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大阪湾岸道路西伸、神戸西バイパスの早期開通に期待、市管理道路の渋滞解消に傾注

神戸市 東西に長い市域の交通円滑化を図る

神戸市
建設局
前 道路部長(現 住宅都市局 計画部長)

林 泰三

公開日:2018.05.15

2,150橋を管理 100m以上の長大橋は50橋
 1960年代以前が約850橋と3分の1超を占める

 ――次に保全についてお聞きします。まず橋梁の管理状況から教えてください
 林 神戸市の建設局(ほか、みなと総局が長大橋などを管理している)では2m以上の橋梁2150橋を管理しています。15m未満が約1,500橋、15m以上50m未満が約500橋、50m以上100m未満が約100橋、100m以上が約50橋となっています。

年代別橋梁数
 内訳はPC橋が約640橋、RC橋が約960橋、鋼橋が約350橋、木橋や石橋などの特殊橋が約200橋となっています。供用年代別では、1930年までが24橋、30年代が56橋、40年代が34橋、50年代が252橋、60年代が490橋、70年代が614橋、80年代が443橋、90年代が232橋、2000年以降が5橋となっています。1960~80年代の30年間に作られた橋梁が1,547橋と約7割を占めています。路線別では補助国道が約40橋、県道が約300橋、一般市道が約1,810橋という内訳です。

33本のトンネルを管理 矢板工法が過半の17本
 60年代以前が10トンネル

 ――トンネルの管理状況は
 林 道路部所管としては、33本のトンネルを管理しています。工法別では矢板が17本、開削が8本、NATMが8本です。延長別では100m以上が25本、100m未満が8本、路線別では補助国道が4本、県道10本、一般市道19本という内訳です。供用年代別では、30年代が1、40年代が1、50年代が2、60年代が6、70年代が8、80年代が7、90年代が7、2000年以降が1箇所となっています。

年代別トンネル数

点検した橋梁のうち11%がⅢ判定
 架設年次の古い橋梁において橋面防水が未実施

 ――橋梁、トンネルの劣化状況および部位ごとの損傷傾向とその理由について教えてください
 林 橋梁については、法定点検が始まった平成26年度から28年度末までに点検が完了した道路橋約1,250橋(60%)を対象に傾向分析を行いました。点検橋梁の橋種別内訳としては鋼橋14%、RC橋42%、PC橋35%、特殊橋9%となっています。
 調査した結果、主要路線に架かる規模が大きな橋梁については、補修履歴があり比較的健全な橋梁が多いですが、地内線の小規模な橋梁については、供用から現在まで補修した履歴が無い橋梁も多く、劣化が進行しているものが少なからず見受けられました。点検した橋梁のうち11%に当たる136橋(鋼:34橋、PC:50橋、RC:49橋、その他:3橋)が次回点検時までに補修すべきⅢ判定となっています。幸いにⅣ判定は今のところ出ていません。
 劣化状況は部位ごとでは顕著な傾向は見られませんでしたが、部材ごとでは、鋼部材は腐食および防食機能の劣化、コンクリート部材はひび割れや剥離、鉄筋露出、遊離石灰が大半を占めています。Ⅲ判定の傾向としては、鋼部材については、塗装が耐用年数を過ぎても塗替えされておらず、劣化が見受けられます。コンクリート部材については、ひび割れから浸入した劣化因子が原因で鉄筋腐食が発生し、剥離・鉄筋露出が生じています。また、施工不良によるかぶり不足が顕著に見られ、劣化の進行が著しい要因となっています。その中でも特に沓や桁端部など水の影響による著しい損傷が見受けられます。これは架設年次の古い橋梁において橋面防水が未実施であることや、ジョイントの損傷などにより水が浸入しているためと考えられます。
 ――同様にトンネルは
 林 トンネルの法定点検は平成30年度に実施する予定です。これまでは、25年度に実施したストック点検の結果を踏まえて、矢板工法により施工された背面空洞の大きなものを中心に修繕を実施しています。具体的には24年度に健全度評価3A(現在のⅣ判定相当)または築造後50年を経過しているトンネル8ヵ所について緊急点検を実施しました。また25年度に残る25ヵ所についてもストック点検を行っています。その結果背面空洞対策が必要とされた12本のうち、29年度末までに5ヵ所が完了しました。30年度末にはさらに3ヵ所の対策が完了する予定です。30年度に法定点検およびその結果を踏まえた長寿命化修繕計画を策定し、31年度からその計画に基づいて修繕を実施していきます。
 ――背面空洞に対してはどのような補修を行っていますか
 林 40倍発泡ウレタン注入工法を採用しています。施工中は、現場で注入量を管理し、施工後に確認孔を開けて注入厚さを確認することにしています。

トンネルの補修状況

耐震補強 要対策112橋中86橋を完了
 今年度は白水橋と岩谷橋で施工

 ――耐震補強の進捗状況は
 林 緊急輸送道路に架かる橋長15m以上の道路橋112橋に対して、平成29年度末時点で、86橋が完了しています(耐震性能2仕様)。29年度は、駒栄(こまえ)橋(長田区苅藻通、橋長32m、鋼単純10主合成鈑桁橋)、築島橋(兵庫区中之島町、橋長9.25+18.5+9.25m、RCラーメン版桁+単純PB桁+RCラーメン版桁)、向井橋(北区谷上西町、橋長20m、PC単純プレテンT桁)の耐震補強を行いました。駒栄橋は全支承を取り換えたほか、断面欠損したウエブや腐食した下フランジの当て板補強などを行いました。築島橋はPB桁の床版および下フランジを炭素繊維で貼り付け補強を実施したほか、中央部のパイルベント橋脚を一体化させるために周囲をRC巻立て補強を実施しました。

補強前(左)、後(右)の築島橋


駒栄橋の下横構取替

駒栄橋では全支承を取り替えた
 向井橋は、T型ストッパーを用いて水平力分担構造を設置する耐震補強を行いました。
 平成30年度は白水橋(西区伊川谷町、橋長52m、2径間連続非合成鈑桁)と岩谷橋(北区山田町、橋長87.35m、4径間PCプレテン単純T桁)の補強を行います。白水橋は主に橋脚のRC巻立て+落橋防止装置の設置を行い、岩谷橋は橋脚のRC巻立て、ブロック型ゴム被覆チェーンおよびPCケーブルによる落橋防止工、鋼製ブラケットによる変位制限、橋台部の縁端拡幅などを行います。同橋では合わせて床版防水の設置や伸縮装置の非排水タイプへの取替え、コンクリート部材の断面修復およびひび割れ防止工を施工します。下部工および地覆コンクリートについてはシラン系含浸材を塗布する予定です。
 ――落橋防止装置の溶接不良問題への対応は
 林 既存資料が残っている耐震補強工事については、必要に応じて法定点検に合わせて検査を実施しています。但し、日常の通行には支障が無く、大地震時にも直ちに落橋してしまうことはないことから、まずは緊急輸送道路に架かる15m以上の橋梁の耐震補強を優先して取り組んでいます。
 溶接不良が見つかった箇所については、検査を確実に実施し、国や他都市の動向を踏まえながら、必要に応じて取り組んでいきたいと考えています。また、逆に補修を実施することにより母材へ何らかの影響を及ぼすことも考えられるため、未だ補修の実施には至っておりません。
 再発防止策としては、国交省の通知に基づき、設計業務及び工事発注時の契約図書(特記仕様書)への必要事項の記載および工事受注会社、製作会社による全数双方検査を徹底することにしています。
 ――熊本地震で落橋したようなロッキングピアを有する橋梁は管理されていますか
 林 神戸市が所管する道路橋では該当するものはありません。

橋梁長寿命化修繕計画は思いのほか進まず・・・・・・
 30年度は12橋の補修補強を行う予定

 ――橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況は
 林 神戸市では第Ⅱ期橋梁長寿命化修繕計画(平成25~29年度)に基づいた対策を実施しています。計画最終年次となる29年度末の段階では、対象橋梁100橋中26橋の対策を実施済みです。進捗が進んでない理由としては、26年度に法定化された橋梁点検に費用を要しているほか、Ⅲ判定橋梁の修繕優先順位が上がり、計画上の橋梁修繕に予算を充てることが難しくなったためです。30年度からは、29年度末に新たに策定した第Ⅲ期橋梁長寿命化修繕計画(平成30年~35年)に基づき補修・補強を行う予定です。

橋梁長寿命計画実績一覧
 第Ⅱ期計画では、事後保全型(Ⅲ判定の橋梁を補修)として、平成25年度に庄田橋(2級河川新湊川、橋長29.11m、3径間鋼連続桁)や天王橋(2級河川天王谷川、橋長11.7m、単径間PC単純スラブ)などについて、支承の取替や伸縮装置の取替、ひび割れ補修工、表面保護工、橋面防水工などを行いました。また、Ⅲ判定に至っていない橋梁を補修する予防保全型としては、26年度に竜が谷橋(須磨区竜が台町、市道名谷環状線、跨道橋、橋長51m、3径間PC単純T桁橋)で伸縮装置の取替、橋面防水工など、29年度に泉橋(北区山田町、県道16号神戸明石宝塚線、跨道橋、橋長36.7m、単純鋼合成鈑桁)で断面補修工、塗装塗替工、表面被覆工、伸縮装置の取替などを施工しました。泉橋の表面被覆工にはタフガードQ-R工法を採用しています。

補修前(左)、後(右)の泉橋外観(タフガードQ-R工法で表面被覆した)

補修前(左)、後(右)の泉橋路面

 ――ここ3年の上部工の補修補強実績および30年度予定と、コンクリート部材の損傷状況、橋面防水の実施状況について教えてください
 林 平成27~29年度は大規模補修16橋、小規模補修38橋を施工しました。29年度は6橋施工しており、30年度は12橋の補修補強を行う予定です。
 コンクリート桁や床版の損傷は、ひび割れや剥離・鉄筋の露出、遊離石灰が大半を占めています。市が管理する橋梁の床版防水設置状況は不明です。ただし、少なくとも10数年以上前から設置しています。今後も、橋面舗装の打ち替えを実施する際には、合わせて床版防水(アスファルト系)を実施します。
 ――床版防水ですが、一部の自治体で導入実績が出ている複合床版防水を用いることは考えていますか
 林 現状では検討していません。

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