道路構造物ジャーナルNET

2018年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑧日本鉄塔工業

「早津江川橋梁」の架設が本格化 送電鉄塔のメンテ需要に対応

日本鉄塔工業株式会社
代表取締役社長

有田 陽一

公開日:2018.09.24

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、日本鉄塔工業の有田陽一社長と高田機工の寳角正明社長の記事を掲載する。

 ――業界を取り巻く環境・現状について
 有田 当社の主力事業の一つである鉄塔事業では電力会社において送配電カンパニーが分社化されるなど組織変革が進められており、引き続き電力会社各社の動きを注視していく必要がある。また、橋梁事業は近年、道路橋の発注量が20万t前後で推移、今年度も大きな変化はなく、厳しい受注競争が続くと考えている。一方、高速道路の大規模補修など維持保全の重要性が一層高まっており、その動きに注視している。
 ――2017年度の業績は
 有田 受注高は前年度を下回ったものの、売上高は前年度をわずかに上回った。
 主な受注案件として長崎県大村市の「ボートレース大村」のナイター照明塔設置工事がある。重量は陸上側4基、海上側3基の計300t。また、東京五輪のテニス競技会場となる「有明テニスの森公園」のショーコートの照明塔4基と膜屋根鉄骨を受注した。
 橋梁の受注では、期末に「国道325号阿蘇大橋取付部上部工」を受注した。平成28年熊本地震で崩壊した阿蘇大橋の架け替えとして、場所を南側に移して計画された新しい阿蘇大橋(PC橋)の、アプローチ部となる。震災復興の観点から早期完成が求められており、安全第一で一日も早い完成に注力し、地元の皆様のお役に立ちたい。
 主な完成工事では、九州電力日向幹線鉄塔工事、南関東防衛局御前崎鉄塔工事、熊本地震により損傷を受けた九州自動車道・木山川橋の震災復旧工事、17MW、26MWなどの大規模太陽光発電所用架台工事があげられる。
 ――2018年度の需要環境見通しと業績目標は
 有田 鉄塔事業では日向幹線鉄塔工事が継続中にあり、また、再生可能エネルギー送電用の鉄塔工事などの受注を目指している。
 橋梁事業では、有明海沿岸道路「早津江川橋梁」の架設が本格化を迎える。同橋は世界文化遺産三重津海軍所跡を通過するため、環境に配慮した鋼アーチ橋となっており、筑後川橋梁とともに有明海沿岸道路のシンボルとなることが期待されている。20年の完成に向けて安全第一で工事中。受注面では、技術提案力の向上に努め、目標を達成したい。こうした取り組みを通じて、全体の売上高は、昨年度の実績を上回る計画としている。


早津江川橋梁(完成イメージ)

 ――設備投資計画、新技術開発などについて
 有田 設備投資計画は、工場の生産性および品質の向上、エネルギー利用の効率化に取り組み、昨年社内に設置したIoT研究会の成果も積極的に取り入れていく。また、引き続き工場のLED化や生産設備の予防保全、情報機器設備の更新も実施していく。
 新技術開発面では、当社は送電鉄塔などに関する独自技術として、点検、強度検討設計、補修、補強、部材取替工法などの技術のほか、「NT-鋼構造物の長寿命化システム」を保有している。引き続き、お客様の保全要望を早期に取得し、鉄塔長寿命化技術のさらなる向上を図り、送電鉄塔のメンテナンス需要にしっかりと対応していきたい。
 また、都市部の橋梁の床版やジョイント部に着目した開発も行っている。都市部は交通量が多いため、床版やジョイント部が損傷しやすいことから、取り替えのニーズは強い。しかし、その施工には夜間のみの短時間工事で、かつ、騒音を抑えなければならないなど非常に厳しい制約が課されるため、高度な技術力が求められる。こうしたなかで、当社は阪神高速道路で施工実績を有する「低騒音伸縮装置撤去工法」を保有し、最近では首都高速道路や九州自動車道でも採用いただいている。より一層の短時間施工、低騒音化、品質向上を実現し、さらに多くの道路管理者に採用いただける工法に進化させるべく、着実に研究開発を進めていく。
 ――ほかには
 有田 今年6月に成立した政府の働き方改革関連法案への対応に取り組んでいる最中にある。まずは、橋梁事業を中心とした現場の長時間労働の是正徹底と週休二日制の完全実施に取り組むために、厚生労働省の提供情報や他社事例の収集を図るとともに、労働組合との協議を進めていく。
(聞き手=大熊稔、文中敬称略 2018年9月24日掲載)

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