主要地方道、一般県道別管理数は
向井 補助国道664橋、主要地方道877橋、一般県道1194橋となっています。
――橋長別は
向井 15m未満の小規模橋が1,698橋と全体の6割を超えています。90m以上の比較的長大な橋は166橋となっています。長大橋は弓削大橋や生名橋という2つの島嶼架橋のほか、重信川(川口大橋、重信橋など)や中山川(蛭子高架橋など)、賀茂川(新賀茂川大橋など)、肱川(新冨士橋、長濱大橋その他)などの大規模な河川にかかる橋が該当します。また、佐田岬半島を通る国道197号、通称「メロディーライン」と申しますが、そこにも長大橋が架かっています。
島嶼架橋(井手迫瑞樹撮影)
長濱大橋(井手迫瑞樹撮影)
――架設年次別は
向井 1959年までに供用された橋梁が342橋となっています。最も多い年代は60年代で579橋、次いで70年代が544橋とやはり高度経済成長期以前に架けた橋梁が過半数を超えています。
トンネル 在来矢板工法が91基と過半を占める
1,000m以上の長大トンネルも19箇所
――次いでトンネルの工種別比率は
向井 在来矢板工法が91基、NATMが77基、素掘り工法等が3基という内訳です。
――補助国道、主要地方道、一般県道別管理数は
向井 補助国道89基、主要地方道56基、一般県道26基となっています。
――トンネルの延長別比率は
向井 一番多いのが100m以上200m未満で42箇所、次いで200m以上300m未満が25箇所となっています。100m未満が18箇所ある一方で、1,000m以上の長大トンネルも19箇所あります。
――トンネルの完成年次別は
向井 1959年以前が8基、60年代が20基、70年代が30基と高度経済成長期以前に作ったトンネルは3分の1にとどまります。ピークは今のところ90年代の43基、次いで80年代の38基です。
橋梁 健全度Ⅲは13%、鋼橋はⅢが2割に達する
沿岸部での塗膜劣化や腐食が顕著 塩害が大きく介在
――点検を進めてみての劣化状況は
向井 橋梁について言いますと、健全度Ⅳはなく、Ⅲが13%を占めます。Ⅲの割合は鋼橋が最も多く2割を占めます。次いでRC橋が12%、ボックスカルバートが9%、PC橋が8%となっています。Iも全体の44%と比較的健全な状態を保っています。
橋種別では鋼橋において塗膜劣化や腐食が比較的進行している状況です。特に沿岸部での劣化が顕著です。ただし、山間部での凍結防止剤による損傷はあまり見られません。これはボックスカルバート、RCとも同様の傾向で、愛媛県管理の橋梁は塩害によるものが大きいといえます。PC橋の健全度Ⅲは施工時の段取り筋残置により被りが薄くなっている箇所で鉄筋が腐蝕、被りが剥落している事例があります。これらは初期施工に起因した不良で構造的な影響はありません。
部位別では鋼桁の塗装劣化や腐食が最大の劣化要因です。次いで鋼製支承の腐食、縮装置の変形が続きます。RC系ではコンクリート床版橋やボックスカルバートの剥離、鉄筋露出などが見られます。これらは塩害による損傷と初期の被り不足の両方が原因と見ています。
地覆や高欄、下部工については比較的健全な状態を保っています。
――PCポステンT桁の上縁定着部のグラウト充填不良に起因する損傷はありませんか
向井 今のところ見つかっていません。
――床版上面の水が作用して劣化を促進し砂利化する損傷はありませんか
向井 県内の橋梁ではそうした損傷は今のところ確認されていません。
トンネル Ⅲ判定は41%に達する
道路方向のひび割れも少ない数ではあるが確認
――トンネルの損傷傾向は
向井 今年度末にすべてのトンネルにおいて一巡目の点検を終える予定です。現在は171箇所中130箇所のデータを取得している状況です。現時点ではⅣ判定はなく、Ⅲ判定は41%、Ⅱ判定が36%、Ⅰ判定はないという状況です(未点検が23%)。
――具体的な損傷状況は
向井 覆工コンクリートのひび割れ、場所によっては漏水が生じています。定期点検が始まる前に、一度空洞化調査も実施しました。その折に空洞が生じているとみられる箇所には、内部充填工法による補修を行っています。平成11年度に空洞調査し、順次補修を開始し、平成28年度予算で補修を完了しました。
――生じているひび割れは目地沿いですか、道路走行方向のひび割れですか
向井 目地方向のひび割れが多数を占めます。道路走行方向のひび割れも少ない数ですが確認しています。
橋梁長寿命化 修繕費に毎年20億円超を投じる
2018年度末に45%に当たる157橋が対策を完了
――橋梁長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は。約350橋はⅢ判定のようですが
向井 橋梁修繕費には毎年20億円超を投じており、順調に進んでいます。Ⅲ判定とされた346橋のうち、2018年度末で157橋(45%)が対策を終える予定です。標準的には点検でⅢ判定されてから3年以内に対策を終えられるように努めています。当県としても早くⅢ判定を根絶して、Ⅱ判定の橋を予防保全するサイクルに持っていきたいと考えています。残念ながらⅡ判定の橋の補修には手が着けられていない状況です。
2018年度は266橋で修繕事業を実施しています。長大橋では、トラスの重信橋(1950年供用、鋼9径間単純下路式トラス橋、橋長336.7m)で床版防水および高欄補修、古川橋(1959年供用、鋼13径間PCプレテンT桁、橋長273.0m)で断面修復やひび割れ注入を行っています。ここ3年では日向谷第一橋(1979年供用、PC橋、橋長237m)で伸縮装置の取替、ひび割れ注入、新長浜大橋(1977年供用、PC橋、橋長333m)で橋面防水、切削オーバーレイ、伸縮装置の取替を行っています。
重信橋の高欄補修
同橋の橋面防水
――特に床版について、もう少し詳しく
向井 鋼床版の疲労亀裂などの事例は生じていません。コンクリートの床版については、塩害による被りの剥落や鉄筋腐食が生じており、鉄筋防錆処理をした上でポリマーセメントモルタルなどを用いた下面からの断面修復を行っています。
――床版防水の敷設状況は把握していますか
向井 把握はしていません。橋梁補修時に合わせて舗装修繕工事を行うときは基本的に塗膜系およびシート系の床版防水を設置するようにしています。
――トンネル長寿命化修繕計画の策定と進捗状況は
向井 道路トンネルの長寿命化修繕計画は2017年度に策定しました。
現在把握しているⅢ判定70箇所のうち、昨年度末までに12箇所の対策を完了しています。今年度は14箇所で対策を完了する予定です。対策する主な長大トンネルとしては峠御堂トンネル(1974年完成 延長623.1m)、足谷トンネル(1986年完成 延長266.5m)、雄嶽トンネル(1956年完成 延長98.5m)があり、断面補修工、ひびわれ注入工、炭素繊維シート工などを行う予定です。
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