橋梁2,985橋とトンネル57箇所を管理
供用後50年以上経過した橋梁は約4割
――保全について。まず、全体的な方針と課題をお願いします
江連 栃木県でも高度成長期に建設した橋梁が非常に多く、老朽化が一気に進みますので、点検と維持管理をしっかりと行っていきたいと考えています。とくに今後、大規模橋梁の修繕が必要になり、維持管理の予算が増加することが予想されます。そのため、予算の平準化と、公共事業費の大きな伸びが期待できないなかでどのように割り振っていくかが課題になってくると思います。
また、全国的にも同じ状況であると思いますが、市町村での技術者不足があります。職員への応募倍率が下がってきている状況のなかで、県では苦労しながらも技術者を確保していますが、市町村では難しくなっています。そのため、技術的支援の体制づくりも県の役割として大きいと考えています。
――県の技術者は足りているのでしょうか
江連 職員の採用に波があったため、30代後半から40代前半の中堅層の職員が少なく、採用5年目くらいまでの若手職員が多くなっています。中堅層が少ないので、若手職員の教育が課題になっています。
――管理橋梁の内訳は
江連 全体で2,985橋を管理しています。橋種別では、RC橋が約6割の1,782橋と最も多く、PC橋609橋、鋼橋561橋、その他33橋です。供用年次別では、50年以上経過している橋梁が1,032橋(39.6% ※架設年不明380橋を除いた割合)、30年から50年経過の橋梁が757橋(29%)、30年未満の橋梁が816橋(31.4%)となっています。10年後に供用50年を超える橋梁は57.5%、20年後には68.7%に達します。橋長別では、橋長15m未満が約6割の1,830橋、橋長15m以上100m未満が921橋、100m以上が234橋です。県内で最も橋長がある橋梁は、鬼怒川を渡河する宇都宮向田線・板戸大橋(920m)となります。路線別では、一般国道が732橋、主要地方道1,157橋、一般県道1,096橋です。
橋種別橋梁数
供用年次別橋梁数
橋長別橋梁数
路線別橋梁数
――管理されているトンネルは
江連 57箇所を管理しており、工種別では在来工法が22箇所(38.6%)、NATM工法が35箇所(61.4%)となります。供用年次別では、30年以上経過しているトンネルが20箇所(35%)、30年未満が37箇所(65%)です。延長別では、100m以上1,000m未満が44箇所と全体の約8割を占めており、1,000m以上のトンネルは県内一の国道122号・日足トンネル(2,765m)をはじめ4箇所あります。路線別では、一般国道21箇所、主要地方道21箇所、一般国道15箇所となっています。
工種別トンネル数
供用年次別トンネル数
延長別トンネル数
路線別トンネル数
健全度判定区分Ⅱの橋梁が5割以上、Ⅲは6.4%
トンネルでは凍害が原因と考えられる損傷が目立つ
――橋梁とトンネルの定期点検結果を教えてください
江連 平成26年度から29年度までの4年間で橋梁2,343橋、トンネル45箇所の定期点検を実施しました。橋梁では健全度判定区分Ⅱが1,233橋と5割以上で、Ⅰが959橋(40.9%)、5年以内に修繕をしなければならないⅢが151橋(6.4%)です。判定区分Ⅳの橋梁はありません。トンネルでは判定区分Ⅱが35箇所(77.8%)、Ⅲが10箇所(22.2%)で、ⅠとⅣはありませんでした。
橋梁の健全度状況
トンネルの健全度状況
――点検を進めてみての全般的な劣化状況は
江連 鋼橋では塗膜劣化や腐食が多く発生していて、おもに再塗装を実施しています。RC橋は桁端部を中心に鉄筋のかぶり不足による鉄筋露出が発生していることが多く、鉄筋の防錆をしたうえで断面修復を行っています。PC橋は橋面舗装の劣化による漏水が桁下までおよび、ひび割れ部から水が進入して鉄筋が腐食する事例が多く見られています。その対策として、ひび割れ注入や橋面防水工を実施しています。
(一)秋山葛生線・橋場橋(RC橋) 損傷状況と対策後
橋場橋 対策前(鉄筋露出)と対策後(断面修復工)
トンネルはおもに県北部に位置しているものが多いため、凍害が原因と考えられる損傷が目立ち、とくに在来工法のトンネルで要対策判定が多い傾向にあります。損傷内容は材質の劣化や漏水が多く、アーチ部分の損傷については点検時にうきが確認されるものについてはたたき落とし、一部ではメッシュネットで応急対策を実施しているものもあります。材質劣化や漏水は、はく落や凍結により第三者被害をもたらす可能性が非常に高い損傷であるため、重点的な監視を行うとともに早期に空洞化調査を実施する必要があると考えています。
(国)120号・金精トンネル 覆工コンクリートの土砂化
(国)120号・金精トンネル PCL工法での補修・補強
――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況は
江連 平成20年度に橋長15m以上を対象に橋梁長寿命化修繕計画を策定しています。平成24年度には橋長2m以上の橋梁を加えて、県が管理する全橋梁について橋梁長寿命化修繕計画を策定しました。
15m以上の橋梁は健全度と重要度から優先順位をつけて修繕を進めてきましたが、平成20年度に緊急修繕が必要と判定された109橋については、修繕完了もしくは工事着手済みとなっています。
――上部工の補修・補強の状況は
江連 鋼床版に疲労き裂が発生した橋梁はありませんが、上久我栃木線・本城橋(331.6m)では桁下面の横溝にき裂が発生し、ストップホール工法での対策を行いました。
本城橋 損傷状況(対策前)
対策後
コンクリート床版に損傷が発生した橋梁は45橋あり、そのうち25橋が対策済みになっています。補修工法としては断面修復やひび割れ注入を実施しています。損傷が発生した橋梁は、つくば真岡線・水戸部橋、国道293号・新連城橋などです。国道120号(第一いろは坂)・栄橋(橋長41.0m)では平成28~29年度に床版取替工事を実施しています。
栄橋全景 対策前と対策後
栄橋 床版取替工事
――床版防水の施工状況は
江連 施工数は把握できていませんが、舗装補修を行う橋梁のほぼすべてで床版防水工をあわせて実施しています。