阿蘇長陽大橋 P3橋脚は内空断面にコンクリートを充填して補強
A1側は新たにアプローチ橋を建設
――阿蘇長陽大橋を見てきましたが、ここは復旧が早いと思いました
辻 PC4径間連続ラーメン箱桁橋である阿蘇長陽大橋は下部工の補修を施工中です。特に損傷が激しく、ひび割れが顕著だった中空断面のP3については将来的に問題があるかもしれないので、コンクリートを内部に充填しています。それ以外の橋脚も含めて、表面の保護や炭素繊維巻立補強を行います。具体的には、震災前の性能に回復させることを目標に巻き立て量はひび割れにより失ったコンクリートの引張強度分を、施工範囲については橋脚全体の約8割を補修する予定です。橋台の再構築および支承の取替をA1側もA2側も行っています。A2側は再構築のみで、A1はアプローチ部として5連ラーメン橋の構築を行っており、現在、上部工の打設に入っています。阿蘇長陽大橋の箱桁部分の補修についても施工中です。炭素繊維巻立補強および表面保護工を施工します。ただ、表面保護は後から施工しても問題ないと思いますので、今回の応急復旧でどこまでやるかは検討中です。
長陽ルート被災状況図/周辺状況写真(熊本復興事務所提供)
長陽ルートの進捗状況①
阿蘇長陽大橋復旧状況
戸下方面から戸下大橋、阿蘇長陽大橋を望む
阿蘇長陽大橋の橋脚・桁補強(左・中写真)/アプローチ橋の建設も進む
――表面保護とはどのようなことでしょうか
辻 上部工及び橋脚部に施工する炭素繊維を紫外線による劣化や衝撃から守ることです。上部工箱桁外面は、高耐久性のウレタン樹脂系塗料を使用し、橋脚部にはポリマーセメントモルタルによる保護を行います。また、炭素繊維巻き立てを行わない上部工の張出床版下面には、ケイ酸塩系の表面含浸材を使用し、微細なひび割れの対策を行います。
戸下大橋 桁崩落個所は仮橋を架設
アプローチ部の巨岩や崩落斜面を補修補強しながら施工
――戸下大橋はどのような状況ですか
辻 不安定な上部の斜面を切り下げてのり面対策を十分にしたうえで、24時間体制での戸下大橋の補修を行っています。基本的に現橋梁を使い、崩落したところは仮橋で渡している状態です。応急復旧としては、この仮橋を活用して通すことになります。また、桁の損傷が著しい区間(P1~P2とP3~P4の間)は、上部工を架替えていきます。P4~P11までは増杭(マルチドライバー工法などを採用)をして連結させて、杭の水平耐力を回復します。
戸下大橋復旧状況
増杭の施工
戸下大橋(左)仮復旧のため山側に拡幅している/大きく山側を補修している個所 新たに設置した桁や仮橋も見える(右)
――崩落箇所の架け替えは大変ですね
辻 そのため、夜間も作業を行っています。崩壊の危険性があるのり面の補修作業も行う必要があり、橋梁とのり面の並行作業ができないためです。またそれぞれの工事の内容によっては道路利用を制限することもあります。のり面対策と戸下大橋の橋梁補修との工程調整が非常に厳しいです。また、戸下大橋へは西側(立野側)は阿蘇長陽大橋の補修をしているので通行できず、東側(戸下側)からの一方通行にしかなりませんし、現場条件は本当に厳しいです。斜面対策も巨岩の除去もかなり終わり、崩落対策工や吹き付け工などもかなり進捗していますが、まだオーバーハングした岩が残っている状態です。天候を見ながら行っていますが、慎重に確実に進めていきたいと思っています。
橋梁本体以外の対応図
浮き石の除去
既設法面補修
自然斜面対策中の写真(岩の除去など)
岩除去後の斜面対策(補強アンカー、法面吹き付け)
――上部工の架け替えは
辻 現在、施工中です。仮橋は完了していて、構造的には問題ないものとなっています。全体の応急復旧完了の予定は夏を目指していますが、現場条件としては非常な厳しさが続きます。
――今年中でも早いくらいだと思います
辻 復旧に対する期待感は、大きいものがあります。職員も現場の方も責任感や意識が高く、一日でも早い復旧を目指し、いろいろな知恵を出しながら頑張っています。ただし、現場としては雨が多く、谷風もかなり強いので、作業に入る時は現場を必ず確認してもらい、工事安全基準を超えたらすぐに施工を中止して退くよう指示しています。安全管理をしっかり行うことも私の大きな仕事であると感じています。
――戸下側には地震後2週間くらいのときに行きました。通行ができなくなり、非常に不便なので、一刻も早く復旧してほしいと地元の人が話をしていました
辻 川を挟んで南阿蘇村は直接行き来できない状況です。熊本側の立野地区には地域の方が利用されていた病院があります。また、いまだ避難勧告地域になっており、立野地区の方は大津側や熊本側に移られているとも聞いています。一刻も早く村道栃の木~立野線をつなぐことが南阿蘇村、阿蘇全体の復旧につながると思っています。
――ありがとうございました
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