埼玉県南東部に位置するさいたま市は、東北、上信越、北陸方面からの最初の玄関口として東日本の対流拠点都市に位置づけられている。人口は約129万人で、平成15年に政令指定都市に移行したが、都市計画道路整備率が51.6%と他の都市に比べて遅れている状況で、効率的な幹線道路の整備が求められている。保全においては、措置段階判定の橋梁は比較的少ないが、長寿命化修繕計画では268橋が対象となっており、その対策に取り組む必要がある。整備中の路線や管理橋梁の補修・補強状況について同市建設局土木部長の小島正男氏に聞いた。(大柴功治)
さいたま新都心がTEC-FORCEの進出拠点に
広域防災拠点としての位置づけが高まる
――さいたま市の概要からお願いします
小島 平成13年に浦和市、与野市、大宮市が合併してさいたま市となり、平成15年に政令指定都市に移行しました。その後、平成17年に岩槻市と合併しています。人口は約129万人(平成29年8月現在)で、まだ人口増加の傾向が見られますが、今後10年間ではさいたま市でも人口減少に向かうかどうかの岐路に立つのではないかと考えています。
面積は約217 k㎡で、東西、南北ともに約20kmです。市西側に一級河川荒川、東側には一級河川綾瀬川が流れ、中央部に大宮台地があり、全体的には台地と河川に沿った標高3~20mの平坦な地形となっています。また、東京都心部から約20~40kmと非常に近く、東京の都市機能の影響を多く受けています。
平成28年3月に改定された広域地方計画の首都圏広域地方計画では、ヒト、モノ、情報において東日本を連結する対流拠点都市に位置づけられました。防災面でも、国の機関が集積するさいたま新都心がTEC-FORCEの進出拠点として位置づけられ、平成28年7月に関東地方整備局と日本大学、さいたま市で、TEC-FORCEによるキャンパス使用に関する協定を締結しました。首都圏をバックアップする広域防災拠点としての位置づけが非常に高まっていると言えます。
優先的に整備する幹線路線を定めるとともに
生活道路の整備事業も推進
――道路の整備方針は
小島 都市計画道路の整備率が平成28年度末時点で51.6%と、ほかの政令指定都市に比べて整備が遅れている状況ですので、幹線道路の整備を効率的に進めていく必要があります。そのため、5年ごとに期間を区切り優先的に整備をする路線を定めた道路整備計画を平成20年度に策定し、平成21年度から取り組んでいます。現在は、平成25年度までの第1期整備計画をふまえて、少子高齢化や人口減少など社会情勢の変化にも対応するため、26年度から30年度までの第2期整備計画を進めているところです。
都市計画道路を初めとした幹線道路の整備を進める一方で、市民ニーズの高い生活道路の整備については、「スマイルロード整備事業」と「暮らしの道路整備事業」を展開しています。幅員4m以上の現道の舗装・側溝整備が「スマイルロード整備事業」で、4m未満の道路で沿線住民の方から道路用地の寄付をいただいて拡幅をともなう舗装・側溝整備が「暮らしの道路整備事業」となります。いずれも沿線住民の申請により整備を行っていて、申請後2年以内に事業着手ができるようにしています。
スマイルロード整備事業
暮らしの道路整備事業
新設跨線橋でLCC低減のためにC-5塗装系の採用を予定
――整備中の路線をお教えください
小島 おもな路線として、国道122号蓮田岩槻バイパス、国道463号越谷浦和バイパス(鶴巻ランプ)、都市計画道路町谷本太線(鴻沼工区)があります。
国道122号蓮田岩槻バイパスは延長9.1kmの幹線道路で、そのうちの6.3kmは4車線整備が完了していますが、国道16号北側の加倉北交差点から平林寺橋交差点までの2.8kmについては、暫定2車線の供用となっています。加倉北交差点での慢性的な渋滞の解消と東北自動車道岩槻ICへのアクセス強化を目的に、4車線化の事業を進めています。
事業中区間に、東武アーバンパークラインを跨ぐ岩槻跨線橋(上り線)があります。橋梁延長463m、幅員8.5mで、鋼7径間連続非合成鈑桁橋(257.5m)+鋼6径間連続非合成鈑桁橋(205.5m)で、事業区間における構造物比率は17%です。特徴としては、LCC低減や施工性などを考慮し、防食方法としてC-5塗装系の採用を予定しています。
岩槻跨線橋周辺整備イメージ図
――供用開始予定は
小島 橋梁部の完成は平成32年度、4車線供用の開始は平成34年度を目標としています。今年度から下部工工事を始め、来年度に上部工工事に着手する予定になっています。
――国道463号越谷浦和バイパス(鶴巻ランプ)は
小島 東北自動車道浦和料金所南側の国道463号バイパスと国道122号との交差部を鶴巻ランプとして整備中です。一部ランプは供用していますが、未完成部のランプを埼玉県から事業を引き継いでいます。
現在、国道122号の岩槻方面や東北自動車道の浦和料金所から国道463号パイパスを経由し浦和駅方面に直接行くことができないため、その先にある交差点で常時渋滞が発生しています。それを浦和駅方面に直接アクセス可能にするのが、Iランプで延長620m、橋梁部は橋長209.7m、幅員2.3~8mの3径間連続PC中空床版橋×3です。今年度は地盤改良を行っていて、来年度以降、下部工工事に着手する予定で、橋梁部の完成は平成33年度を目指しています。
国道463号越谷浦和バイパス(鶴巻ランプ)整備イメージ図
(左)整備中のIランプ/(右)整備後のDランプ(本線分流部)
そのほかの事業ランプは、東北自動車道浦和料金所からIランプに合流して、国道463号バイパスにアクセスするGランプ(延長82m)と、国道463号バイパス越谷方面から国道122号川口方面に行くDランプ(延長401m)となります。Gランプの一部が橋梁(橋長34m)ですが、ほかは土工区間で、3ランプ合計での事業進捗率は28年度末時点で58%、構造物比率は22%です。