コンクリート壁高欄に「防水塗装」を採用
膜厚は1mm~2mm
――本要領から「防水塗装」という聞きなれない塗装仕様が採用されていますね。この塗装の適用経緯と適用部位について教えてください
並川 コンクリート壁高欄は、雨水や凍結防止剤といった腐食因子の浸入によって内部の鉄筋が腐食・膨張して被りコンクリートが剥落することがあります。これまで、腐食因子の浸入を防ぐために、コンクリート壁高欄の表面に鋼橋の上塗り塗料として用いられるポリウレタン樹脂系の塗料を塗布してきました。当時、塗装後もコンクリート表面のひび割れの進行を見逃さないように耐候性に優れた硬質薄膜を採用しましたが、その思想は裏目に出て、コンクリートのひび割れから水の浸入を許したことで鉄筋が腐食・膨張し、さらに大きなひび割れを招いたり、錆汁が出てきたり、汚れやカビが付着する問題が生じてしまいました。
更に、鋼板で補強されたコンクリート壁高欄は、鋼板と壁高欄の隙間に雨水が浸入して鋼板が腐食し、下端から錆汁が垂れてきたり、鋼板下端が錆びて落下したりする事象が報告されています。
このような問題に対して、コンクリート壁高欄を全面防水することで腐食因子の浸入を確実に抑制するために、ひび割れに追従する厚膜で柔軟な塗料を採用することとしました。防水塗装という名称はこれまでありませんが、防水材料メーカーと塗料メーカー双方の参入を期待し、そのように名付けました。
防水塗装の使用部位は、壁高欄や地覆だけでなく、伸縮継手からの水の侵入や凍結防止剤によって腐食が生じやすい鋼製橋脚横梁天端、同じく腐食が生じやすい根巻コンクリートと鋼製橋脚の境界部、鋼箱桁の集水設備周りなど、幅広に適用する予定です。
――厚膜とおっしゃいましたが、どの程度の厚さを考えていますか
並川 ひび割れ追従性などの要求性能を満足するのに必要な厚さとなりますが、各社とも1㎜程度となっています。ただし、高欄外面など剥落防止のA種性能が要求されるような場合には2㎜程度になっています。
コンクリートは面荒らし後、刷毛やローラーで塗布
厚膜ウレタンを吹き付けないしコテ塗り
――都市高速の宿命として短時間で施工をしなくてはいけないケースが多いと思いますが、下地の要求レベルと塗装の回数はどの程度となりますか
並川 下地がコンクリートの場合は表面全体を軽く面荒らししてからプライマーを刷毛やローラーを使って塗布します。下地が鋼板の場合は腐食部を除去し、面荒らししてから犠牲陽極としての機能を期待して有機ジンクリッチペイントを塗布し、その上にプライマーを塗布します。
その後の構成は防水機能を有する厚膜ウレタンを吹き付ける、あるいはコテ塗り1層としています。吹き付け施工は、作業効率に優れますが飛散防止が必要となります。
剥落性能A種の性能が要求される場合は、2層施工する場合もあります。最後に耐候性に優れたトップコートを刷毛やローラーを使って仕上げます。
剥落防止工と同等の耐久性およびひび割れ追従性能を期待
――期待する要求性能は?
並川 品質規格は別表のとおりですが、その中でも特に重要視したのはコンクリート剥落防止工と同等の耐久性とひび割れ追従性です。約15年前に11号台場線の壁高欄に防水塗装を塗布したことがあります。同時期に施工したポリウレタン樹脂系の塗装と比較すると良くわかりますが、防水塗装を施工した部位は今でもひび割れが生じていません。その後、八重洲線における架け替え工事で使用され、都市内でも施工できることが確認されました。こういった成功事例が防水塗装の要領化を後押ししました。