世界初、日本初に挑戦していく企業風土
三井住友建設 大規模更新・鋼構造物に対応する設計グループを5月に立ち上げ
三井住友建設株式会社
取締役
専務執行役員 土木本部長
益子 博志 氏
SMC-modelerでは鋼材の干渉チェックが3次元で可能に
アラミドFRPロッドを用いたPC橋は約30年経過しても性能を保持
――i-Bridgeの取り組みについて教えてください
益子 SMC-modelerという橋梁3次元モデル作成システムがあります。自動でPC橋の3次元モデルを高精度で簡単に作成することができるもので、鋼材の干渉チェックも3次元で可能です。
SMC-modelerでの3次元化
2次元の図面では外ケーブルの干渉がわかりませんが、それが一発で分かるようになっています。また、現地の測量にあわせて設計を調整して、現地に合わせることができるという利点もあります。岩手県久慈市の国道45号夏井高架橋工事で初適用しました。また、同工事では、SMC-modelerを含めた各種ICTシステムをプラットフォーム上で連携させ、一元的な管理・運用を可能にするトータルシステム「SMC-Bridge」も初適用しています。国道45号有家川橋工事でも適用する予定です。
――導入の狙いは
益子 現場の可視化と、職員の効率化・省力化です。3次元化により実際の施工もわかりやすくなります。SMC-Bridgeでは各種調書を自動作成するなどの機能もあり、今後もプラットフォームのなかでいろいろなシステムを考えて、できるだけ職員と作業員さんの負担を減らしていきたいと考えています。
――アラミドFRPロッドを緊張材として使用した超高耐久非鉄製PC橋「Dura-Bridge」をNEXCO西日本さんと開発しましたが、その後の展開は
益子 長崎自動車道Ⅱ期線工事の工事用橋梁で約2年半前から実証実験を行ってきました。結果も良好なので、採用をいただければ実橋でつくりたいと考えています。アラミドFRPロッドを最初に緊張材として使ったのは弊社で、1990年に小山工場にプレテン単純桁とポステン単純桁を私が担当して架設しています。
建設当時の実証橋
4月にそのプレテン単純桁の一部を撤去して、載荷試験を行ったところ、計画通りの緊張力を保持しており、計算通りの曲げ破壊耐力も有していることが確認できました。約30年経過しても問題ないので、緊張材としてアラミドFRPロッドは使えると思います。コストは若干かかりますが、耐久性は圧倒的に優れていて、コンクリートも高強度のものを使いますから、少なくとも100年以上はもつと思います。
――ほかの技術開発はいかがでしょうか
益子 東京大学と東京理科大学との共同で高性能コンクリート「サスティンクリート」を開発しました。ひび割れの原因となる乾燥収縮と自己収縮がどちらもほぼゼロの超低収縮がおもな特徴で、セメントレスでの製造が可能です。値段がまだ高いですが、さらに研究が進み実用的なコストになればPC構造物の超高耐久性につながると思います。
鉄筋端部を円錐台状に拡径加工したTrunc-head工法を部材接合部に用いたPCa壁高欄は、新名神高速道路の有馬川橋(鋼・PC上部工)工事で採用されました。
また、再生可能エネルギーとして水上設置型の太陽光発電用フロートシステム(PuKaTTo)を開発して、農業用ため池や貯水池、湖などでの普及を目指しています。ため池が多いアジアで関心が高く、海外展開を目指して昨年12月に台湾に現地法人を設立しました。現在は、販売事業ですが自社事業としても展開できるのではと考えています。
太陽光発電用フロートシステム(PuKaTTo)
業界団体に先行して週休2日制の実現を
新入社員教育では2主版桁の実物大モデルを製作
――担い手の確保についてのお考えは
益子 週休2日制の実現はしっかりと対応していく必要があります。業界団体に先行して、4週6休、4週7休、4週8休を進めていきます。国土交通省では週休2日制モデル工事の現場を増やしていただいているので、それに則って積極的に休みを取っていきたいと考えています。そのためにも効率をあげていかなければならないので、先ほどのSMC-BridgeなどのICTを活用して、生産性を向上していきます。建設業にとって週休2日制の実現は喫緊の課題で、このチャンスを逃したらこの先の実現は難しくなり、世の中の流れについていけなくなると思います。
――人材育成についてはいかがでしょうか
益子 仕事をするうえで基礎が最も重要になりますので、若い人には、例えば支保工や鉄筋、型枠の組み立てなどの原理原則をしっかりと理解してもらいたいと考えています。新入社員教育期間は半年間ですが、昨年度からそのうちの6週間を実技合宿として2主版桁の実物大モデルを4人1組でつくらせています。コンクリート打設から養生、解体まで、作業員が行うことを職員が実際に行うことで理解が早く進むものと期待しております。
――ありがとうございました
(2018年6月29日掲載 大柴功治)