耐震補強 今年度は5橋実施
ロッキングピア有する白沢こ線橋は架け替えへ
――次に保全の話題ですが、耐震補強の進捗状況についてお聞かせ下さい
山田 大規模地震の発生確率などを踏まえて、緊急輸送道路の耐震補強を推進しています。当面は、今後30年間に震度6以上の揺れに見舞われる確率が26%以上の地域を重点的に支承の補強や交換などを行い、耐震性能2を確保します。平成29年度は間渕大橋など5橋の耐震対策を実施します。加えて、昨年の熊本地震で落橋・倒壊の被害が生じたロッキングピアの補強対策を実施します。国道7号の白沢こ線橋(JR奥羽本線跨線部、45m、鋼2径間単純ゲルバー橋)については架け替えを実施すべく、今年度事業化します。
白沢跨線橋は架け替える(東北地方整備局発表資料より抜粋)
――架け替えるのですか、思い切りましたね
山田 現状の橋脚が相当傷んでおり、いわゆる耐震性能2を満足させることが補強では困難であるため、架け替えを判断しました。
橋梁点検 Ⅲ以上は224橋
トンネル点検 Ⅲ以上は29個所
――定期点検の実施状況と経過について
山田 平成26年6月に制定された定期点検要領によって、橋全体の健全性を4段階に分けて診断しており、その結果を各県の道路メンテナンス会議と道路メンテナンス年報として公表しています。
27年度までの橋梁点検および診断結果は1,303橋中、Ⅲ判定が223橋、Ⅳ判定が1橋でした。トンネルは73個所中、Ⅲ判定は29個所でした。特に跨線橋はメンテナンス会議において鉄道会社と協定に基づく包括協議を行うなど、跨線橋の点検を推進していきます。また、健全度Ⅳの1橋についてはすでに対策を完了しています。同Ⅲについても次回点検までに修繕するように計画して取り組んでいきます。
定期点検結果(平成27年度までの状況)
――橋種別、部位別の損傷状況は
山田 鋼橋に関しては桁端の伸縮装置からの凍結抑制剤を含む水の漏れに起因した損傷が見られます。具体的には桁端部や鋼製支承の防蝕機能の劣化、腐食などが見られます。また管内のRC床版はかなり傷みが多く、上面の土砂化も見られています。舗装に生じた亀裂から水が入り込み、凍結融解などを引き起こすことが原因と見られています。
PC橋やRC橋についてはひび割れや被りコンクリートの剥離等が見られます。ポステンT桁のグラウトの充填不良による損傷は見受けられません。
橋梁修繕事例およびトンネル修繕事例
耐候性鋼材橋 排水処理が原因で層状錆生じるケースも
有害物質含有塗膜対策 基本は湿式
――鋼橋では耐候性鋼材で保護性錆ではなく悪性錆の発生が生じるケースも散見されていますが、そうした損傷はありますか
山田 耐候性鋼材を採用した橋梁で排水処理が原因と思われる局部的なミルフィーユ状の層状錆が発生しているものは数橋あります。平成23年度はそうした損傷を補修するための手引書を出しており、水処理対策や塗装への切り替えを行っています。こうした対応については改築へも申し送りしています。
――鋼橋の塗り替えの際のPCBや鉛を含む既存塗膜剥離および素地調整方法について教えてください
山田 PCBや鉛などの有害物を含む既存塗膜の除去は、基本的に塗膜剥離剤など湿式で行いますが、しかし添接部や隅角部についてはどうしても湿式では取りきれません。そこはブラストで取るほかありません。ですので、塗膜剥離と素地調整を両立できる循環式エコクリーンブラストを多く活用しています。
――法面や自然斜面についての維持管理対策はどのように考えていますか
山田 カルテ監視はこれまでも継続しています。問題視している法面はありますが、順番を決めて対策を行っており、直轄については乗り切っていると考えています。ただ、法面の排水は北海道と東北はあまり大きな水害の経験がないため、能力的に小さなものとなっています。
――自治体とりわけ政令市を除く基礎自治体の管理能力を向上させるための橋梁点検研修はどのような成果を挙げていますか
山田 26年度から全道路管理者に5年に1回の近接目視による点検が道路法により義務付けられました。しかし担い手のうち、とりわけ町の5割、村の7割にあたる自治体は橋梁保全に携わる土木技術者を有していません。そのため点検に必要な知識と技能を取得するための自治体職員も対象とした研修について全国で統一されたカリキュラムに沿って当地整でも実施しています。3年間で延べ200人がこの研修を受講しており、今年度もトンネル、橋梁合わせて4回開催する予定です。
研修とは別の支援メニューとして老朽化に携わるメンテナンスなどの相談、疑問に対応する技術相談窓口を開設しています。市町村からの技術相談を道路部が受け、東北技術事務所や県と連携して支援し、より高度な技術を要する案件となれば、国総研、CAESARとも連携して要請にこたえていく枠組みとなっています。
直轄修繕代行 3年連続で事業化
今年度は万石橋を実施
――そうした高度な技術を要して補修補強および更新しなければいけない構造物は直轄修繕代行というメニューも26年の道路法改正によりできましたが、具体的な案件はありますか
山田 当地整では市町村から法令に基づく要請を受け、平成27年度は三島大橋(福島県三島町)、28年度は沼尾シェッド(同県下郷町)、29年度は万石橋(秋田県湯沢市)と3年連続で実施しました。
三島大橋は三島町が管理する町道宮下名入線の只見川に架かる橋梁で、高力ボルト(F11Tの遅れ破壊が主因)の破断・脱落及び鋼部材の塗装や床版の劣化損傷が進行しており、その補修を行ったものです。橋長131mの下路式鋼ローゼ桁で、とりわけアーチリブ部のボルト損傷が多く、このままでは破断、残存ボルトの負担増、さらなる破断本数の増加という負のスパイラルが懸念されたことから、高力ボルト19,400本を交換するとともに、塗装の塗り替え(6,370㎡)などを行いました。
沼尾シェッドは、シェッドでは初めての支援です。福島県南会津郡下郷町が管理する町道沼尾線に設置されている、延長189mのシェッドです。
建設後50年以上が経過し、現場を見てみると上部に設計値を超える土砂の堆積が見られました。詳細点検した結果、シェッド上部の防水機能が喪失しており、シェッド本体内部に水が浸入し、鉄筋のサビ、コンクリートのひび割れ・剥離が見られました。また、過去に補修した箇所において、補修材(炭素繊維シート)の内側へ水が浸入し、補修材の劣化や剥離も進行し、設計値の基準を超える土砂が堆積していました。
シェッド本体の負担を軽減するため、シェッド上部に堆積している土砂の撤去を行います。加えて、シェッド内部への水の浸入を防止するための漏水対策(防水工)を行い、劣化・損傷したコンクリートのひび割れ補修、断面修復を実施しています。現在は工事進捗中です。
万石橋概要(東北地方整備局公開資料より抜粋)
万石橋は橋長171mの9径間単純RCTゲルバー桁で、昭和14年に竣工してから77年が経過しています。28年度の直轄診断で桁全体に遊離石灰を伴う多数のひび割れや浮き、剥離、鉄筋露出、ゲルバーヒンジ部周辺のコンクリートから発錆限界を超える塩化物イオン量を検出しました。そのため塩害対策などを行うとともに、弱点となるゲルバー部の連結や支承の構成変更をこれから検討します。
――ありがとうございました