道路構造物ジャーナルNET

下部工・トンネル掘進が全面展開

NEXCO東日本いわき工事 常磐道4車線化事業 2020年度内の完成目指す

東日本高速道路株式会社
東北支社
いわき工事事務所長

田子 瑞宏

公開日:2018.12.26

 折木川下部工で鋼管・PC複合橋脚を採用
  1ロット5m高で施工、養生期間を1週間は確保

 ――橋梁は
 田子 やはり当該区間で最も長い橋梁である折木川橋です。延長711.5m、橋脚の高さは最高で48m、上部工の形式は12径間連続2主鈑桁橋です。架設工法は手延べの送り出し機による架設を行います。桁下クリアランスが48mもありますので、両橋台から送り出し、最後に最終ブロックを吊上げて閉合します。1期線の時は時間があったので、片側からの送り出しだったのですが、今回は全体の工期が2020年度末と、ほとんど時間がないため、このような手法を採りました。


折木川橋の橋梁概要及び下部工進捗状況

 ――橋脚高も結構な規模ですが、どのような手法を用いて打設していますか
 田子 下部工形式は1期線と同様、帯筋やせん断補強筋を省略できる鋼管・コンクリート複合構造橋脚(鋼管を鉛直に建込、周囲にらせん状にPC鋼材を配置し、コンクリートを打設する構造)を高橋脚のP2~P10に採用しています(A1、P1、P11、A2はRC)。橋脚自体はスレンダーな形状ですが、靭性は通常の橋脚と同様の性能を保持できます。同構造は、当社の前身のJHと大林組で共同開発した構造です。コンクリートの打設には一般的な総足場を用いています。本来は、型枠や足場を転用する形で、1脚ずつ施工しますが、今回は時間がないため、数基の橋脚を同時施工しています。橋脚自体の形は、足場が転用しやすいように基本的にはすべて一緒の形にしています。転用は通常であれば3、4回可能ですが、今回は2回ぐらいしか使いません。鋼管は一本毎にクレーンで立ち上げて、溶接で継ぎ足していくやり方を採用しています。PC鋼より線は巻くだけです。


鋼管・コンクリート複合橋脚/下部工施工手順

折木川橋遠景

折木川橋遠景②/同近景

 ――コンクリートの打設ロットは
 田子 1ロット5mで打設します。コンクリートはひび割れ防止対策として中庸熱セメントを用います。1ロットの打設には20日かけ、養生期間を1週間取っています。ジャンカなどを生じないようにバイブレーターも確実に行うようチェックしています。
 ――橋脚基礎の形式は
 田子 深礎杭です。同地の基礎は比較的浅く7m~最大でも10mぐらいです。
 ――速さを求めるのであれば1柱1杭基礎などもありますが
 田子 橋の基本コンセプトが、1期線とほぼ同じ構造形式ですので、基本的には前回の工法を踏襲しており、大きな変更を要する検討は行っていません。
 ――以前、NEXCO中日本の東海北陸道の4車線化を取材した際、1期線の供用状況を踏まえて、構造ディテールは変えないものの、凍結防止剤の散布量などを鑑みてさらなる耐久性向上策を図っていました。常磐道の4車線化ではそうした1期線を踏まえた対応はありませんか
 田子 常磐道でも当地福島県浜通りは比較的温暖で、相馬~相馬南間の標高が高い個所を除いて、それほど凍結防止剤は撒きません。そのため凍結防止剤対策はそれほど必要がありません。
 ――進捗状況は
 田子 P2、P10以外は鋼管の建て込みに着手している状況です。

北迫川橋 SPER工法で工期短縮を模索
 ハーフプレキャスト部材を用いた急速施工法

 ――折木川橋以外で特徴のある橋は
 田子 広野IC近くの北迫工事内にある北迫(きたば)川橋(439.5m、PC・鋼複合橋)下部工についてSPER工法を採用しました。SPER工法は、ハーフプレキャスト部材を用いた急速施工法です。



北迫川橋遠景

SPER工法概要図およびSTEP図

 プレキャスト製品のセグメント(工場製作)を持ってきて積み上げていき、内部にコンクリートを打ち込み、合成構造の橋脚を急速施工する工法で、三井住友建設が関連特許を有しています。同橋では橋脚高さ約30m~40mの高橋脚となるP1~P4にSPER工法を用いて工程短縮を図ります。同橋の下部工を含む土工工事で契約不調により、遅れている経緯もあり、同工法を使って工事日数を短縮したいと考えています。基礎は竹割式土留め工法を用いた大口径深礎杭と通常の深礎杭、直接基礎を採用しています。同橋はPC上部工部分も三井住友建設が製作・架設予定です。鋼上部工部は横河住金ブリッジが施工します。


北迫川橋一般図

竹割型掘削により行われているP1下部工施工/橋脚基礎の施工

10月末段階の現場状況

 ――P3~P4だけ短く、支間長は何だかアンバランスですね
 田子 1期線のころからアンバランスです。PC上部工は4径間の連続ラーメン箱桁で鋼上部工は3径間の連続2主鈑桁です。
 ――ここもピア高は高いですね
 田子 平均して30mぐらいあります。最高は約43mに達します。基礎は大口径深礎杭で10~22mです。あとは直接基礎や4mの深礎杭です。ただ、この辺も結構硬くて、施工に苦労しています。北迫川橋は主に基礎を施工中です。SPER工法は1期線ではやっていませんので当社としても初の試みとなります。  
 ――大久川橋も長大橋ですね
 田子 橋長601.45mのPRC9径間連続ラーメン箱桁橋です。同橋もほぼ1期線の構造形式を踏襲しています。一部フーチングの形が異なる箇所がありますが、おおむね同じように基礎を打ちます。ここは結構地質がよくて基礎が浅く、直接基礎が主なのですが、河川の近くと橋台に近い個所のみ杭基礎にしています。ピア高は平均26m程度です。


大久川橋の現況

 ――仁井田川橋も438m、常磐夏井川橋も444m、浅見川橋が607m(鋼3鈑桁+鋼3細幅箱桁+鋼6鈑桁橋)、長大橋はたくさんありますね
 田子 いずれも22橋126基の下部工施工中、上部工詳細設計中で工期短縮の為の新な床版工採用について詳しいことはまだ言える段階ではありません。ただ、折木川橋と北迫川橋は先ほど申し上げました通り下部工で工程短縮を図っています。来年には北迫川橋のSPER工法が最盛期になると思います。



小久川橋


常磐夏井川橋

 浅見川橋の1期線との違いは同じ箱桁でも細幅タイプを使っていることです。床版は1期線同様にPC床版を用いています。ただ、床版の軽量化や施工時の安全、施工後の剥落防止などを考えれば合成床版という検討もしてほしかったと感じています。



浅見川橋

 ――あと2年半の工期で、供用までこぎつけなければいけない。大変ですね
 田子 ご覧になってわかるように何にも無い更地ではなく、基本的には供用している1期線があります。クレーン+ベント架設できる個所は日中に工事しますが、暫定2車線ですので、細心の注意が必要です。夜間架設が必要なのは国道49号と交差している好間トンネルのいわき中央ICを降りてすぐの場所です。49号の直上を跨ぐため、夜間通行止めして、500t級程のクローラークレーンを用いてクレーン+ベント架設します。
 ――上部工がかかっているところは
 田子 未だありません。22橋を3工区で対応していますが、いまだ詳細設計中で架設に着手した橋梁はありません。
 ――片持ち架設工法を採用しているのは
 田子 常磐夏井川橋や仁井田川橋などです。しかし、それほど変わった架設工法は採用しません。手延べ桁による送り出し架設が折木川橋・常住川橋・北迫川橋(鋼部)です。



仁井田川橋

常住川橋

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