国内橋梁受注高で業界1位を継続
大日本コンサルタント 新しい発注形態に対応できる組織づくりと人材育成
大日本コンサルタント株式会社
代表取締役社長執行役員
新井 伸博 氏
川崎臨港道路主橋梁部 主塔の基礎形式を左右で変える
天城橋 国内最大級となるソリッドリブ中路アーチ橋
――御社が設計された最近の国内の主要橋梁について
新井 川崎港臨港道路東扇島水江町線主橋梁部(5径間連続複合斜張橋、橋長870m、中央支間長525m(国内第三位))では、施工位置が羽田空港から4km程しか離れておらず、空頭制限が設定されているため、主塔高さを抑えていることがひとつの特徴です。これにより、塔高と支間長の比が1:10といった低主塔斜張橋となっており、技術的難易度が高い設計を行っています。また、深い支持層(-60m以深)に対応するため、ニューマチックケーソン基礎と鋼管矢板基礎を採用するなど異種基礎を採用した設計を行っています。
川崎臨港道路東扇島水江町線主橋梁部(完成イメージ)
三陸沿岸道路(仮称)気仙沼湾横断橋 全長1,344mのうち海上部680m(鋼3径間連続斜張橋)の設計では、維持管理がしやすく、想定外の事象に対しても損傷が制御され、かつ美しい形態の橋を基本コンセプトとしました。ダメージコントロール設計という新たな設計手法を取り入れ、レベル2地震を超えるような想定外地震に対しても粘り強い構造にしています。
気仙沼湾横断橋(仮称)(完成イメージ)
今年5月に供用された天城橋(中路式鋼PC複合アーチ橋、橋長463m)は、1966年完成当時、世界一の連続トラス橋だった著名な天門橋に隣接することから、周辺に調和しながらも40数年の技術的進展が感じられる橋をコンセプトに予備設計を進めました。最終的に橋梁形式は、有識者で構成される「新天門橋技術検討委員会」の助言もふまえて、国内最大級となるソリッドリブ中路アーチ橋を選定しました。スレンダーなアーチは、アーチ部の側径間に配置したコンクリートT型ラーメン橋のシンプルな形状とともに、天門橋や周囲と調和し、長大支間橋としても技術の進展を表現できたと考えています。
天城橋
今年10月に供用した利賀大橋は橋長368mの鋼上路式アーチ橋です。連続する鋼製箱桁を、支間中央では鋼管φ1000 を3本使用した逆三角形のトラスリブアーチが支え、側径間はコンクリート橋脚と剛結する複合ラーメン構造としています。剛性の高いアーチリブとの組み合わせにより、風荷重や地震に対する全体剛性を高めることで、アーチリブから補剛桁を支える支柱にブレース材が不要となり、橋全体として、シンプルで骨太なラインを繊細なトラスアーチが支えるイメージを鮮明にしました。
利賀大橋
若手社員を対象に実践形式の演習を導入
昨年7月に「働き方改革推進本部」を設置
――設計でのICTの活用は
新井 ICTの活用に関しては相当前から取り組んでいますが、その前提となる3次元データの作成には、今でも手間がかかります。スキルを持った人材育成は地道に進めていますが、効率化については、いまも試行錯誤しています。3次元データがあれば、解析の効率化になりますし、干渉チェックや数量の自動的算出も可能です。発注者が示す試行業務も多く対応させていただいていますが、実感としては、まだ利点を生かしきれていません。もう少し時間が必要と思っています。
――若手コンサルタントに期待することは
新井 まずは自分の手と頭を動かし自身で考える習慣を身に着けることです。今の若手はネット検索で、すぐに答えらしきものを探り出してきます。成果作成に使える時間も限られているため、得てして深く考えずに先を急ぐことになりがちですが、それでは、絶対に身につきません。 そこで、先輩社員を講師に、実践に近い形の演習を勉強会として実施しています。ネット会議を活用することで全国どこの場所にいても参加できますし、答えがひとつではない課題を与えることで、考えて“学ぶ”機会にしたいと考えています。
――対象者と演習の頻度は
新井 入社後3~4年の若手を対象に月に2回、業務として行っています。現在は特定の部門のみですが、順次ノウハウを蓄えて、他の分野にも広げていく予定です。
――働き方改革についての考えと取り組みについて
新井 具体的な取り組みとしては、昨年7月に社長直属の「働き方改革推進部」を設置しました。1年目の昨期は、育児・介護支援、就業地選択、在宅勤務などの諸制度の整備を改めて行ったほか、ふたつの支社を先行モデルとして活動を始めました。2年目の今期は 全部門に展開して、全社員を巻き込んだ企業風土の更新、社員個々の意識改革、働き方改革に即したチームビルディングに取り組んでいる状況です。ノー残業デー、有給休暇の取得奨励等の一種の意識改革活動も徹底するとともに、プレミアムフライデーにも取り組んでおり、その実施率も7割程度となっています。育児休暇についても、女性社員も男性社員も既に当たり前のように取得しています。
また、改革の成果は、定時内勤務時間の短縮、給与等待遇面の向上等、逐次社員に還元しながら進めています。
活動を開始して最も良かったことは、社員の意識が変わりだしたことです。自分たちで やることを決めて、どのように進めていくのかを、チーム内の上司と部下、そして同世代の横のつながりでよくコミュニケーションをとって話し合っていますので、風通しがよくなりました。
働き方改革/ワーキングの様子
社会的にも働きがいのある建設コンサルタントの仕事をより社会に知っていただき、多くの若者が就職先としての魅力を感じてもらうためにも、働き方改革は非常に重要なことだと思います。
また、これから建設コンサルタントの仕事は公共事業の要的な存在になっていくはずだと考えていますので、それに対応できる人材を育てたいですし、女性や外国人のさらなる採用を含めた会社の多様性確保という点でも働き方改革に取り組んでいます。
――ありがとうございました
(2018年12月25日掲載 聞き手=大柴功治)