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常磐自動車道拡幅工事では下部工4基を受注

エム・テック社長インタビュー 会社のDNAを生かしアジアで新設橋梁受注を目指す

株式会社エム・テック
代表取締役社長

向山 照愛

公開日:2018.06.12

中期的には床版取替工事にも注力
 福島での除染事業も主要事業に

 ――大規模更新などの補修・補強事業に対して、どのようなお考えで取り組んでいますか
 向山 補修・補強分野は取り組みを始めたところです。弊社としては初めて、昨年秋に北陸道の小一条高架橋で床版取替工事を行いました。


小一条高架橋での床版取替工事(弊サイト掲出済み)

 この工事に携わったメンバーは経験を積みました。それをサポートしていたメンバーを次の現場で中心に据えて、経験を積ませていきたいと考えています。今年度に複数受注できるように努力しています。
 中期的には床版取替工事は弊社にとっても大きなボリュームになると考えています。工場でも体制を整えていますし、床版の技術改良も要求されると思いますので、弊社でも研究をしています。
 ――どのような研究をされているのでしょうか
 向山 プレキャストPC床版は間詰め部が弱点となりますので、継手の工夫を行っています。
 ――東京都の中潮橋では鋼橋の撤去工事を行いました。PC業者である御社が鋼橋の撤去工事をされた理由は
 向山 橋梁の撤去は、“橋屋”でないとできません。橋梁の撤去も、PC橋、鋼橋に限らず、弊社の強みとなっています。撤去の順序や工法は架設の技術、工法の逆になるだけですから、鋼橋であることを意識しているわけではありません。撤去工は鋼橋を含めてすでに10橋以上施工しており、今後も多くなってくるだろうと考えています。


中潮橋撤去工事(弊サイト掲出済み)

 ――そのほか、御社のなかで主要事業となっているものは
 向山 福島の除染事業に参入していて、市町村を含めて3案件を受注しています。これらは数億規模ですが、30億円以上の大型のものも入札結果待ちとなっています。東北の復興事業は発注量が減ってくると思いますので、今後3年くらいは福島の除染事業をひとつの柱にしていきたいと思います。50億円単位のものを年に2案件程度取れればいいと考えています。
 ――福島の除染事業で具体的に行っていることは
 向山 除染土を仮置き場から中間処分場に運ぶのが主な仕事となります。弊社ではダンプを大量に所有しているので、それを有効活用します。中間処分場の建設や補修にも従事します。

女性も働きやすい職場に
 1チーム約10人のメカニックチームが自前で土木施工

 ――女性の活用は
 向山 管理型の社会になってきて、現場職員の管理のための発注者対応が非常に多くなっています。実際に現場に出て、施工管理をする時間がなかなかとれないのです。そこで、女性社員にCADなどを学んでもらい、現場での書類作成や写真の整理をできるだけ行ってもらっています。男性現場職員の負担を減らして、現場対応ができるようにしているのです。
 ――それは希望した女性社員がやっているのですか
 向山 この3年くらい、最初から現場に行くことを前提に、女性社員を男性社員よりも多く採用しています。そのため、トイレや禁煙などの職務環境の整備も進めています。
 ――現在、現場で働いている女性社員は何人いるのでしょうか
 向山 40人くらいです。毎年、30人強を採用していますが、そのうちの25人弱が女性で20人程度が現場職員となります。働く時間もしっかり決めていますので、女性にとっても悪くない職場だと思いますし、定着率も高くなっています。将来的には、バックフォーなどの軽い重機のオペレーターとしても育てていきたいと考えています。
 ――小一条高架橋の工事を取材した時に、自前で土木施工をできることが強みとなっていると伺いました
 向山 自前の重機を持っています。それに加え、工事のことがわかるオペレーターやオペレーションができる人間で「エム・テックメカニックチーム」というチームを作っていますので、施工にあたり機動性があります。このような体制は今後増やしていこうと思っています。


メカニックチームでの土木施工

 ――現在は何人いるのでしょうか
 向山 30人から40人の体制で、現場に集中投入しています。1チーム約10人を3つくらいの現場に投入することが多くなっています。
 ――現場では具体的にどのようなことを行っていますか
 向山 重機のない現場は考えられませんので、重機を効率よく使って、工事の効率をあげています。チームのメンバーは多種類の重機を操縦できますので、メカニックチームで対応できるところは自社のみで施工しています。ここ数年、重機への投資も行ってきて、クレーン、バックフォー、ダンプなど基礎的な機材は持っています。
 ――自前施工で多い工事は
 向山 道路整備や防潮堤建設が多くなっています。また、福島の除染事業では高い評価をいただいています。自社での機動力が高くなり、施工体制の強化につながっています。

ドローンを活用した配筋検査システムを実証中
 PC工場を太陽光発電所にして売電事業を開始

 ――新技術などへの取組みは
 向山 IT測量会社と協同して配筋の検査システムを実証中です。ドローンで撮影し画像処理を行った実際の配筋データと配筋図をつけあわせることで、配筋が適切に行われているか一目でわかるようにするものです。配筋検査は現場で配筋を見て、コンクリート打設後に抜き取り検査を行っているわけですが、それが事前に全部わかるようになります。
 昨年の秋から着手して、いくつかの現場で実証をしています。できるならば、計測器だけでなく、それが団体として認証が必要になる検証システムまでつくれればいいと考えています。今年中を目途に実用化を考えています。
 新しい取組みとしては、弊社の第二工場であるつくば工場の建屋の屋根とヤードの覆いをすべて太陽光発電にするという取組みを3月から始めています。太陽光発電所の下でPC工場を操業するという考えで、売電することによって黒字になっていくと思います。


つくば工場の太陽光発電所化。左が工場棟、右がストックヤード 手前がコンクリートプラント

 ――働き方改革についてはどのようにお考えですか
 向山 一番の課題は休みです。日建連でも4週6休を目指していますが、日給、月給で働いている方々をどうするのかは頭が痛い問題です。一次下請けにその対価を支払っても、それが確実に二次下請け、三次下請けに行くわけではないと思います。発注者や建設業各社でも同じ悩みをお持ちだと思いますが、若い職員にとってやはり休みは非常に重要です。弊社も日曜は全休にする、あるいは土曜も交代で休ませる努力はしています。
 ――ありがとうございました
(2018年6月12日掲載 大柴功治)

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