このたびの平成30年北海道胆振東部地震により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
本インタビューは地震前の取材に基づくものとなります。
北海道と東北に甚大な被害をもたらした平成28年台風10号。東日本高速道路北海道支社管内では、道東道で狩勝第二トンネルの坑口への土砂流入や十勝清水IC付近ののり面崩落、橋梁下部工洗掘などの大きな被害が発生した。本サイトでは、その被害状況と応急復旧対応について当時の加納正志道路事業部長にインタビューを行い、記事を掲載した。今回は、本格復旧のための災害対策工事の進捗状況に加え、建設が進められている余市IC~小樽JCT間の状況、大規模更新事業などについて、松本吉英道路事業部長に聞いた。
狩勝第二トンネルの土石流対策では砂防堰堤を建設
下部工洗掘対策は5橋7箇所が対象
――平成28年台風10号による被災からの復旧状況を教えてください
松本部長 災害対策工事としては3件あります。ひとつ目が、「道東自動車道 トマムIC~十勝清水IC間のり面対策工事」で、昨年8月に工事着手して本年9月に完了予定です。
――具体的には
松本 被災したのり面の応急措置はすぐに行い、本工事前まではブルーシートで覆って流出を防いでいました。本工事は原形復旧となり、崩落したのり面17箇所(約10,000㎡)にドレンかごを設置します。
のり面対策工事 施工状況(NEXCO東日本提供/以下同)
――ふたつ目の災害対策工事は
松本 狩勝第二トンネルで起きた土石流に対する対策工事で、「道東自動車道 新得地区土石流対策工事」です。昨年9月に契約をして、平成31年7月までの工期予定となります。契約工事のなかで具体的な対策工の設計も含めて行っていますので、設計が完了したら現場着工します。
狩勝第二トンネル東坑口付近の被災状況(当サイト既掲載)
現在は設計途中ですが、土石流が発生した沢の上流に砂防堰堤をつくります。土石流が発生したときには砂防堰堤で止めて、土砂が溜まったら排除する考えです。当初は、坑口から約70mの土工区間をカルバート式のトンネル構造にするという考えもありましたが、学識経験者を交えた対策検討会のなかで土石流出量の照査を行い、土石流に耐えうる規模の砂防堰堤とすることにしました。土石流出量は、検討会(基準類)による算出結果では37,900m3となります。
――発生した土石流の規模を考えると大規模な砂防堰堤となるのでしょうか
松本 現在の設計途中での計画では長さが130mで、高さは基礎部分を含めて14~15mとなります。今秋から工事用道路建設とヤード整備に取り掛かる予定で、躯体の施工は来春からを予定しています。
――下部工洗掘の対策は
松本 3つ目の災害対策工事になりますが、「道東自動車道 占冠IC~芽室IC間構造物洗掘対策工事」として本年3月に公告を行い、7月に契約し、準備工後、9月からの現地施工を予定しています。
――対象橋梁は
松本 5橋7箇所が対象で、下トマム鵡川橋(A1、A2)、トマム川橋(A1)、串内橋(P2)、ペンケオタソイ川橋(P2、P3)、イワシマクシュベツ川橋(A1)です。
――どのような対策を取るのでしょうか
松本 串内橋(橋長252m)のP2橋脚のフーチング埋戻し土が、台風10号による大雨で河川が増水したことで流失し、フーチングの一部が露出しました。また、フーチングの一部露出にともない、フーチング下面にも一部洗掘が発生しました。P2橋脚の被災前は自然護岸となっていましたが、今回被災が起きましたので、フーチング埋戻し部の防護として護岸工を施工します。また、フーチング下面の洗掘箇所には、セメントベントナイトの注入を行います。
串内橋 P2橋脚流失状況
串内橋 洗掘対策概要図
下トマム鵡川橋(橋長60m)でも、台風10号による大雨で河川が増水したことで護岸工の流失が起こり、橋台巻き込み部のジオテキスタイル補強土の基礎の一部が被災(洗掘)しました。橋台巻き込み部のジオテキスタイル補強土基礎部の損傷により崩壊が発生した場合、橋台背面盛土への影響が懸念されるため、橋台前面の護岸工の復旧を行い、さらに護岸工が流失した場合のジオテキスタイル補強土基礎部の損傷を防ぐ対策として、護岸工背面に鋼矢板設置を行います。
下トマム鵡川橋 橋台前面流失状況
下トマム鵡川橋 洗掘対策概要図