支承部周辺の損傷と取付部段差が顕著
「平成30年北海道胆振東部地震」厚真町などでの橋梁調査結果
北見工業大学
工学部
准教授
宮森 保紀 氏
上厚真大橋 固定支承が橋軸方向に50mm変位
――上厚真大橋は
宮森 1962年に供用された橋長164.3mの4径間単純合成桁+単純ワーレントラス橋です。震央から西南西13.7kmの距離にあります。
上厚真大橋
A1側(左岸)取付部(単純合成桁側)に約100mmの段差、P1ほかに伸縮装置の破損、P3で沓座モルタルの割れ、A2側(右岸)で地覆コンクリートの割れ、取付部に約100mmの段差、固定支承の損傷がそれぞれ見られました。固定支承は、橋軸方向に50mmの変位が橋台側に生じています。なお、写真ではピン支承を使用しているように見えますが、固定支承となっています。
伸縮装置の破損/沓座モルタルの割れ/地覆コンクリートの割れ
固定支承の変位
沓座ボルトは下流側に浮きを生じていました。ただ、凍結融解による影響もあるかもしれません。点検記録を精査して地震によるものか否かを確認する必要があります。
同橋は側歩道橋が分離設置されていますが、これは中間部において1箇所で支承が損壊しています。
沓座ボルトの浮き
――若草橋は
宮森 厚真川支流の軽舞川を渡河する2径間単純鋼鈑桁橋(橋長不明)で、1987年の供用です(震央から西南西13.6km)。同橋では、A2側(右岸)取付部に100mm強の段差が見られました。
若草橋/取付部の段差
――厚真川橋は
宮森 震央から南西15.7kmにある北海道開発局管理の橋梁です。国道235号の厚真川渡河部に架かる橋長256mの単純非合成鈑桁+5径間連続非合成鈑桁橋です。橋梁本体に損傷は見受けられず、橋脚(P5)背面の堤防天端にひび割れが生じていました。
支承部/堤防天端にひび割れ
――浜厚真橋は
宮森 厚真川橋と同じく国道235号の厚真川渡河部に架かる橋で、橋長は274m、上部工形式は2径間連続鋼床版2主鈑桁×2連です。震央から南西16.4kmに位置しています。同橋も損傷は軽微で、A2側(左岸)の歩道取付部でひび割れや沈下が生じていた程度です。
浜厚真橋/歩道取付部のひび割れ
――臨港大橋は
宮森 震央から南西17.4kmに位置しています。1987年に供用された橋長218.6mの6径間単純鋼鈑桁橋です。調査範囲内での損傷は確認されませんでした。
臨港大橋/桁端部
北進橋 落橋防止装置のコンクリートブロック破損
――厚真川沿い以外の橋梁3橋についてもお願いします。まず、北進橋は
宮森 震央から西北西16kmに位置し、安平川支流ニタッポロ川に架かる単純PC床版橋です。同橋は安平町内になります。
北進橋
両橋台側とも落橋防止装置のコンクリートブロックが破損していました。ブロックのサイズは幅700mm、高さ200mm程度で4基すべて割れていました。同ブロックはPC桁の上から付いており、下側はスペーサー的に発泡スチロールがはまっていました。そして下からアンカーバーが中に入っている形状であったと考えています。
コンクリートブロックの破損
同橋は震央から離れていますが、震度6強を記録しており、強い地震動が襲った結果、こうした損傷を蒙った可能性があります。また、取付部において踏掛板背面の舗装にひび割れが生じていました。ただ、ひび割れが今回生じたものか、凍結融解によるものかなどの判断には調査が必要です。A2側(左岸)では、橋台前面と護岸ブロックの間に30mmの隙間が生じていました。
――農道1号橋は
宮森 北進橋に隣接する、ニタッポロ川に架かる単純PC床版橋(2003年竣工)です。右岸側橋台で落橋防止装置のコンクリートブロックの一部ひび割れ、左岸側橋台で翼壁のひび割れ、パラペット前面のコンクリートの割れおよびはく落、橋台躯体と護岸ブロック・背面土の間に隙間が生じています。
農道1号橋/橋台コンクリートのはく落
――入鹿別橋は
宮森 震央から南西11.9kmに位置する1991年竣工の単純鋼鈑桁橋で、入鹿別川渡河部に架橋されています。損傷は取付部の段差程度でした。
取付部の段差
――最後に、今回の調査を行って感じたことは
宮森 国・道が管理する橋梁は耐震補強対策済みとなっており、町道でも対策が進んでいたものは、被害が軽微に済んだのだと思います。今回の調査では、地震による損傷なのか、それ以外の損傷なのか、判断がつかないところがありました。損傷要因の特定には、被災前の橋梁の状況を把握する必要があります。そのためには定期点検結果を定量的に残すことが重要だと感じました。
――ありがとうございました
(2018年11月27日掲載 聞き手=大柴功治)