上信越自動車道の最後の暫定2車線区間となった信濃町IC~上越JCT間は、2012年4月に4車線化への事業許可変更が認められ、2014年度から本体工事に着手した。同区間は2mを超える岩塊の出る地盤や日本でも有数の地すべり地帯を抱えるとともに、年間降雪量が10mを超える箇所もある豪雪地帯であることから難易度の高い工事となったが、8月末時点での事業費ベースの進捗率は8割に達した。その4車線化事業について、事業を担当する信越工事事務所の川嵜裕二所長に聞いた。
信濃町IC~上越JCT間37.5kmのうち拡幅工事延長は24.7km
土工区間は78.9%、橋梁区間は3.1km、トンネル区間は2.1km
――所管事業の概要を教えてください
川嵜所長 当事務所は、上信越自動車道信濃町IC~上越JCTの4車線化事業を担当しています。上信越道は、関越道の藤岡JCTから西へ分岐して、佐久小諸JCTで中部横断道と、更埴JCTで長野道と分岐した後、北上して上越JCTで北陸道と接続する延長約203kmの高速道路です。
当事務所が事業を担当している信濃町IC~上越JCT間の延長は37.5kmで、長野県側が3.6km、新潟県側が33.9kmです。本区間が暫定2車線の対面通行となっていて、それ以外の区間はすべて4車線化されています。ただ、信濃町IC~上越JCT間すべてが暫定2車線ではなく、ICや休憩施設周辺は4車線化されていますので、拡幅工事延長は24.7kmとなります。そのうち、土工区間が19.5km(78.9%)、橋梁区間3.1km(12.6%)、トンネル区間2.1km(8.5%)で、橋梁20橋、トンネル5本を新設しています。
位置図(NEXCO東日本提供、注釈なき場合は同)
橋梁一覧表
トンネル一覧表
ちなみに、Ⅰ期線は信濃町IC~中郷IC間が1997年10月に、中郷IC~上越JCT間は1999年10月に開通しており、開通後約20年が経過しています。
――信濃町IC~上越JCT間の進捗状況と完成予定は
川嵜 土工、橋梁、トンネルの工事発注はすべて完了しています。8月末時点で、橋梁下部工は80基がすべて完成し、上部工は20橋すべてが着工済みで16橋が完成し、残り4橋が上部工施工中です。トンネル5本はすべて掘削と覆工が完了して、4本が照明工事等の施設工事を施工中です。なお、金谷山トンネルについては施設工事も含めて完了しています。全体的に舗装・施設工事については順次施工できるところから進めている状況です。
今年中に事業区間の約8割(28.7km)が4車線となる予定で、残る約2割(8.8km)は2019年度中に完成する見込みです。
4車線化完成予定
4車線化により交通集中渋滞と重大事故を削減
維持補修工事や事故による通行止めも大幅削減
――4車線化完成により期待される効果は
川嵜 一部区間はすでに4車線化されていますので、暫定2車線区間がボトルネックになり、GWやお盆、年末年始などの交通混雑期に交通集中渋滞が多く発生しています。過去8年の平均では1カ月に5回の渋滞が発生し、最大渋滞延長は約15kmとなっていますが、4車線化完成により交通集中渋滞の大幅な減少を期待しています。また、簡易中央分離帯を突破する重大事故がⅠ期線開通後70件発生していますが、車線が分離されることにより、重大事故の削減にもつながります。
通行止めの削減効果もあります。暫定2車線区間の通行止めは2015年度~2017年度の3年間で合計263回ありました。そのうち、維持補修工事にともなう通行止めが162回ありましたが、それがなくなり約6割の削減効果を期待できます。事故による通行止めは79回でしたが、車線規制で収まる事故であれば通行止めを回避できるようになり、半分くらい減少すると考えています。また、積雪により立ち往生した車両が原因となる通行止めも削減され、冬期の円滑な交通が確保されるようになります。並行する一般国道18号との防災上の観点などからのさらなる連携強化も可能となります。
暫定2車線区間と4車線区間の通行止め発生回数比較(平成27~29年度の3カ年合計)