――今年度の落橋防止装置及び橋脚耐震補強の対応予定は
中辻 今年度は、大浜高架橋(堺区)で17基(PCケーブル12基、緩衝チェーン5基)、新大和橋取付橋(北区)で52基(緩衝チェーン36基、PCケーブル8基、RC突起8基)、中央歩道橋(北区)で12基(ブロック型ゴム被覆チェーン)をそれぞれ設置する方針です。
橋脚耐震補強については、大浜高架橋で3基(コンクリート巻立て)、新大和橋取付橋で2基(コンクリート巻立て)を補強する予定です。
大浜高架橋の耐震補強
――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況について教えてください。また、具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです
中辻 道路橋・人道橋については、平成19~21年度の3か年で、橋梁長寿命化修繕計画を策定し、2007~11年度の5年間で1巡目の定期点検を行いました。以後定期点検を実施しながら、2012年度、2017年度に長寿命化修繕計画を更新しています。現在、定期点検は3巡目を実施中です。近年では2017年度に14橋の補修工事、6橋の設計業務を総額約14億円かけて発注しています。2018年度は29橋の補修工事、8橋の設計業務を約17億円かけて発注する予定です。
断面修復
伸縮装置付近の補修
横断歩道橋については、平成27、28年度の2年間で定期点検を実施し、29年度に長寿命化修繕計画を策定しました。30年度は2橋の補修工事、17橋の設計業務を予定しています。
現在は2012年度の更新結果をもとに補修を進めています。要補修となった205橋のうち2013~17年度の5年間では約100橋の補修工事を実施しており、今後も残りについて補修を進めていきます。2018年度は、過年度から対策を進めている大浜高架橋など車道橋・人道橋29橋と歩道橋2橋について補修を行う予定です。
補修は殆どが水回りを中心とした劣化対策で、具体的には床版防水や、伸縮装置の取替などを実施していきます。床版防水は平成19年度からは確実に施工しています。
今年度、下黒山跨道橋(供用26年、国道309号を跨ぐ)については、橋面防水をよりグレードの高い複合型の床版防水(高浸透型+アスファルト加熱塗膜防水)で施工する予定です。
――支承取換えや、ジョイントの交換およびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取り替える際の工法・種類をお答えください
中辻 今年度は埋設型への交換が5橋、簡易鋼製ジョイントへの取替が8橋、支承の交換が2橋となっています。
支承取り換えは大浜高架橋で鋼製から免震への取替が12基、鋼製からゴム支承への取替が2基、鋼製から鋼製支承への取替が21基となっています。
支承の交換(大浜高架橋)
――塩害やASRなどによる劣化の有無は。劣化が出ていればどのような形で生じているか。またその対策方法も含め述べてください
中辻 海岸から200m以内(の塩害区分内)に約20橋の管理橋梁がありますが、塩害による目立った損傷は特に見つかっていません。ASRは泉北ニュータウン地域の泉ヶ丘駅や光明池周辺の橋梁や府道大阪中央環状線の橋梁などで数橋程度見つかっています。部位および症状は、橋台や橋脚に亀甲状のひび割れが生じている物でいずれもグレードはⅠ~Ⅱ程度です。対策としては劣化の進行具合や残存膨張量などを踏まえて、コンクリートの断面修復や表面被覆(含浸工、表面保護工など)を実施しています。
アル骨によって損傷した部位の補修(ファインショット工法)
――2017年度の鋼橋塗替え実績と18年度の予定を教えてください。
中辻 2017年度は12,000㎡(大浜高架橋7,000㎡、遠里小野(おりおの)橋5,000㎡)を塗り替えました。18年度は20,000㎡(大浜高架橋9,000㎡、遠里小野橋5,000㎡、高倉寺大橋1,000㎡など)の塗り替えを行う予定です。
――PCBや鉛などの有害物質対策はどのような方策をとっておられますか。またケレン手法も含めて教えてください
中辻 事前の塗膜調査の結果、鉛などが含まれている橋梁は、基本的に剥離剤によって塗膜を除去し、その後2種ケレンした上で塗替えを行っています。遠里小野橋については昭和5年に建設された大和川に架かるリベット橋で、塗膜剥離剤を使わず、完全防護した上、全て2種ケレンで施工しています。
PCBについては今年度調査を実施する予定です。調査結果を踏まえて、処理期限内に適切に対応したいと考えています。
また、塗装品質の向上やコスト縮減を考慮すれば、今後はできれば1種ケレンも採用していきたいと考えています。採用工法としては循環式エコクリーンブラスト工法などを検討しています。
大浜高架橋は塗膜剥離剤(パントレ)を用いて既設塗膜を除去した
塗り替え塗装状況
遠里小野橋では支承を溶射によって防錆した
――耐候性鋼材を採用した鋼橋の数と損傷状況は
中辻 2016年に建設した第一今池橋の1橋のみです。JR阪和線を跨ぐ橋梁で耐候性鋼材のリバーブリッジを採用し、桁端部には塗装を施しています。初回点検時(2017年1月)には異常はありませんでした。
――昨今ゲリラ豪雨などによる河川や道路の損壊、自然斜面の崩壊による道路の通行止めなどが起きていますが、堺市として何か考えている対策はありますか
中辻 昨年の台風21号でもかなりの土砂崩れが生じましたが、どちらかと言えば民地に大きな被害が生じました。小さい市道を塞いだ例はありましたが、比較的大きな道路を塞いだものはありませんでした。特段法面などの対策で新しいことを行おうという考えには至っていません。
――民地からのもらい災害により道路が塞がれるケースも全国的に出ていますが、堺市として取り組んでいることはありますか
中辻 市議会でも民地での土砂災害に市として何か手を打つことはできないのか? ということは取り上げられました。基本的には私有地ですので手が出せませんが……。特別警戒区域は140箇所あります。場所はすべて把握しており、ハザードマップも市民に配布しています。今後の対応については考えていかなくてはいけない課題だと思います。
――ありがとうございました
(2018年6月11日掲載)