当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。今回は、瀧上工業の瀧上晶義社長の記事を掲載する。
――2017年度の業績は
瀧上 当社は、昨年発生した営業停止等の影響があったなか、売上高が158億3,000万円(連結)、営業利益が8億6,000万円、経常利益が11億円、前連結会計年度と比較し減収増益となった。
具体的に橋梁事業では、国土交通省関連工事が若干減少しているなか、全体として鋼道路橋発注量は前年度から微増傾向にあり、受注活動に注力した結果、受注高は102%増。また、鉄骨事業ではこれまでと同様に選別受注を進めるなか、火力発電所等の受注確保が好調に推移したことで105%増となった。一方、損益では民間工事、大型工事の製作がピークを迎え、生産効率の低下とコストアップ要因もあったが、採算性の高い大型工事の受注効果により、利益確保に至った。
――今期の見込みは
瀧上 当社では、18年度3月期を初年度とした中期経営3カ年計画を策定し、本中期経営計画の基本軸を「再生と創造」に置いた。これはあらためてコンプライアンスを経営の基礎として固め、長年にわたる品質保証の確立や内部統制の改善、顧客との信頼関係を再構築していくという企業理念のもとに信頼を再生していくことにある。
今期は売上高150億円、営業利益2億円、経常利益4億円の減収減益となる見込みだが、21年3月期の最終年度では、売上高190億円、営業利益9億円を連結業績目標としている。
今後3年間で、橋梁事業では、技術提案力と積算精度の向上に努め、新設橋梁市場で一定のシェア確保を目指し、現場配置技術者の増員などで応札機会を増やし、老朽化した生産設備の更新を進める。
次に保全事業では、高速道路老朽化による床版の取り換えや予測される大規模地震に対する耐震補強の大型工事本格化に対し、増員による確実な施工体制づくりと事業規模の拡大を目指し、戦略の見直しを図る。
鉄骨事業では、引き続き電力会社の火力発電用鉄骨に加え、東京五輪関連とそれ以降にも当面続く大規模工事への対応も含め、早期に年間生産量1万5,000t体制を目指す。実現のためには、第2工場の再整備や積極的な設備投資を実行し、生産向上を図る。
不動産事業および資金運用では、ここ2年で収益確保できる体制が整備され、今後は必要な修繕や、グループ企業全体の資金を一体化して運用し、適正な収益を確保する。
四日市港 霞4号幹線橋梁上部工事(三重県)
――海外事業の現状は
瀧上 ベトナム工場開設から10年が経過した。ベトナム現地法人とフィリピン駐在員の事務所を活用し、ODAの橋梁関連工事や現地の橋梁工事の受注に注力したい。また、アスファルト添加材の海外販売が好調に推移しているなか、今後はフィリピンでの認証取得を完了させ、販売増加を図っていく。そして、他の国へも販売を展開していく予定だ。ベトナム現地法人の生産量は月間500tを目指していく。
――具体的な設備投資は
瀧上 橋梁関係では十電極の溶接装置、鉄骨関連では事業方針で示したとおり、これまでの電力関連工事に加え、一般鉄骨向け工事の受注量も伸ばしていきたいと考えており、第2工場に、来年2月の予定で柱大組み溶接ロボットを新設し、クレーンの増強も図る。そして、グループ内の鉄骨関連企業とも連携していく。
――人材育成は
瀧上 地道な採用活動を続けるなかで、今年の4月に大卒5人、高卒7人の12人の新入社員を迎えた。当社では積極的に人材の採用を進め、この3カ年で最終的に現状より10%の増員を図りたいと考えている。
当社は働き方改革を推進し、従業員の意欲向上による生産性向上と人材確保を図っていく方針であり、ベトナム現地法人の従業員の技能実習も継続していく。また、女性の技術者(設計、工事分野等)も増えており、今後も採用を予定している。
(聞き手=和田徹、文中敬称略 2018年9月17日掲載)