塩害損傷は約43橋 静岡県沿岸部で顕著
ASRは149橋 内陸の山間部などで散見、骨材由来の疑い濃厚
――塩害、ASR反応による劣化の有無は。劣化があればどのような形で出ていますか
河南 塩害による損傷が疑われる個所は43橋です。塩害は静岡県沿岸部(国道1号)が多く、飛来塩分によるものと考えられます。
――凍結防止剤によるものは含まれていませんか
河南 山間部の凍結防止剤散布量が多い地域で一部発生しています。
――塩害損傷への対策工法は
河南 表面被覆や断面修復を中心に対策を実施しています。
――同様にASRは
河南 149橋確認されています。過去にASRの反応を示す骨材を使用して建設された橋梁で損傷が発生していると考えています。
ASRによる損傷事例
――ASRの対策工法は
河南 ASRの進行度合いを調査した上で、防水、表面被覆やひび割れ注入など状況に応じた対策を行っています。
――損傷が起きているところは複合劣化に進みます。そうしないためには
河南 進行を遅らせるため必要に応じ被覆もしています。また、ASRによる損傷が発生している橋梁はわりと年数が経ってきているので、地覆・高欄など部分的に変状が見られる箇所等は他の工事にあわせて打ち直すこともあります。桁や橋脚本体はそうしたことはできませんから被覆や注入などで対応しています。
耐候性鋼材橋 排水処理が原因で層状錆生じるケースも
有害物質含有塗膜対策を適切に行う
――鋼橋では耐候性鋼材で保護性錆ではなく悪性錆の発生が生じるケースも散見されていますが、そうした損傷はありますか
河南 耐候性鋼材を採用した橋梁は中部地方整備局全体で187橋あります。不安定錆による腐食が発生し、C1、C2相当に至っているものは39橋に達します。路線別でみると国道158号、19号、474号など中山間部の凍結防止剤散布地域で損傷が発生する割合が高くなっています。
――耐候性鋼材橋梁の損傷に対してどのように補修していますか
河南 基本的には部分的にブラストをかけて再塗装しています。また、排水系統の不具合により桁などに凍結防止剤を含んだ水がかかり、損傷を招いているケースが散見されるため、補修の際は水回りの補修などもあわせて行っています。
耐候性鋼材橋の損傷事例
――鋼橋の今年度塗替え予定と、塗り替えの際のPCBや鉛を含む既存塗膜剥離および素地調整方法について教えてください
河南 28年度は13橋約14,000㎡、今年度は19橋約32,000㎡(愛知県、岐阜県、三重県、長野県)で塗り替えを行う予定です。
――PCBや鉛などの有害物を含む既存塗膜の除去は
河南 高濃度のPCBを含む廃棄物に関しては平成34年度末までに、鋼橋の塗膜に含まれる低濃度のPCB廃棄物は39年度末までに処分を完了させなければなりません。中部地方整備局では基本的には1種ケレンを行っています。また、試験的に塗膜剥離剤を使用しています。
高山国道管内のPCBを含む橋梁の塗り替え事例
――鉛も同じですか
河南 同じです。
――塗膜剥離剤などで施工するケースは
河南 塗膜剥離剤など湿式で既存塗膜を剥がして除去するケースもありますが2種ケレン相当となり、添接部や隅角部についてはどうしても湿式では取りきれません。そのため、塗膜剥離と素地調整を両立できる循環式のブラストを使用しているところもあります。
浜松河川国道管内のPCBを含む塗装塗り替え事例①(塗り替え前/足場設置状況)
浜松河川国道管内のPCBを含む塗装塗り替え事例②(循環式ブラストの設置状況/ブラスト施工状況)
塗り替え完了状況
――異常気象が多いなかで、具体的な防災対策の要対策箇所と進捗状況を教えてください。
河南 中部地方整備局には401箇所の要対策箇所があり、今年度は44箇所の防災対策を行っています。対策としてはのり面の崩落を防止するのり枠工をはじめ、落石を防止する落石防止ネットや根固工等の発生源対策、また、道路上への落石の侵入を防ぐ落石防止柵等の待ち受け対策を行っています。
多治見砂防国道管内 ロープネット/高山地区の落石対策事例
紀勢国道管内および沼津河川国道管内の斜面・のり面対策事例
整備局が管理する、急峻な中山間地における直轄道路は概ね谷あいを抜けています。そうした箇所が急峻な地形になっているのは自明のことで、のり面管理などは我々にとって重要な課題になっています。一斉点検を行って、防災カルテをつくり、点検対象になった箇所を経年的に見ていき、手を入れていくことは行っています。
ただ、のり面がある限り怖いところはありますので、19号や41号のようにトンネルでルートを変えていくなど防災事業によって、抜本的な対策を施している箇所もあります。残念なことにそうした大規模な対策は一気に進めることは難しいので、カルテに基づいた毎年の点検、そして手をいれるという地道なことをやりながら、ここはという所に防災事業で手を打っていきたいと考えています。
中津川市管理の乙姫大橋で整備局初の直轄診断
耐候性鋼材が異状錆を発生、層状錆も散見
――自治体が管理する高度な技術を要して補修補強および更新しなければいけない構造物は直轄修繕代行というメニューも26年の道路法改正によりできましたが、具体的な案件はありますか
河南 中津川市が管理する乙姫大橋において、中部地方整備局で初めて道路メンテナンス技術集団による直轄診断を実施しています。同橋は橋長316.9mの鋼単純箱桁+2径間連続トラス+鋼単純箱桁橋で、耐候性鋼材を採用しており、中津川市が実施した定期点検において、層状剥離を伴う異常な腐食が確認されています。
乙姫大橋の概要および損傷状況
同橋は木曽川を渡河する箇所に架かっており、地域にとっても大変重要な橋です。現地調査を行った結果、層状錆などの原因はスラブドレーンが抜け落ちて床版の裏側に穴が開いたままの状態になっており、そこから水が漏れていたことが主な原因で層状の錆が発生していました。しかし、直ちに通行止めを要するような状態ではないことは確認できました。今後は、国総研や土研と相談しながら診断を進めていき、今年度内に成果をとりまとめ、中津川市に報告する予定でおります。
――ありがとうございました