福岡国道事務所は、福岡県の北部、西部および南部の重要都市を結ぶ国道3 号、201 号、202号、208 号、209 号、210 号の6 路線に関する改築、交通安全事業、電線共同溝事業、維持管理事業などを所管している。有明海沿岸道路などの大きな事業を抱えるほか、都市部の橋梁の架け替えなど難しい工事も担っている。耐震補強の進捗など安全・安心の観点も合わせ、安部勝也所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
浦島橋は3月10日に開通
博多バイパスも3月17日に開通予定
――管内の地勢的特徴と道路の整備方針および構造物の整備の考え方について
安部所長 福岡国道事務所は、福岡県の北部、西部および南部の重要都市を結ぶ国道3 号、201 号、202号、208 号、209 号、210 号の6 路線に関する改築、交通安全事業、電線共同溝事業、維持管理事業などを行うとともに、管内自治体による老朽化対策や交通安全対策等を支援しています。管内には、県庁所在地である政令指定都市福岡市(人口約157万人)を中心とする福岡都市圏や筑後地域をはじめ周辺の16 市12 町1 村(人口約170 万人)の地方自治体があります。これらの地域の安全・安心な地域社会の実現や地域間の連携強化による地域活性化、国際交流都市としての成長力の強化を図り、生活や産業、社会・文化活動などを支えるため、また、九州・アジアの交流・物流拠点として、その社会的基盤となる直轄国道の安全・円滑・快適な交通を確保するという重要な使命を担い、地域間の交流・物流のさらなる飛躍に貢献していきます。
具体的には、安全・安心な地域社会の実現のために、日常的な道路の維持管理はもとより、構造物の着実なメンテナンスを実施するための定期点検や長寿命化対策、防災・震災対策として、国道202 号春吉橋架替事業や周船寺橋架替事業に着手しています。例えば、平成26年度に工事着手した国道208 号浦島橋架替事業は平成30 年度を完成目標に事業を推進していましたが、前倒しを行い、今年3月10日に供用しました。
交通安全事業については、管内572箇所(H29年3月末時点)の事故危険区間を対象に、集中的・重点的に対策を実施しています。例えばその中の30箇所については、交差点改良等を実施しています。平成29 年度からは、国道3 号新代交差点改良(広川町)、国道3 号本村北交差点改良(八女市)、国道208 号柳河歩道整備(柳川市)の3箇所について新たに事業着手しています。事業内容としては、右折レーン設置、歩道の拡幅・新設、自転車通行空間の設置等に取り組んでいます。
電線共同溝事業については、道路防災性の向上、安全で快適な歩行空間の確保、良好な景観の形成等を目的に、国道3号の千早・名島地区、国道208号の大川市酒見地区などで事業を推進しています。特に、国道208号大牟田市八江地区は平成29年11月10日に完成し、国道208号大牟田地区も平成29年度中に完成する予定です。加えて、電線共同溝の整備に伴い、車両の視認性の確保や歩行者・自転車の安全で快適な空間の確保に取り組んでいます。
改築事業については地域間の連携 強化や国際交流都市としての成長力強化を目的に、国道3 号博多バイパス、国道3号鳥栖久留米道路、国道208 号有明海沿岸道路(大牟田~大川)、大川佐賀道路、国道202 号・497 号今宿道路、国道210 号浮羽バイパス、国道322 号八丁峠道路の整備を進めています。なお、有明海沿岸道路(徳益IC~柳川西IC)は平成29年9月16日に開通し、博多バイパスは平成30年3月17日の開通する予定です。今宿道路(有田中央交差点~真方交差点)は平成30 年度の開通に向けて事業を推進しています。
――国道3号博多バイパスの供用は、地域の交通の流れを大きく変えそうですね
安部 博多バイパスに並行する国道3号区間は、現在、1日70,000台に達する九州でも指折りの交通量を有しています。博多バイパスの完成は、その交通の流れを変え、渋滞解消や交通安全に大きく寄与するものになると考えています。
また、博多バイパスは都市部を走る道路なので、住民の皆様の理解を得ながら進めていくことが大事です。実際に理解を得るのに労力を割きました。例えば香椎神社にかかる香椎高架橋(96m、PC3径間連結ポステン中空床版橋(プレキャストブロック))は、香椎参道にかかる橋です。香椎宮では2年に一度、4月に神幸式が斎行され、神輿(みこし)が本宮から約1キロ離れた頓宮(とんぐう)まで神幸する『お下り』と本宮に還幸する『お上り』の神事があり、この香椎参道の楠並木を進みます。この『神の道』の上を通ることは畏れ多いということで、香椎高架橋の桁下には『雲』という文字を記しています。さらに橋上から神輿を見下ろさないようにするため、目隠し板を設置しました。高欄には(神社の欄干と同様の)擬宝珠(ぎぼし)を配し朱色とし、景観と調和したデザインとしました。通過するドライバーに香椎宮付近を走っているということを認識してもらえると考えています。これらはすべて地元の方のご意見を取り入れながら対策を決定しました。
施工については、技術的に桁架設を省力化するため、プレキャストブロックを用いた引き出し架設を採用しています。また、都市部ではありますが丘陵地帯もあり、土工工事が多く土の出し入れには非常に苦労しました。特に、埃が立たないように工夫しながら施工しました。
また、ICT技術を活用した舗装工事(ICT舗装工)を実施しました。レーザースキャナーを用いて3D設計データの作成、出来形管理を行う施工プロセス全ての段階においてICT技術を活用しました。
MC(マシンコントロール)グレーダーによる施工では、トータルステーションからグレーダーに座標データ随時送信することで自動制御による施工を実施しました。そのため高さ確認が不要になり時間短縮と仕上げ精度が向上し手戻りの大幅な減少・作業工程の短縮、人件費の削減にも効果がありました。また、人力による高さ確認が不要になったことで重機の周りに作業員が近づくことがなくなり安全性の向上にも繋がりました。
――香椎高架橋については、ご神木の剪定で苦労したと聞いています
安部 樹木医と相談し、地元の方のご意見を取り入れながら最小限の範囲で剪定させていただきました。剪定直後に虫害による炭疽病で一見すると枯れてしまったように見えてしまい、地元の方をはじめ各所より「大丈夫か?」と問い合わせを受けました。現在は樹勢を回復しています。
――都市圏における事業で博多バイパス以外に何かありましたら上げてください
安部 都市圏では春吉橋架替事業があります。福岡市の中州と春吉の間を流れる那珂川を渡河する橋です。歩行者、自転車や、特にバスやタクシーの交通量も多く、細心の注意を払わねばならない難工事となっています。今年度はA2橋台を施工しています。昨年度、一昨年度にP1とA1を施工し、今年度はA2と同時に、迂回路の上部工(橋長66m、2径間連続鋼床版鈑桁橋)の工事を発注して施工業者が決まったところです。
架け替えが進む春吉橋(国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所提供、以下注釈なきは同)
――都市圏でほかには
安部 西九州自動車道があります。長崎や佐賀からみれば、福岡都市圏や北九州市、本州等へアクセスする重要な路線です。
現在は、糸島市内の区間(今宿道路、有田中央~真方間約3km)を工事しています。上を走る専用部と下を走る一般部のうち、一般部の工事を進めています。当該区間の専用部は既に開通していて、福岡道路公社の有料道路になっています。
さらに、佐賀側に進むと、以前、有料道路(二丈浜玉道路)であった区間があります。三種の道路規格のため、幅員が狭く、唐津から来た車が県境を跨いで福岡県に入ると、狭い区間が続きます。この区間は立花トンネル(延長1,236m、幅員9.0m)などトンネルが連続しており、順次補修を実施しているところです。立花トンネルの老朽化対策は今年度完了する予定です。
――今宿道路の有田中央~真方間の一般道は今年度完了でしょうか
安部 一般部の供用は来年度を予定しています。土工部がほとんどの区間ですので、土の出し入れが大変な工事です。一部、法面の勾配を立てざるを得ない箇所では新技術を入れて補強を行っています(補強筋法面工(QS-100010-A)等)。 補強筋法面工は、法面表層の土砂崩壊と土砂流出を防ぎ、長期的な安定を確保し植生シートにより植生を良好にする法面工法です。この工法では凹型プレートを使用し、ナットで締め付けるだけで支圧版が形成されるので、短期間に施工が可能です。従来工法であれば、支圧版部分の突起があったため、維持管理上危険性がありましたが、この工法では突起がないため、法面部の草刈など維持管理が容易となります。
また、ICTを活用した土工工事を実施しました。まず工事着手前にUAV(無人航空機)による3次元起工測量(空中写真測量)を行い、写真解析及び点群処理を施した測量データ(地形データ)に3次元設計データ(設計データ)を重ね合わせ3Dモデルを作成します。施行はMC(マシンコントロール)ブルドーザとセミオートMCバックホウにより行いました。バックホウは切土時にMG(マシンガイダンス)、法面整形時にMC(バケット位置が制御され過掘削防止)として使用しました。オペレーターの熟練度に左右されない精度の高い施工を行うことができ、品質の良いものをつくることが出来ました。
――周船寺橋は
安部 橋長20.5mのPCプレテンホロー桁です。施工方法としては、迂回路橋をかけて、交通を切り替えた上で、現橋を掛け替える形となります。迂回路橋については仮設橋となりますので、新橋完成後に撤去します。?
平成29年度施工中の橋梁上部工