4路線149.6kmを管理
452橋、トンネル7本を所管
――次に保全について、管内の構造物概要から教えてください
原 事務所では国道24号、25号、163号、165号の4路線149.6kmを管理しています。
構造物は橋梁452橋、トンネル7本を管理しています。トンネルは全て京奈和自動車道に属しています。
40年以上経過が管理橋梁の半数を超える
名阪国道に約6割が集中 50m未満が6割超える
――橋梁の橋種別、供用年次別割合は
原 最多はPC橋で156橋、次いでRC橋が144橋、鋼橋が136橋、その他16橋(SRC1
橋、H形鋼(非合成)15橋)となっています。供用年次別では昭和43年(1968年)以前に架けられた供用50年を経過した橋梁が132橋と全体の約3割を占め、次いで40年以上経過した橋梁が99橋と合計して半数を超えています。その次に多いのが平成11~20年に架設された橋梁で67橋(京奈和道中心)となっています。東京五輪、大阪万博、花博というイベントに合わせて供用された路線が多いためです。
橋種別内訳
――路線別、延長別は
原 路線別では国道24号に橋梁の約6割が集中しています。延長別では50m未満が288橋と約6割を占めています。奈良県は地理的に近畿の内陸部にあり、川幅の広い河川を渡河する必要がないためです。
管内橋梁の供用年次別内訳/同橋長別内訳
――トンネルは7本しかありませんね
原 現道は全て平野部にあり、当事務所管内では比較的新しい京奈和自動車道にしかありません。管理トンネルは全てNATM工法を採用しています。
健全度Ⅲは橋梁20箇所、道路付属物3箇所
釜窪東トンネルの覆工コンクリート打継目から剥落のおそれ
――点検を進めてみて、管内各路線の劣化状況を教えてください
原 橋梁、トンネルおよび道路付属物共に今年度中に一巡目の点検を終えます。平成28年度までの点検結果(276橋)では、健全度Ⅲ判定は橋梁が20箇所、道路付属物が3(大型カルバート、横断歩道橋、門型標識など各1)箇所でした。トンネルは、京奈和道の釜窪東トンネルが健全度Ⅱと判定されました。
管内構造物点検実施状況(平成30年度は予定)
鋼橋の損傷要因は腐食、ひび割れ、漏水・遊離石灰などです。ひび割れや剥離・鉄筋露出はRC床版の損傷です。PC・RC橋の損傷要因は、漏水・遊離石灰、ひび割れ、浮き、剥離・鉄筋露出などです。
管内橋梁の健全度状況(平成28年度までの状況)
【鋼橋】 損傷の種類と損傷の程度の関係(縦軸は部材数)
【PC と RC 橋】 損傷の種類と損傷の程度の関係(縦軸は部材数)
部材別では、主桁ついで伸縮装置の損傷が多く、次に橋脚、排水装置などとなっています。
橋種と損傷(対策区分判定)の関係(縦軸は部材数)
部材と損傷の程度の関係 (縦軸は部材数)
トンネルでは釜窪東トンネルの覆工コンクリートの打継目において、今後剥落する恐れがあることから、今年度補修工事を実施します。
中畑橋で鋼桁の溶接部に疲労亀裂
当て板により補修を行う予定
――修繕状況は
原 既に橋梁9箇所および横断歩道橋、門型標識等各1箇所を着手および補修済です。今年度は7橋について補修を行う予定です。
その中でも国道25号のΩカーブに架かる中畑橋(橋長172m、鋼3径間連続非合成鈑桁橋)については、交通荷重により鋼桁の疲労が進み、主桁ウエブ面とガゼットプレート溶接部に亀裂が生じていることから当て板による補修や塗装塗り替えなどを行う予定です。
中畑橋の損傷状況
――中畑橋の交通量および大型車混入率はどの程度なのですか
原 H27センサスによると24時間交通量は約5万台、大型車混入率は45%と、かなりの重交通を担っています。
床版 防水工の敷設率は未把握
耐震補強 未対策は残り36橋
――鋼床版およびコンクリート桁、RC床版の損傷対策については
原 剥離による鉄筋露出については断面修復、ひび割れはエポキシ樹脂による低圧注入、PC桁端部のクラックなどは炭素繊維材料(シート、プレート)などによる補修補強を施しています。床版防水については、近年実施していません。
――RC床版の損傷は、床版防水の敷設の有無も密接に関係していますが、管内橋梁の床版防水の敷設率は
原 床版防水については橋梁点検を行い床版下面に水漏れ、水あと等が見られた場合は床版防水(舗装)対策を行っています。橋梁全ての床版防水の有無は把握できていません。
――釜窪東トンネルの対策は
原 今年度補修工事(FRPネット)を実施する予定です。
――耐震補強および落橋防止装置の設置状況は
原 452橋のうち、耐震対策(耐震性能2を満たす)が完了した橋梁は416橋です。平成30年度は6橋(新庄高架橋上下線の一部、新庄ONランプ(上り)、新庄OFFランプ(下り)、達磨橋、穴虫高架橋)について対策(RC巻き立て、炭素繊維シート巻き立て、落橋防止装置など)を実施します。ロッキングピアを有する橋梁は管内にありません。
新庄高架橋橋脚のRC巻き立て補強
新庄高架橋の落橋防止装置および変位制限装置設置状況
――特殊橋や長大橋など技術的に難しい耐震対策は
原 トラスや斜張橋など際立った特殊橋は管内にはありませんが、新庄高架橋というPC多主版桁と鋼版桁橋からなる上り1796.8m、下り2049.5mの長大な橋梁があります。平成26年度から徐々に施工しており、今年度も引き続いて既設橋脚のRC巻き立て補強および慣性力分担構造および落橋防止工(SEリミッター)の設置を行っていきます。
北田原大橋で損傷した支承2基を交換
ジョイント交換は6橋で予定
――今年度の支承および伸縮装置の取替は
原 支承取替は、国道163号北田原大橋(生駒市北田原町、天野川渡河部、右岸は国道168号と交差)で破損している2基をジャッキアップして取り替えます。同橋は鋼単純4主鈑桁ですが、G4桁のA1、A2とも支承本体の割れおよび欠け落ちが見つかったため、交換するものです。支承は現状と同様の線支承に取り替えます。
北田原大橋の支承損傷状況
ジョイント交換は、国道24号菰川橋側道橋(奈良市内)、同橿原橋(橿原市内、飛鳥川渡河部)、国道165号高田高架橋3OFF・ONランプ橋(大和高田市内)、国道24号中町1号橋側歩道橋(天理市内)で行います。
高田高架橋ジョイント下の損傷状況