塩害対策 福田歩道橋でSSI工法を採用
駒栄橋でリハビリカプセル工法を予定
――支承取替、伸縮装置の取替えの29年度実績と30年度予定は
林 平成29年度実績は、駒栄橋で水平力分担構造も兼ねたタイプB支承に取り換えています。伸縮装置の取替えは泉橋で車道部を鋼製、歩道部をゴム製に交換しています。伸縮装置の取替えの考え方については、交通量が多い幹線道路については、鋼製(露出型)、交通量が比較的少なく沿道に人家がある箇所では埋設型、伸縮量が小さな橋梁にはゴム製など、現場条件や設計条件を勘案して種類などを選定しています。
――塩害・ASRの有無、対策工法について
林 塩害については福田歩道橋(神戸市垂水区名谷町猿倉、跨道歩道橋)で橋脚に損傷が見られたため、平成29年度にSSI工法により補修を行いました。また、駒栄橋で床版全体に塩害による損傷が見受けられたため、亜硝酸リチウム系のリハビリカプセル工法等による補修を予定しています。
ASRは法定点検済みのⅢ判定橋梁の中で、いくつかASRの疑いのある橋梁が見受けられます。具体的には橋台やPC桁の軸方向ひび割れなどです。詳細な調査を実施し、その結果を踏まえて、設計を行い最適な工法で修繕を行う予定です。
PC橋のグラウト注入不足 30年度に詳細調査予定
鋼橋の既設塗膜除去は塗膜剥離剤を使用
――主に上縁定着のポステンT桁でグラウト充てん不良によるプレストレスロスも起きていますが、神戸市ではそのような橋梁はありませんか
林 架け替えを行った旧中津橋(昭和46年供用、橋長84m、3径間PC単純T桁橋)でグラウト注入不足によるプレストレスロスが見られました。外ケーブルによる補強と架け替えを比較した結果、架け替えに至りました。
他にもグラウト注入不足が確認されている橋梁もあります。そうした橋梁は30年度に詳細調査を行う予定です。
――鋼橋塗替えの実績および予定と新しい重防食の採用などがあれば教えてください
林 平成29年度は泉橋と駒栄橋の2橋で3,120㎡を施工しました。素地調整は泉橋でⅡ種ケレン、駒栄橋でⅢ種ケレンを採用しています。30年度は花山高架橋(昭和47年竣工、橋長228.2m、3径間鋼連続非合成箱桁×3連、有馬街道を跨ぎ、有馬街道につながる高架橋)で塗り替えを行う予定です。面積は910㎡です。
塗り替え前の駒栄橋(左)、塗膜剥離剤を使用して既設塗膜を除去(右)
塗り替え後の駒栄橋
塗替予定の花山高架橋
新しい重防食としては、支承などに金属溶射を部分的に使用しており、水回りに対する延命化を図っています。
――塗替え時における有害物質を含む既存塗膜の処理はどのようにしていますか
林 PCBなどの有害物質を含有する既存塗膜の除去は塗膜剥離剤を使用しています。ブラストは用いておりません。剥離剤使用中あるいは使用後の素地調整についても暴露の可能性があることから、防塵マスクや使い捨て防護服・手袋の着用などの防護策を実施しています。また、PCBの運搬・保管・処分については、請負工事の場合は、PCBを含む塗膜屑を現場に設けた特定有害廃棄物保管用の仮置場に一時保管し、工事完了後にまとめて、市と処分業者で契約を締結し、運搬・処分しています。小規模工事の場合は、発生するPCBを市の指定保管場所に運搬し、厳重に保管した上で、処分量がまとまった段階で市と処分業者で契約を締結し、運搬・処分しています。鉛を含む塗料に関しても同様の処理を行っています。
――耐候性鋼材を採用している橋梁数とその健全度について教えてください
林 神戸市で所管する耐候性鋼材を採用した橋梁は、有馬山口橋、乙倉谷1号橋、乙倉谷2号橋、畑久保橋、合ノ本橋、奥山田橋、中津橋の7橋です。うち3橋で法定点検を完了しており、主部材は全てⅠ判定と健全な状態を保っています。
法面・自然斜面対策 六甲山アクセス道路に特化した計画立案
MMSデータを用いた線的な解析方法を採用
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、神戸市として、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください
林 全市を対象とした、全市道路防災計画(平成26~30年度)と六甲山へのアクセス道路に特化した六甲山道路防災計画(平成29~33年度)を策定し、順次対策を実施しています。道路法面の代表的な対策工法として、落石防護柵工、法枠工、アンカー工、抑止杭工、植生工、落石防護網工などを用いています。
ノンフレーム工法/鋼杭打設工法
落石防護工
――保全分野における新技術や、コスト縮減策または市独自の新技術・新材料などの活用について
林 新技術としては、LP(レーザプロファイラ)データを用いた面的なスクリーニングやMMS(モービルマッピングシステム、右写真は同システムで作成した陰影図)データを用いた線的な解析方法の採用があります。平成26、27年の台風で起きた六甲山へのアクセス道路の大規模災害において、長期の通行止めが生じ、市民生活に多大な影響を及ぼしました。そこで、先ほど申し上げた六甲山道路防災計画を策定することになったわけですが、そこにLPやMMS、さらに既存の防災点検カルテや既往の災害箇所との突き合わせを行い、危険箇所別の評価を行いました。特にMMSデータを活用した排水危険箇所の抽出は道路の下法保護への有効な対策ができると期待しています。
――トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください。
林 トンネルについては第Ⅰ期トンネル長寿命化修繕計画に基づいて修繕しており、平成29年度末で33本中12本の対策を完了しています。30年度に全トンネルで法定点検を行い、その結果を反映して第Ⅱ期トンネル長寿命化修繕計画(平成31~35年度)を策定する予定です。
法面や自然斜面対策につきましては、六甲山エリアは、六甲山道路防災計画に基づき対策を実施しており、29年度末現在で109箇所中6箇所の対策を完了しています。30年度末には、さらに17箇所について対策を終える予定です。
六甲山道路防災計画対策箇所数
それ以外の全市エリアの法面や自然斜面対策は平成29年度末現在で54箇所中25箇所の対策が完了しています。
――最後に付言して
林 引き続き、安全で安心な道路づくりを進めていきたいと考えています。道路は街の生活を支える基盤です。市民・産業のベースとなる道路の整備・維持管理は我々に課されているミッションです。
また、大阪湾岸道路西伸部が出来てくれば、その機能を深める必要が出てきます。特に3号神戸線と湾岸線が東西を並走するわけで、相互に乗り入れする必要がありますが、新神戸駅から国道2号まで伸びているトンネルをさらに伸ばして港島トンネルと接続し、神戸線と湾岸線を繋げればさらに利便性が高まります。トンネル構造はおそらく開削になると考えています。また、トンネルを掘る際に合わせて、生田川ランプの形状なども検討し、使いやすくできればと考えています。
――ありがとうございました
【2018年5月15日掲載】
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