天王寺大和川線が徐々に進捗
――他、進捗中の事業路線は
尾崎 大阪市特有の課題として、密集市街地が環状線の外側に残っていることがあります。災害時の延焼を防ぐため、密集市街地の解消に資する道路整備も求められています。具体的な整備路線としては今年度一部が完成供用予定の豊里矢田線や生玉片江線などがあります。
また、都市計画道路天王寺大和川線(延長約5.5km、幅員29m)の整備では、単に車を走らせるだけでなく、緑豊かな道路にするという計画を進めています。元々、計画路線上では阪神高速道路大阪泉北線が高架化され、JR阪和線連続立体交差事業とダブルデッキになる形で計画されていましたが、同線は諸事情によって廃止されました。この廃止用地を大阪市として、有効に使っていきたいと考えています。
天王寺大和川線パース
――進捗状況は
尾崎 JR阪和線沿いのスタジアムや植物園、博物館などがある大規模公園の長居公園駅へのアクセス等を踏まえ、まず、長居駅や鶴ヶ丘駅の駅周辺部から整備しています。ただ、この道路は高速道路計画が廃止された後の跡地を利用して建設していきますから、太い道路を目指しているわけではなく、地区内のアクセスだとか、あるいは緑豊かな道というのがキャッチフレーズになっていますので、幹線ネットワークに寄与する道路としては考えていません。
――淀川左岸線を除いて橋梁やトンネルの新設は
尾崎 新設はほとんどありません。堂島大橋など特殊・長大橋の大規模リニューアルや橋梁の耐震対策などが中心です。
――新技術・新工法の採用について
尾崎 淀川左岸線は基本的に開削方式です。場所によっては堤防をかなりとってしまうこともあります。そのために施工前に仮締め切りを行います。慎重に行わなくてはいけない仕事です。構造物と市街地の家屋が非常に近接しているため、住民に対する説明や施工時のケアも十分に配慮しなければなりません。
全体で765橋を管理 鋼橋が橋面積比の86%に達する
50年経過橋梁は31%に達する
――次に保全について
尾崎 橋梁は全体で765橋(H29.4.1)を管理しています。橋種別では鋼橋が525橋、コンクリート橋が230橋、その他、石橋などが10橋です。橋面積比でいうとさらに鋼橋が圧倒的に多く86%に達します。大阪市の橋梁の特徴としては大河川を渡河する大規模橋梁や都市の機能を支える橋梁・高架が多いことです。
765橋を管理、50年以上経過している橋梁は31%に達する
30年後は93%が橋齢50歳以上となる
橋種別橋梁比/橋面積別橋比
鋼橋が多いのは港湾地帯に近く(地盤が軟弱なため)、長大支間を飛ばすことができ、重量が軽い形式を望まれたためです。もう一つは港湾部に鋼橋製作の橋梁メーカーが多く存在したこともあると思います。そういう意味では橋梁メーカーの果たしてきた役割は相当、大阪市にとっては大きかったと感じています。
供用後50年を経過している橋梁は31%に達しています。全国平均よりも10%ほど高い状況です。戦前の第一次都市計画事業により基盤整備が進んだ影響で、古い橋が多くなっています。戦前の橋は、大阪の街のシンボルにもなっています。難波橋、天満橋、天神橋、東横堀川に架かる橋梁群(高麗橋、安堂寺橋、大手橋、葭屋橋、瓦屋橋など)などが挙げられます。街の風格にあった先人の素晴らしい設計によって建設された橋と言えます。
シンボリックな橋梁群① 天神橋/天満橋
シンボリックな橋梁群② 難波橋
延長別では、橋長15m以上が約500橋と大半を占めます。
――他の自治体と比べて15m以上の橋の割合がはるかに多いですね
尾崎 大阪市はほとんどが市街地でDID地区が多く、地形も平坦で河川が多くなっています。そのため長大橋が比較的多くなっています。
大阪市の誇る長大橋例 千歳橋/中島新橋
健全度Ⅲ・Ⅳの橋梁は0
市街地にあるため市民の眼を意識して厳しい管理が必要
――点検を進めてみて健全度は
尾崎 法定点検が2014年度から始まっており、2016年度末の段階で612橋(約8割)実施しています。2016年度末の点検結果では評価Ⅰ(健全)が65%、評価Ⅱ(予防保全段階)が35%となっています。評価Ⅲ(早期措置段階)・評価Ⅳ(緊急措置段階)の橋梁はありません。
2016年度末の点検状況
――健全度Ⅲ・Ⅳがないのですか、他の自治体と比べてかなり良い状況ですが、その要因は
尾崎 橋梁が多くの市民の目に触れる状況にあるため、損傷した状況を長期に放置しておくことは(機能的な面だけでなく美観的にも)事実上難しいのです。早めに手を打つ必要があることから、結果的にこのような健全度を保っています。
――部位別の損傷状況は
尾崎 他の自治体も同様とは思いますが、損傷は桁端部に集中しています。鋼橋については伸縮装置の破損や桁端部の腐食が見られます。小規模補修や塗装塗り替えで対応しています。
コンクリート橋は、コンクリートの剥落や断面欠損、ひび割れなどが生じており、小規模補修で対応しています。
――架け替えや大規模な補修補強を予定している橋は、堂島大橋や阪堺大橋などが該当すると思いますが、どのような損傷状況なのでしょうか
尾崎 堂島大橋のように、経年劣化による損傷の進展がほとんどですが、阪堺大橋では重交通による床版の疲労亀裂が見られます。
耐震補強は2017年度末で322橋の対策を完了
今年度は5橋施工予定
――耐震補強の進捗状況は
尾崎 平成8年度から対策を開始しています。緊急輸送道路などに架かる橋は331橋該当しており、落橋防止や橋脚の巻き立てなどを行っており、2017年度末で322橋の対策(緊急輸送道路は耐震性能2)を完了しています。
今年度は、三津屋高架橋、吾彦大橋、寝屋川大橋、北方貨物線高架橋、中津高架橋の5橋で耐震補強を行う予定です(落橋防止対策や橋脚補強等)。
過年度の対策状況(吾彦大橋) 左:免震支承 右:落橋防止装置
過年度の対策状況(三津屋高架橋) 橋脚耐震補強
対策の進捗状況
――ロッキングピアを有する橋梁は
尾崎 本市管理橋では、ありません。
――落橋防止装置の鋼製冶具の溶接不良問題への対応状況は
尾崎 1橋あり、2016年12月に施工業者の方で修補済みです。
――橋梁の長寿命化修繕計画の進捗状況は
尾崎 点検結果に基づいて対策を実施しています。基本的に予防保全段階を維持できるよう対応しています。小規模な補修については年間契約している管内橋梁補修工事でその都度対応しています。大規模な橋の補修や架け替えについては個別に予算を確保して対応しています。
――上部工の補修補強のここ3年の実績と2018年度の予定は
尾崎 補強はほとんどが耐震対策で、補修は伸縮装置やコンクリートの断面修復などがほとんどです。今年度は阪堺大橋の改良工事や新御堂筋線高架橋の補修工事などを進めていきます。
補修工事を進める新御堂筋高架橋/改良工事が進む阪堺大橋(右写真は井手迫瑞樹撮影)