今年度の鋼橋塗替え予定は17,031㎡
耐候性鋼材は34橋で採用
――鋼橋の塗替え実績と予定を教えてください
松本 昨年度は道央道北郷IC~札幌IC間の米里高架橋(11,446㎡)ほか3橋で合計22,331㎡の塗替えを行いました。今年度は道央道奈井江砂川IC~滝川IC間の駄馬の沢高架橋(上り線、8,126㎡)ほか5橋で合計17,031㎡を予定しています。
米里高架橋の塗装塗替え(左:施工前/右:施工後)
――金属溶射などの新しい重防食の採用は
松本 塗替え塗装で金属溶射は行っていません。塗替え塗装はc-3(重防食塗装系)とi-1(薄膜重防食塗装系)を行っています。
――PCBや鉛などの有害物を含む既存塗膜の除去は
松本 既存塗膜に鉛などの有害物質が含まれている場合は、既存塗膜の剥離は湿式により行い、その後、錆をブラストにより除去します。
昨年度行った塗替え塗装で、既存塗膜に鉛が含まれていたものがあったため、厚生労働省・国土交通省の2014年5月20日文書に基づき、安全衛生保護具(電動ファン付き呼吸用保護具、全身化学防護服、シューズカバー、防護手袋)の着用、環境対策設備(集塵機、セキュリティールーム、エアーシャワー)を設置して施工を行いました。鉛の処分については、特別管理産業廃棄物の基準に従っています。
昨年度までに行っている塗替え塗装工事では、既存塗膜にPCBは含んでいませんでした。今年度に行う塗替え塗装では施工開始前に既存塗膜にPCBや鉛などの有害物質の含有状況を成分分析試験により確認する予定です。
――耐候性鋼材の採用と現在の状況は
松本 上下線別でランプ橋も含めて34橋で採用しています。道央道美唄IC~奈井江砂川IC間の京極橋では、層状錆が多く発生し、環境条件的にも安定化錆の形成が望めないことから、層状錆の除去を行った後、塗装仕様へ変更しています。
橋梁排水管を高密度ポリエチレン管に取替え
――新技術の活用や新製品の採用などがありましたら教えてください
松本 塩害と凍害対策のために、管内の橋梁排水管を鋼製のものから高密度ポリエチレン管に順次、取替えています。後志自動車道(余市IC~小樽JCT間)では最初から高密度ポリエチレン管を全面的に採用しています。管の継ぎ手構造は電気融着接合という方式で接着しており、凍結融解試験結果から母材と継ぎ手構造の長期耐久性を確認しています。
後志自動車道では高密度ポリエチレン管を全面的に採用した
また余市IC~小樽JCT間では、橋梁の桁端部中段検査路に腐食対策としてアルミ製の材料を採用したほか、塩害・凍害対策で壁高欄のコンクリートを緻密化するために高炉セメントで水セメント比が40%程度のコンクリートを採用しました。
アルミ製の桁端部中段検査路
のり面災害の減災を目的として、「水守隊」を組織
排水構造物の現地確認・清掃・補修を一元的に行う
――平成28年台風10号は管内に大きな災害をもたらしてしまいましたが、日常で行っている保守・点検作業での事例がありましたら教えてください
松本 のり面災害の減災を目的として、「水守隊」という組織を平成27年度から設置しています。異常降雨や落葉などによる排水詰まり、経年による排水構造物の損傷・劣化による機能不全が原因と思われるのり面崩落・崩壊を未然に防止することを目的とした取組みとなります。
――具体的な業務内容は
松本 これまで排水詰まりや排水構造物の損傷などは、ネクスコや点検業務を実施しているネクスコ・エンジニアリング北海道が点検・発見し、維持修繕業務を担当しているネクスコ・メンテナンス北海道が清掃・補修などを実施していました。この排水構造物の現地確認・清掃・補修を一元的かつ専門的に、水守隊が行っています。
これにより、早期および集中的な対応が可能になり、①排水構造物の現状把握・処置による減災、②適時・適切な対応による排水構造物損傷規模の縮小、③のり面災害の減少を図っています。
水守隊による排水構造物の清掃
――構成メンバーは
松本 ネクスコ・メンテナンス北海道の作業員で構成され、1班4人となります。管理延長や作業量などにより、各事務所の班数は2~3班です。
――最後に付言して
松本 支社管内最後の建設区間である後志自動車道(余市IC~小樽JCT間)は今年度開通予定です。現在、建設の最終段階に入っていますが、安全を第一に1日でも早い開通を目指すとともに、北海道の高速道路ネットワークを伸ばして、経済に貢献していきたいと考えています。また、北海道では冬季の交通の安全確保も重要な課題になります。除雪作業や凍結防止剤の散布作業を行うための気象予測、体制の構築、新技術を活用した省力化を行いながら、冬でも安全にお客様にご利用いただけるように高速道路を守っていくことが使命だと肝に銘じています。
――ありがとうございました
(2018年9月19日掲載 大柴功治)