橋梁 50年以上経過は23% トンネルは同19%
――次に保全の話題ですが、現在の管内橋梁・トンネルの内訳から教えてください
河南 橋梁から申し上げますと、当整備局で管理する2m以上の橋梁は5,619橋に及びます。橋種別は鋼橋が1,742橋(31%)、RC橋2,330橋(42%)、PC橋1,307橋(23%)、混合橋その他240橋(4%)となっています。
橋長別では、2m以上15m未満の小規模な橋梁が2,847橋と過半数を占める一方で、100m以上の長大橋も1,017橋と2割近くに達しています。
供用後50年以上を経過している橋梁は現在23%ですが、10年後に49%、20年後には68%まで増加する見込みで、適切な対応が必要です。
トンネルは、全体128箇所を管理しています。工種別ではNATMが67本(52%)、矢板工法が60本(47%)で両工法でほぼ半分ずつとなっています。他、開削トンネルが1本あります。
1km以上の長大トンネルは34箇所で27%を占めます。50年を超えるトンネルは現在19%ですが、20年後には49%までに増える見込みです。
――点検を進めて見えてきた構造物の劣化・損傷状況を橋梁から教えてください
河南 鋼橋では腐食が多く見られます。PC・RC橋では、剥離・鉄筋露出、ひび割れ、浮きなどが多く見られます。防水や排水不良が主な損傷要因と見られる桁端部の損傷が比較的多く確認されている状況です。
健全度Ⅲ 鋼橋が最も高く30%に達する
――損傷状況をもう少し詳しく
河南 平成26年度から平成28年度での定期点検結果では、鋼橋は健全度Ⅲが306橋(30%)、Ⅱが438橋(44%)となっています。損傷状況の1位は腐食であり、損傷原因全体の35%に達しています。
鋼橋・PC橋・RC橋の健全度
RC橋はⅢが55橋(5%)、Ⅱが288橋(26%)と比較的健全です。損傷原因としては剥離・鉄筋露出が51%と全体の過半を占めています。
PC橋はⅢが45橋(6%)に留まっていますが、Ⅱは343橋(42%)となっています。損傷原因としてはひび割れが28%、剥離・鉄筋露出が25%となっています。
岐阜国道管内 鋼材腐食状況と補修事例
静岡国道管内 コンクリート桁損傷状況と補修事例
――PC橋でひび割れが起きていますね
河南 少数ですが生じています。
――東北の現場では、プレテンでPC桁が損傷している話もあります。そうした損傷はありますか
河南 プレテンの橋梁では、間詰め部や横締めのPC定着部で損傷が見られることがあります。
――上縁定着のポステン橋において床版防水をしていないこともあって定着部から水が入り、腐食が起きて損傷しているケースがありますが、中部地整でもそうした損傷は存在しますか。また、PC中空床版橋でボイド管の浮き上がりによるかぶり不足といった損傷はありますか
河南 上縁定着のPC定着部から雨水が進入して損傷するケースは中部でも確認されています。それらに対応するため留意して点検を行い、発見された場合には詳細な調査を行った上でPC鋼線の防錆処理を行うとともにグラウトの再注入を行う等、適切な対応を実施しています。
中空床版橋のボイドのかぶり不足の事例は中部でも確認されています。それらについては調査を行い、計画的な補修へ向けて取り組んでいるところです。
トンネル 健全度Ⅲは49%に達する
耐震補強は今年度約130橋で実施 耐震性能2の確保を推進
――トンネルについては
河南 健全度Ⅲが49%、健全度Ⅱが51%となっており、何らかの対策が必要なトンネルがほとんどです。
トンネルの損傷状況と修繕事例①
トンネルの損傷状況と点検事例②
作業車を使ったトンネルの近接点検
――橋梁の耐震補強の進捗状況を教えてください
河南 大規模地震の発生確率などを踏まえて、緊急輸送道路の耐震補強を推進しています。当面は、今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域で重点的に、落橋・倒壊の防止対策に加え、支承の補強や交換などを行い、耐震性能2を確保します。平成29年度は約130橋の耐震対策を実施します。加えて、昨年の熊本地震で落橋・倒壊の被害が生じたロッキングピアの補強対策を実施します。飯田管内で跨道橋1橋、名古屋管内では金山新橋、静岡管内で靖国橋(上下)合わせて4橋が該当します。金山新橋以外はすでに施工中です。金山新橋も来年度までに対策を完了させる予定です。
沼津河川国道管内の橋脚耐震補強事例
静岡国道管内の耐震補強事例①(アンカーピン/変位制限装置)
静岡国道管内の耐震補強事例②(桁連結)
橋梁修繕 今年度は約320橋で実施
――長寿命化計画に基づいた対策の進捗状況は
河南 点検結果に基づいて以前のC判定や現在の定期点検要領のⅢおよびⅡ判定について、事後保全型と予防保全型の補修を計画的に実施しています。主には鋼橋の当て板の補強やコンクリートの断面修復などです。
鋼床版 天白扇川橋で溶接部に若干の疲労亀裂
RC床版 昭和41~50年に比較的損傷が多い傾向
――上部工補修補強のこの3年の実績と2017年度の施工計画は。愛知県では衣浦大橋、名古屋市では天白大橋で鋼床版や鋼桁の疲労損傷が生じ、対策を行っているケースを以前取材しました。中部地整でも交通量が激しいので、床版の疲労損傷があると思いますが、損傷状況と原因は。さらにコンクリート床版の損傷状況と床版防水工の実施率についても教えてください
河南 鋼床版は1橋、天白扇川橋の下り線で溶接部に若干の疲労き裂が生じています。デッキ貫通亀裂までは至っていません。確認をしながら修繕をする予定です。
コンクリート床版の損傷としては、剥離・鉄筋露出、うき、漏水・遊離石灰・床版のひび割れといった損傷が多く発生しています。主に防水や排水の不良が原因とみられる損傷が多い傾向です。年次としては昭和41~50年(1966~75年頃)に建設された橋梁で比較的損傷が多く生じています。
浜松河川国道事務所管内 床版裏面補修事例
岐阜国道管内 床版補修事例
――床版の健全度はどんな状況ですか
河南 特徴的な損傷としては、床版の上面が劣化して土砂化した事例も発生しています。
――エリア的にはどこでそうした損傷が起きていますか
河南 土砂化による損傷は飯田国道管内で生じています。飯田は昼と夜の気温差が大きく、凍結融解が発生しやすい地域のため、ひび割れに入り込んだ水の凍結融解が主な原因で床版の土砂化に繋がっている可能性が高いと考えています。
床版防水については、平成14年3月の道路橋示方書改定で床版防水が義務付けられ、それ以降の橋梁は新設時より床版防水が施工されています。既設橋についても、舗装打替などの補修に合わせて床版防水を施工するなど随時対応しています。
――支承と伸縮装置取替の取替とノージョイント化について。今年度の施工予定は
河南 支承は約50支承、伸縮装置は約70箇所で取替えます。ノージョイント化はありません。