道路構造物ジャーナルNET

「生産空間」を守り育てる

旭川開発建設部 高原大橋の架け替え、新富良野大橋の建設などが進捗

国土交通省
北海道開発局
旭川開発建設部長

樺澤 孝人

公開日:2018.05.23

床版防水 昨年度は10橋施工
 古い橋梁の床版防水は不明な点多し

 ――加えて管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです
 樺澤 床版防水については、平成29年度は10橋の施工を行っております。
 床版防水には塗膜系が多く用いられておりますが、架橋位置の環境条件、交通量及び床版の劣化要因・範囲・規模等を勘案し、そのつど工法を採用しています。
 ――古い橋梁で床版防水していない橋梁はありますか
 樺澤 古い橋梁の床版防水については不明なものが多く、橋梁の定期点検時に床版の損傷に起因すると思われる舗装等の損傷が確認された後、別途詳細調査を行い、防水層が施工されていない橋梁については必要に応じ床版防水を行っています。
 ――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について昨年度および今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい
 樺澤 平成29年度は、支承取り替えはありません。伸縮装置取り替えは平成29年度で8橋の施工を行っております。ノージョイント化の予定はありません。
 平成30年度は、支承取替を1橋予定しています。伸縮装置取り替えは11橋の施工を予定しています。ノージョイント化の予定はありません。
 ――昨年度、今年度の鋼橋塗り替え予定および実績(橋数と面積)を教えてください。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から2014年5月30日にでた文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
 樺澤 平成29年度の鋼橋塗り替え工事は有りません。30年度についても鋼橋の塗り替え工事はありません。溶射などの新しい重防食としては、実績はありません。


旭川のシンボル 旭橋

施工時は完全防護した

 鉛等有害物を含有する塗装の剥離作業を行う場合には、有害物質の飛散を防止するために、厚生労働省の基準に基づき湿式工法等を採用しております。過去には旭橋などをこうした手法で塗り替えています。
 耐候性鋼材を採用した橋梁は30橋で、平成28年度橋梁定期点検時点で健全度は「Ⅰ及びⅡ」となっております。

溢水して法面が崩れるような状態を無くしていきたい
 今後対策が必要な法面は10箇所

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください
 樺澤 斜面や法面の対策につきましては毎年実施している各種点検や道路巡回の結果に基づき、対策が必要とされた箇所について順次対策を進めて来ているところです。補修の事例としては、平成28年8月30日からの台風10号による豪雨で土砂崩落が発生した一般国道38号南富良野町において、崩壊した法面の復旧に連続繊維補強土を施工しています。また、沢水に対して水抜きのような水みちを作ることなどを被災個所では行っていますが、今後全体に行う方針にまでは至っていません。また、昨年、今年は法面の排水用側溝について維持管理を丁寧に行っています。水がオーバーフローして法面が崩れるような状態をできるだけなくしていきたいと考えています。

 ――橋梁の架替や大規模修繕、トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
 樺澤 橋梁やトンネルについてはメンテナンス年報に公表されている計画に基づき点検・補修を実施し、のり面については日々の巡回や点検結果に基づき対策を進めているところです。
 ――要対策の法面はどれくらいありますか
 樺澤 毎年点検を実施し変状が無いか確認を行っており、確認された変状の状況により対策の必要性を判断しています。旭川開発建設部管内の今後対策が必要な法面は10箇所です。
 ――新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について
 樺澤 桁端部の漏水対策のため、従来の伸縮装置の取り替えから既設伸縮装置の下に樋やゴム製排水装置を施工することでコスト縮減を図っています。
 ――今後の旭川開発建設部の道路事業について付言していただけましたら
 樺澤 北海道の強みは食や観光関連作業であり、これを基幹産業として育てていく必要があります。こうした産業は、国内はもちろん外国からも期待されています。しかしそれを支えている農村や漁村、自然豊かな観光地というのは大抵、人口が希薄なエリアです。第8期北海道総合開発計画の中で我々はそうした領域を「生産空間」と定義しています。それを守るためにそうした産業に従事している方々が安心して快適に生活できるように、拠点と拠点を結ぶ道路ネットワークを作ることが大事だと考えます。
 ――そうですね
 樺澤 北海道の弱点だと思っているのは、過度に人口や経済活動が札幌に一極集中していることです。北海道は、札幌中心には放射状に高規格道路が整備されています。しかし地方の拠点同士、例えば旭川と釧路や帯広、北見などを結ぶ道路ネットワークが未だできていません。札幌以外の地域同士の結びつき・連携がいかにも弱いのです。
 ――鉄道が弱体化している今、高速道路網が機能しないと本当に厳しい
 樺澤 そのとおりです。今まで以上に地方拠点間の定時制を確保できる高規格道路を作らないといけません。そうして人やモノの流れを活発にすることが北海道経済にとって不可欠だと思っています。北海道で人やモノが移動する場合は、当部管内を通るのがほとんどですから、この地域の道路整備・維持管理はますます大事になってくると思います。予算が厳しい中ですが、しっかり事業を進めていきたいと考えています。
 また、インバウンドはレンタカー利用者が増加しています。そうした方が走りやすくなるように道路を整備し、かつ開発局全体で案内板も英語表記を始めています。
 上川のもう一つの魅力はサイクリングです。夏は風も爽やかで走りやすく、美瑛ではセンチュリーライドという日本でも10指に入るロングライドの大会があります。旭川より北に行くと国道が天塩川と並行して走っているため、国道40号で往路を走り、復路を鉄道で帰るという組み合わせもでき、外国人を中心に人気があります。そのため当部内でも自転車に配慮した路面標識などを設置しています。
 ――ありがとうございました
(2018年5月24日掲載)

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