道路構造物ジャーナルNET

熊本地震復旧や横軸になるルートも必須

九州地方整備局 東九州道などの幹線道路整備が進捗

国土交通省
九州地方整備局
道路部長

前佛 和秀

公開日:2018.03.06

所管橋梁は4,501橋、橋長100m以上は526橋
  管理トンネルは155箇所、1,000m以上は37箇所

 ――次に現在管理している橋梁・トンネルの内訳は
 前佛 当整備局が管理する2m以上の橋梁は4,501橋です。そのうち100㍍以上の長大橋は526橋となっています。橋種別ではRC橋が最も多く41%となっています。次いでPC橋が40%、鋼橋が19%です。


橋種別一覧/トンネル工種別一覧

 トンネルは155箇所を管理しています。延長1,000m以上は37箇所あります。
 工種別は矢板工法が39%、NATMが55%、開削工法が6%となっています。
 供用年次が明らかな橋梁において50年を超える橋梁数の割合は、約32%に達しており、これが20年後には約64%まで急激に増加します。50年を超えるトンネル数の割合は、現在の約33%から20年後には約41%となります。
 ――点検を進めて見て管内の構造物の劣化状況について教えてください
 前佛 九州地方整備局が管理する橋梁の劣化状況は、鋼橋では腐食、防食機能の劣化が多く、排水不良が要因と考えられる損傷が多くなっています。RC・PC橋ではひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰が多く、乾燥収縮をはじめ種々の要因で発生するひび割れが多くなっています。


橋梁の損傷状況写真

 トンネルの状況は圧ざ・ひび割れ、うき・剥離や漏水などの劣化が多くなってきています。


トンネルの損傷状況写真

 新しい橋梁点検要領により実施されたH26~28年度点検における健全性の区分についてはⅠが68%、Ⅱが24%、Ⅲが8%、Ⅳが0.04%となっています。
 同様に新しいトンネル点検要領により実施されたH26~28年度点検におけるトンネルの健全性の区分についてはⅠが2%、Ⅱが64%、Ⅲが34%、となっています。
 また、地方公共団体への支援策の一つとして、緊急かつ高度な技術力を要する呼子大橋の保全について、平成27年度に直轄診断を実施し、28年度から修繕代行を行っています。修繕代行にあたり、ケーブル振動の原因究明と効率的かつ効果的な修繕対策を策定するため、「呼子大橋修繕対策検討会」を設置しています。修繕工事は今年度から実施しています。


呼子大橋全景(井手迫瑞樹撮影)

耐震性能2は83%
 ロッキングピアは2橋 平成30年度に補強完了

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況は
 前佛 耐震補強については、全体で約1,600橋のうち、平成28年度までに完了した橋梁は83%です。今年度は22橋で補強工事を行っています。83%という割合は全て耐震性能2に拠ったもので、耐震性能3は全ての橋梁で満たしています。耐震性能2は、主に変位制限装置や段差防止工の設置を施しています。
 ロッキング橋脚の補強については、九州縦貫道を跨ぐ国道57号の詫麻跨道橋(上り・下り)の2橋において、補強工事を今年度着手したところで、平成30年度に完了する予定です。
 ――国道57号の詫麻跨道橋では、橋台部と接続する土工部に段差防止のための背面処理工を施していますね
 前佛 地震後に土工部が沈下で下がっても、(背面処理工が機能して)スロープ状に落として、緊急車両を通せるように期待しているもので、熊本河川国道事務所管内で試験的に採用したものです。


国道57号の詫麻跨道橋で採用した背面処理工

5カ年で593橋の補修を計画
 28年度までに239橋を完了

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また、具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。また、トンネルの点検状況、トンネルについて橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
 前佛 橋梁の長寿命化修繕計画については個別施設計画(インフラ長寿命化計画)を策定し、補修工事を行っています。同計画では、平成26~30年度の5カ年で593橋の補修を計画しており、平成28年度までに239橋の補修工事が完了しています。補修工事における特徴的な実例としては、国道210号の境橋があります。同橋は、昭和48年(1973年)に架設された、玖珠川を渡河する橋長226.8mの鋼単純合成鈑桁橋2連+鋼3径間連続非合成箱桁橋で44年が経過しており、平成27年度の定期点検による診断の結果、床版の漏水・遊離石灰、床版ひび割れなどの損傷が見られました。詳細調査の結果、床版打替えを採用しました。
 トンネルの長寿命化修繕計画については、個別施設計画(インフラ長寿命化計画)を策定して補修工事も行っています。個別施設計画では、平成26年度からの5カ年で28箇所の補修を計画しており、平成28年度までに7箇所の補修工事を完了しています。


トンネルの補修状況

Co桁・床版 漏水・遊離石灰1,592橋、ひび割れ1259橋で確認
 上部工補修・補強 平成29年度は185橋で対策

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と平成29年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えてください
 前佛 上部工補修・補強の平成28年度の実績は136橋で、そのうち鋼橋が46橋、RC橋が20橋、PC橋が70橋となっています。29年度は185橋の補修または補強を行う予定で、鋼橋が54橋、RC橋が37橋、PC橋が94橋を施工する予定です。


橋梁上部工補修補強の実績

 コンクリート桁・床版部の損傷は、平成26~28年度に点検した橋梁では、漏水・遊離石灰が1,592橋、ひび割れ・床版ひび割れが1,259橋で見られています。年次別では、昭和31~40年に建設された橋梁の損傷が比較的多くなっています。今年度は38橋で設置する予定です。

支承は5橋、ジョイントは61箇所で取替
 塩害は28橋、ASRは83橋で疑い・確認

 ――支承取替やジョイント交換の今年度予定は
 前佛 支承は5橋で取り替えます。ジョイントの交換は61箇所で予定しています。
 ――塩害やASRによる劣化の発生状況は
 前佛 塩害については、平成26~28年度までの3カ年で塩害の疑いがある橋梁を含み28橋で確認されています。ASRは平成26~28年度の3カ年で、疑いがある橋梁を含み83橋で確認されています。


塩害及びASRの状況写真

 ――対策実施例は
 前佛 過年度にASRを対策した代表的な橋としては、福岡県行橋市の国道201号の亀川橋があります。1983年に完成したPC単純プレテン中空床版橋で、ASRにより床版下面にひび割れが確認され、漏水防止として伸縮装置取替えや床版防水工、ひび割れ注入、表面保護工を実施しています。

平成29年度 25橋7,000㎡を塗り替え
 有害物質を含む塗膜除去は湿式(剥離剤)が基本

 ――平成29年度の鋼橋塗り替え予定(同)は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でも良いので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや厚生労働省・国土交通省から平成26年5月30日に出た文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出ていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください 
 前佛 平成29年度は鋼橋25橋に対して約7,000㎡の塗替を行いました。
 PCBや鉛など有害物を含む既設塗膜の剥離をする必要がある場合は、原則、湿式工法を採用しています。
 ただし、首都高速道路で起きた災害などを鑑みて、作業者の安全対策や施工時の火事災害防止などの対策は厳しく行っていく必要があります。
 耐候性鋼材については、管内で88橋の橋梁に採用されています。 平成26~28年度までの点検結果では、健全度Ⅱの予防保全段階が3橋、健全度Ⅲの早期措置段階が4橋それぞれ該当しました。


耐候性鋼材橋梁の損傷状況

 ――もう少し具体的に聞きたいのですが、塗り替えは現在どれくらいの素地調整を基本としていますか。また1種ケレンの場合は基本的にブラストを必要としますが、そうした際はどのような塗膜処理+素地調整方法で施工しているのでしょうか
 前佛 塗り替えについては、塗替え方式(全面塗替え、部分塗替え、局部補修)や塗替え塗装に適用する塗装系を劣化状況、現場状況等により、橋梁毎に選定し、施工しています。
 ――耐候性鋼材は主にどのような部位が損傷しているのでしょうか。また補修方法はどのような手法で対策を施しているのでしょうか
 前佛 耐候性鋼材で損傷している主な部位は、主桁(下フランジ)になります。また、補修対策については、腐食の原因排除を行い、必要に応じて塗替え塗装を行っています。
 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、整備局として道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください
 前佛 大雨や台風等による土砂崩れや落石等の恐れがある箇所については法面工など安全性を高める対策を実施しています。
 平成8年度に道路防災点検及び平成18年度にその再確認を行っており、それらの結果を踏まえて継続的に対策を実施してきたところです。
 また、毎年梅雨や台風時期前には、適切に点検(路上→問題箇所は詳細点検)し、必要な個所は対策を実施して災害を未然に防ぐように心がけています。
 具体的には、要対策箇所を指定し、カルテを作成しています。
 ――昨年7月の九州北部水害でも、道路は大きく被災しました
 前佛 福岡県や大分県からの要請を受けて災害協定に基づいて、約1週間かけて国道211号を緊急輸送車両の通行が確保される状態にするため、道路啓開しました。また、応急復旧についてもお手伝いさせていただきました。
 九州は、梅雨時に集中豪雨が多発し、全国と比較して強い台風が多く接近する台風常襲地帯であることから、法面崩壊等により道路交通が遮断されるなど被害が多い地域です。今年度も宮崎県日南市において2度も大きな法面崩壊が発生し、社会生活に大きな影響を与えました。そのようなことから大雨や台風等による土砂崩れや落石等の恐れがある箇所については法面工など安全性を高める対策を実施しています。


宮崎県日南市で起きた大規模な斜面崩壊と本復旧

 平成8年度に道路防災点検及び平成18年度にその再確認を行っており、それらの結果を踏まえて継続的に対策を実施してきたところです。具体的には、要対策箇所を指定し、カルテを作成のうえ毎年点検及び対策を講じています。
 また、毎年梅雨や台風時期前には、適切に点検(路上→問題箇所は詳細点検)し、必要な個所は対策を実施して災害を未然に防ぐように心がけています。
 ――ありがとうございました

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