道路構造物ジャーナルNET

橋梁長寿命化修繕計画は268橋が対象で22橋の修繕工事完了

さいたま市 国道463号バイパス(鶴巻ランプ)などを整備

さいたま市 建設局
土木部長

小島 正男

公開日:2017.10.16

(都)町谷本太線は今年度末に供用開始

 ――都市計画道路町谷本太線(鴻沼工区)は
 小島 町谷本太線は、市南部地域の東西方向道路が脆弱であり、国道17号と国道17号バイパスの連結路確保を目的とした街路整備事業です。延長4km、計画幅員16mの2車線道路となります。そのうちの766mを鴻沼工区として事業を進めていて、進捗率は28年度末時点で96%となっており、今年度末までに供用を開始します。27.4mと12mの橋梁2橋、127.5mのトンネル1本(箱型函渠)があります。


(左)(都)町谷本太線(鴻沼工区)完成予想図/(右)標準横断図

(都)町谷本太線(鴻沼工区)トンネル部施工

竣工後80年が経過した岩槻橋を架け替え

 ――その他に新設や架け替えの橋梁はありますか
 小島 主要地方道さいたま春日部線の一級河川元荒川を渡河する岩槻橋の架け替えを予定していて、現在は詳細設計中で、平成30年度から事業着手する予定です。


岩槻橋(現橋)全景

 岩槻駅周辺地区を横断する路線の一部として重要な橋梁ですが、昭和16年に竣工されてから約80年が経過し、老朽化が進んでいる状況です。交通量は、約13,000台/日(大型車混入率10.2%)と多いことも、損傷の一因と考えられます。また、車道本線がゲルバー桁形式で本線に並行する側道橋がパイルベント橋脚となっており、現在の耐震基準を満たしていない状態です。また有効幅員が5.5mと狭く、歩道(幅員2m)が片側のみ設置となっており、通行車両や歩行者の安全確保も課題となっていました。緊急輸送道路であることから、岩槻橋の架け替えとその周辺の現道を都市計画決定された道路幅員で整備します。事業延長は現道整備区間を含めて約0.5kmで、新設橋梁は橋長79m、幅員16.8mで2径間連続プレビーム合成桁橋となります。


岩槻橋の損傷 (右)主桁部/(左)横桁と床版部

 また、同じ主要地方道さいたま春日部線の一級河川芝川に架かる境橋も架け替えの予定があります。主要地方道さいたま春日部線の4車線拡幅工事と埼玉県による芝川の河川改修事業にともなうものとなります。昭和40年に架設された現橋は橋長17m、幅員10.1mのPCスラブ橋で、新設橋梁は橋長50.3m、幅員25.8mの鋼2径間連続合成床板橋となります。現在は、用地買収および橋梁詳細設計中で、平成32年度末の供用を目指し、事業を進めています。


境橋(現橋)全景

供用後50年以上経過した橋梁は11%で59橋
 30年後には80%に達する

 ――保全について、管内の橋梁の内訳についてお教えください
 小島 全体で944橋を管理しており、内訳は、車道橋794橋、人道橋56橋、側道橋31橋、デッキ9橋、立体54橋となります。橋種別では、77%がコンクリート橋で731橋(RC橋422橋、PC橋309橋)、鋼橋が208橋(22%)、木橋などのその他が5橋となっています。供用年次別でみると、竣工年度が判明している539橋のうち、50年以上経過した橋梁は現在59橋で11%、20年後に63%、30年後には80%になります。竣工年度が不明な橋梁のほとんどが、過去に水路管理者などが建設したボックス形状のもので、引き継ぎがされずに台帳がない状態で、さいたま市が管理しております。延長別では、100m未満が904橋と全体の96%を占めており、400m以上の長大橋は3橋あります。


橋種別橋梁数

供用年次別橋梁数

供用年次別の分布図


橋長別橋梁数

 ――管理橋梁の引き継ぎで合併による影響は
 小島 合併による影響はありません。ただ、道路管理者が建設した橋梁は図面が残っていますが、それ以外は図面自体がないので、補修・補強の工事を行う場合は、復元設計から始めなければなりません。
 ――管理されているトンネルは
 小島 本市が管理しているトンネルは、緑区にあるカルバート形式の延長81.5mの「中尾トンネル」1箇所ですが、現在事業進捗中の都市計画道路町谷本太線(鴻沼工区)が完了しましたら、事業区間にございますトンネル1基(延長127.5m)が追加となり、全2箇所となります。

耐震補強の対象橋梁は44橋
 平成28年度までに31橋の耐震工事が完了

 ――点検を進めてみての結果は
 小島 毎年約190橋の点検を継続的に実施しており、平成26年度の道路法一部改正以降の点検において、緊急措置段階となる判定区分Ⅳの橋梁はありません。また、判定区分Ⅲ(早期措置段階)も比較的少なく36橋となっています。
 ――橋梁の全般的な損傷状況は
 小島 本市の管理する橋梁の大部分はコンクリート橋であり、損傷の多くは、ひび割れやコンクリート部材の剥離・鉄筋露出です。また鋼橋では、コンクリート橋同様に、床版のひび割れや、主桁部材における防食機能(塗膜)の劣化が主な損傷です。
 古い設計基準の橋梁は床版厚が薄く、防水工がされていないものもあることから、交通量の増加に伴い、劣化が進みやすくなっております。
 ――耐震補強の進捗状況は
 小島 高速道路を跨ぐ橋梁の対策を平成19年度までにすべて完了させた後、平成22年度に耐震補強工事実施方針を策定し、計画的に対策を進めています。対象は、緊急輸送道路、高速道路および鉄道を跨ぐ橋梁で橋脚を有し、橋長15m以上の44橋となります。昭和55年道路橋示方書より前の設計基準を適用した橋梁を優先し、次に平成8年道路橋示方書より前の設計基準を適用した橋梁の耐震補強工事を順次進めているところです。平成28年度までに、先行して耐震化を行った高速道路を跨ぐ道路橋17橋を含め、31橋の対策が完了しており、今年度は4橋の耐震工事を予定しています。
 ――ロッキング橋脚については
 小島 東北自動車道にかかる道路橋で6橋あり、東日本高速道路が補強工事を行う予定です。
 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた進捗状況をお教えください
 小島 平成21年度に計画を策定して、24年度と28年度に改定しています。管理する944橋のうち、緊急輸送道路や跨線橋・跨道橋などの第三者被害が生じる可能性のある橋梁および橋長15m以上の道路橋268橋が対象となっています。計画策定から現在までに31橋の修繕工事に着手し、22橋が完了しました。
 ――具体的な修繕工事の内容は
 小島 コンクリート部材のはく離、鉄筋露出については、はつりを行い、鉄筋に防錆剤を塗布後、ポリマーセメント系の修復剤で断面修復を実施しています。ひび割れ補修については、エポキシ樹脂注入補修や充填工法を行っています。鋼橋における塗膜の劣化補修は、現状では全面塗替えを基本としていますが、今後は老朽化での維持管理費が増えることが予想されるため、補修部位を特定した部分塗替えも検討しています。

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