大和御所道路 橿原北~橿原高田間4.4kmの整備を推進
新堂ランプ、橿原高田ICランプ橋付近の下部工に着手
――大和御所道路は
原 郡山下ッ道JCT~橿原高田IC間13.8kmは、大和御所道路(大和区間)とよばれ、このうち、橿原北IC~橿原高田IC間4.4kmにおいて現在、事業を進めているところです。
橿原高田IC・Bランプ橋下部工事
当該区間では、前後区間の自動車専用道路が橿原バイパスに接続するため、渋滞の原因となっていることから、付近の方々だけでなく、遠く離れた自治体からも、橿原付近の整備をできるだけ早く進めて欲しいとの要請を受けています。
現在は、大和高田バイパスとの交差部においては、大和高田バイパス(大阪方面行き)と接続するランプ橋の下部工のほか、本線の高架橋下部工事も進めています。
平成30年度施工工事一覧(奈良国道事務所提供、以下注釈無きは同)
――同区間の構造は
原 橿原高田ICから曽我川を越えた辺りまで高架構造であり、さらに北側では、近鉄大阪線、中和幹線等を地下構造で交差する掘割構造に移行し、橿原北ICの手前で再び高架構造になります。高架延長は約2.9kmです。
大和御所道路の進捗状況①
大和御所道路の進捗状況②
曲川高架橋の下部工
名阪国道 Ωカーブの交通安全対策が進む
抜本的な対策は長大な構造物が必要
――名阪国道関連は
原 交通安全対策を推進しています。
――Ωカーブの根本的な解消は難しいのでしょうか
原 非常にニーズが高いことは理解しています。平成28年7月にはΩカーブの東側、高峰橋で大型トラック2台が衝突し、橋梁高欄を押し倒して1台が市道に転落して炎上、もう1台も国道上で炎上し、1人死亡した事故があり、事故が多い個所と言えます。
ただ縦断勾配を考慮すると、どこを起点にして線形を改良していけば良いのか、トンネルや橋梁などの構造物に頼るにしても非常に長大な構造物を作らなければなりません。直ちに事業化するのは難しい状況です。
名阪国道はΩカーブを抱える(奈良国道事務所HPより抜粋)
斑鳩バイパス 竜田大橋付近の混雑緩和が狙い
歴史と文化に調和した道づくりをテーマに整備
――国道25号斑鳩バイパスは
原 現道は斑鳩町内の市街地を横断する形で走っていますが、交通混雑などが生じています。その南、斑鳩町幸前~龍田間4.7kmにバイパスを作ることでその緩和を図る事業です。同地は中間に観光客が集中する法隆寺があります。竜田川右岸(竜田大橋交差点)までは、国道25号、168号とも各2車線で来るのですが、現在竜田大橋の交差点から、斑鳩町内の国道25号は2車線しかなく、そこに2万4千~7千台の交通量が集中し混雑を招いています。
道路を建設するにあたっては、歴史と文化に調和した道づくりをテーマに整備を進めています。法隆寺のほか、「千早ふる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」(古今和歌集)と在原業平がその美観を称えた竜田川が流れる歴史的な地区でもあります。
平成16年3月にモデル区間として、小吉田2丁目~同1丁目間400m、26年3月に小吉田1丁目~稲葉西1丁目間(竜田川右岸部)700mがそれぞれ開通しています。
――現在整備を進めている区間は
原 興留~小吉田地区では用地調査および用地取得を始めています。幸前~(主)大和高田斑鳩線間では、測量、道路設計および用地調査中です。稲葉西~龍田地区は改良工事、橋梁上部工、舗装工事を進めています。
斑鳩バイパスの施工状況(空撮)
稲葉西高架橋などの施工が進む
――構造は
原 基本的に土工です。構造物は竜田川渡河橋(開通済)および稲葉西地区の稲葉西高架橋(78m、PC3径間連続中空床版橋)の2橋のみです。
香芝柏原改良 約200mが橋梁・高架
県境部は高速と近鉄大阪線、河川、学校施設が錯綜
――国道165号香芝柏原改良事業は
原 大阪府柏原市田辺~奈良県香芝市穴虫間2.8kmの道路改良事業です。西名阪柏原ICから大和高田バイパス(2車線)や現道(2車線)、中和幹線道路(4車線)に分岐(穴虫付近)するまでの現道は2車線しかなく、また道路線形も悪く、異常気象時通行規制区間でもあります。これを4車線化するとともに、線形も改良し、異常気象時通行規制区間を解消しようというものです。
香芝柏原改良概要図(奈良国道事務所HPより抜粋)
――現状は
原 用地買収および詳細設計を進めています。構造はおおむね土工ですが、河川および鉄道を跨ぐ区間の約200mが橋梁・高架となっています。特に県境部は高速と近鉄大阪線、河川、学校施設が錯綜する中で道路を建設する必要があるため、工事はかなり大変になることが予想されます。
――国道165号大和高田バイパスは
原 同バイパスでは、香芝市穴虫~橿原市四条町間14.4kmが事業区間となっています。すでに香芝市穴虫~葛城市當麻元當麻方(當麻寺交差点)間4.9kmと葛城市太田~橿原市四条町間7.2kmを供用済みであり、後者は南阪奈道路へ高架で接続しています。現在は當麻寺交差点~弁之庄ランプ間2.3kmの事業を進めていて、用地買収および測量・設計を行っています。
大和高田バイパス概要図(同)
基本構造は土工で、高架橋やトンネルはありません。大和高田バイパスがつながると、大阪方面との行き来する交通が南阪奈道路と西名阪自動車道の両方を選択ができるため、円滑な交通が期待できます。
権限代行 国道168、169号の4事業を推進
命をつなぐアンカールートの改良
――奈良県からの権限代行事業について
原 県の南部はほとんどが山岳地帯となっています。国道168、169号という補助国道が走っていますが、同道路はすれ違いが困難となる区間もあり、その改良を行う事業を県に代わって国が行っています。
国道168号であれば長殿道路(吉野郡十津川村内、2.6km)、五條新宮道路(同、6.7km)、十津川道路(同、6.0km)、169号では伯母峯峠道路(吉野郡川上村~上北山村間、2.9km)の4事業を県からの権限代行事業として進めています。
紀伊半島の海沿いは基本的に、国道42号の高速自動車国道・自動車専用道として紀勢線が建設されています。当事務所で権限代行し事業を進めている4事業は、南海トラフを震源域とした地震が起きた際、沿岸に住む方々が紀勢線から山岳地帯を抜け北から沿岸部に救援物資を送るための命の道とも位置づけられます。実際に奈良・和歌山両県は、紀勢線と合わせてこれらの道をアンカールート(いかり型ルート)として重要視しています。
十津川道路 来年度開通へ
今戸高架橋が終盤、豆市トンネルは貫通済み
――そのいかり型ルートについて国道168号十津川道路から概要と現況を教えてください
原 十津川村大字平谷~小原に至る6.0kmの一次改築事業です。平成23年9月に折立~小原地区間延長4.3kmが開通しています。現在は残り平谷~折立地区間1.7kmの工事を進めています。
構造物は豆市トンネル(1,432m)と今戸高架橋(561m)があります。豆市トンネルは今年3月に貫通済みで、現在は豆市トンネルにつながる渡河部(171m、PC2径間連続ラーメン箱桁橋)を張出架設中です。事業全体も仕上げに入っており、来年度の開通を予定しています。
今戸高架橋の施工状況①
今戸高架橋の施工状況②
――豆市トンネルは水などの問題はありませんでしたか
原 湧水はほとんどなく、地質的にも恵まれており、スムーズに掘り進めることができました。
豆市高架橋①、②
長殿道路 長大トンネルと橋梁でバイパス
2号橋の工事用道路を建設
――長殿道路は
原 十津川村長殿は、紀伊半島大水害で大きな被害を蒙った地区です。現道は線形も悪く、沢や崖に面していることや、幅員も狭小であることから、右岸側に橋梁とトンネルで災害に強く安全に通行できる道路を作ろうというものです。
現在は2号橋に行く工事用道路を建設しています。1号橋は詳細設計済みで、3号橋は詳細設計中です。2本のトンネルに着手するのはもう少し先になりそうです。設計は完了しています。2号トンネルの直上には沢がありますが、NATMを使った建設に支障はないと考えています。
長殿道路の工事用仮橋
――工事用道路はどのように作るのですか
原 現道の168号から十津川の支川を渡河して右岸に仮橋を架けます。
――結構な長さになりますね
原 仮橋の橋長は約1,050mに達します。
五條新宮道路 2工区6.7kmを権限代行
――国道168号五條新宮道路は
原 当事務所が権限代行で進めているのは、宇宮原工区(十津川村大字宇宮原~同上野地間、1.2km)と風屋川津工区(同村大字川津~同野尻間、5.5km)です。
両地区とも、現道において深層崩壊などの大規模災害の発生が懸念される箇所であり、幅員も狭小であることから、トンネルや橋梁で安全かつ円滑な道路を建設しようというものです。
――事業の進捗状況は
原 地質調査、環境調査、道路、橋梁、トンネルの設計を進めています。工事は未着手です。構造物はトンネル主体です。
伯母峯峠道路 新伯母峯トンネルの東側にトンネルを新設
――国道169号伯母峯峠道路は
原 県が管理している大迫ダムのさらに南、新伯母峯トンネルの東側に新しいトンネルを建設する延長2.9kmの道路事業です。現在の新伯母峯トンネル(1,964m、1966年供用)は幅員が狭小で大型車のすれ違いに支障をきたすほか、南側坑口を出た後は要防災点検要対策箇所もあることから、平成19年3月に奈良県で調査に着手、28年4月に権限代行として新規事業化されました。
構造物はトンネルが2.6km、橋梁部が0.2kmとなっています。今年度は、地質調査、用地調査・取得、橋梁設計を行うとともに上北山側の橋梁下部工事に着手します。
伯母峯峠道路図・写真
各所で基礎工、下部工の整備が進む
文化財保護や軟弱地盤対策が必須
――事務所管内で施工中の主な構造物は
原 現在、大和御所道路の曲川高架橋(橋長575.0m、鋼11径間連続少数鈑桁橋、(鋼製)張出式橋脚およびラーメン橋脚)、および新堂町地区の高架橋(橋長190m、鋼4径間連続鈑桁橋、RCラーメン橋脚)の下部工を施工中です。
同道路の橿原高田ICでも、Bランプ橋(橋長311.5m、鋼5径間連続少数鈑桁+鋼3径間連続箱桁橋、RCおよび鋼製張出式橋脚)、Cランプ橋(橋長401.9m、鋼6径間連続箱桁+2径間連続鈑桁、RC張出式橋脚)の下部工を施工しています。
――文化財および地盤対策は
原 先述しました通り、奈良盆地全体に多くの文化財が埋蔵されているため、施工前の文化財調査は1年半かけて慎重に行った上で施工に入ります。
地盤については全体的に軟弱地盤であるため、場所打ち杭、オープンケーソン、鋼管ソイルセメント杭などを用います。杭長は最深で40m弱に達します。