岩塊・転石を含む地盤や日本有数の地すべり地帯で工事を施工
日本有数の豪雪地帯での冬季工事
――事業区間の特徴を教えてください
川嵜 まず地質特性があります。信濃町IC~新井PA間は火砕流等堆積物で構成されていて、50cmから1mくらい掘ると岩塊や転石が出てきました。2mを超える岩塊もあり、基礎工施工時の岩塊や転石の撤去に想定以上の時間を要しました。新井PA~上越JCT間は砂岩泥岩互層で構成されており、日本有数の地すべり地帯となっています。そのため、新井PA~上越高田IC間の五日市地区では地すべり対策を行っています。
地質平面図
また、日本有数の豪雪地帯でもあり、妙高地区では年間の総降雪量が10mを超えます。事業進捗を図るために冬期も工事を行いましたが、現場までの道を確保するための除雪作業が一番大変でした。太田切川橋ではA1、A2側それぞれにスライド式の防雪装置を設置して、基礎工と下部工躯体立ち上げを行いました。
冬期工事
太田切川橋のスライド式の防雪装置
――信濃町IC~新井PA間では2mを超える岩塊が出てきたとのことですが、どのように撤去を行ったのでしょうか
川嵜 大型ブレーカーで破砕後、人力で破砕して撤去しました。杭基礎の根入れは深いところで約30mでしたが、その深さまで岩塊や転石が点在していましたので、すべて破砕していきました。とくに現在施工中のれいめい橋、太田切川橋、渋江川橋、矢代川橋の4橋は地盤の影響をかなり受けました。太田切川橋では仮橋(A1側:L=57m・H=25m、A2側:L=33m・H=15m)が必要でしたが、その基礎杭施工時にも鋼管併用ダウンザホールハンマー工法で施工しました。
岩塊や転石の状況
――日本有数の地すべり地帯である新井PA~上越JCT間で、工事着手後に地すべりの発生はありましたでしょうか。また、地盤改良の必要性は
川嵜 雨や急激な融雪によりのり面の変状が10箇所で発生しました。そのため、応急対策や防止対策が必要になった箇所があり、工期にも影響を与えました。地盤改良はトンネル坑口周辺などの土かぶりが薄くなるような箇所は、セメント改良を行っています。
のり面被災と対策状況
五日市地区の地すべり対策では1:3.5の安定勾配とするための切土
集水井と水抜きボーリングの施工、大型ふとんかごの設置を行う
――五日市地区の地すべり対策は
川嵜 Ⅰ期線建設時も地すべりの発生が懸念されている箇所でしたので対策を行いましたが、供用後も地山が少しずつ動いていて、のり勾配を若干緩くする対策を取りました。対策後も切り残しがあり、拡幅工事の際にその部分を切ろうとすると、地山が動く恐れがありましたので、勾配が1:3.5の緩やかなものとなるように切土を行い、安定勾配としました。
地すべり対策図
地下水対策では集水井(2箇所)と水抜きボーリング(延長1,042m)を施工して、地下水位の低下による抑制効果を期待しています。さらに本線側には大型ふとんかごを設置して、のり面を抑える形状とする対策を行っています。施工にあたっては、Ⅰ期線が近接していたことから地山変状に注意して20mごとに掘削、床掘を行って、ふとんかごを8段中4段積み終わった段階で次の区間の掘削、床掘を繰り返す手順で工事を慎重に進めました。
大型ふとんかごの設置/対策完了後の全景
れいめい橋 上部工の架設を施工中で今冬の完了を目指す
高圧送電線との交差部では5m以上の離隔を確保し安全に施工
――各構造物について教えてください。まず、れいめい橋は
川嵜 長野県と新潟県の県境(信濃町IC~妙高高原IC間)に位置する橋長501mのPC5+4径間連続ラーメン箱桁橋で、新設橋梁20橋のうち最も橋長があります。火砕流等堆積物で構成される地盤でしたので、大きなものでは2mほどの岩塊があり、下部工施工時は大型ブレーカーと人力で破砕して撤去していきました。岩塊や転石が点在しているものの、周囲の地盤は脆く、杭基礎としましたが、孔壁が自立しない状態でした。杭長が長くなったことから岩塊などの出現頻度も高くなり、深礎杭の施工が困難を極めました。橋脚高は最大で34mの中空式で、オールステージングで施工し、クレーンで鉄筋の搬入組立、コンクリート打設を行いました。
れいめい橋橋梁図
下部工施工
現在は、ベントとトラス式の仮設桁を用いた固定支保工架設(A1~P5)および張出架設(P5~A2)を行っています。固定支保工架設部はP3~P5までの打設が完了しました。張出架設部は最大支間長106m(P6~P7間)、最大ブロック数11ブロックで、現在、張出架設中です。
れいめい橋全景/固定支保工架設(A1-P5)
張出架設(P5~A2)高圧送電線が上空で交差している(左:井手迫瑞樹撮影)
上部工施工での課題は安全対策です。東北電力の高圧送電線が張出架設部上空で交差しており、4mの範囲内に入るだけで感電する恐れがあります。そのため、施工時は低空頭のワーゲンを使用し、離隔を5m以上確保しました。また、Ⅰ期線が非常に近接しているので、レーザーバリアを採用するとともに、防護ネットを設置しています。