海岸部の道路で塩害が発生
錆や腐食の進行が早い橋梁も
――管内には山間部や海岸部の路線があります。塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化はありますか
淡中 西湘バイパスの大磯西IC跨道橋(RC橋)で、潮風の浸透が原因と思われる塩害が発生しました。主桁部分にうきおよび鉄筋露出箇所があり、点検時にうきの範囲に進行があったので、平成27年度に断面修復などの補修を行っています。
大磯西IC跨道橋 補修前/補修後
またコンクリート橋だけでなく鋼橋もありますが、潮風の影響で錆の進行が他の場所と比べると早くなっていますので、注意をしています。
箱根新道では、冬期に撒く凍結防止剤の影響で止水処理がうまくいっていない箇所で、鋼構造物の腐食傾向がほかの場所より若干高くなっています。
――橋梁の塗り替え実績は
淡中 昨年度、塗り替えはありませんでした。横浜ベイブリッジの塗り替えが始まっていますが、こちらは首都高速道路にお願いをして実施してもらっています。そのほかに、今年度は西湘バイパスの小余綾高架橋(3,500㎡)と、藤沢バイパスの伊勢山新橋(360㎡)の2橋の塗り替えを予定しています。
――のり面の対策についてはどのようにお考えでしょうか
淡中 のり面も橋梁と同じで水回り対策が重要だと考えています。昨年、箱根地区で小規模な土砂災害が発生しましたが、排水枡から水があふれ、その水がのり面を伝って崩れたものでした。排水溝から水があふれて崩れることが多いと聞きますので、点検をして枯葉などが詰まっていれば除去するというメンテナンスをしっかりと行っていく必要があると考えています。
――重点的に管理をしているのり面は
淡中 箱根地区と国道246号の山間部ののり面になりますが、国道16号の横須賀地区にある崖地ののり面も注意するべき箇所となっています。
――具体的なのり面補強事例がありましたら教えてください
淡中 2年前に、国道1号二宮地区でのり面のブロックが下部の石積みを押して、石積みにひび割れが発生しました。応急対策として、平成27年3月に大型土のう282袋による石積み補強を行い、6月には最も安全度の低い6箇所をロックボルトで補強しました。のり面の安定をはかる本対策として、同年9月から12月にのり面上にモルタル吹付け、ロックボルト工(330箇所)を行い、のり尻部に土留工として山留杭(H-300@1.5m、L=8m)の打設を行うとともに、鋼矢板にて土留を行い、前面に化粧コンクリートを打設しました。
補強前/石積みひび割れ発生状況
大型土のうによる石積み補強/補強後
対策工事概要図(平面図/横断図)
「小さいことからこつこつ」と保全を行う
施工方法の検討と工夫で安全性確保と経費削減を目指す
――新技術やコスト削減での採用していることがありましたら教えてください
淡中 これまでは損傷が限界まで進んだので、すべてを取替えるというケースが多かったと思いますが、そうなる前に「小さいことからこつこつ」と保全を行っていくことを考えています。
ひとつの例となりますが、国道1号の二宮町にある押切橋の歩行者用転落防止柵が錆びて非常に汚くなって、地元の方から苦情がきました。防止柵を取替るという話になりましたが、強度的には問題なく、コストもかかるので取替えではない対応を検討していろいろ調べた結果、錆転換塗料というものがありました。赤錆を黒錆に変える塗料ですが、銀色で亜鉛メッキに近い色をしているから、塗装をしても違和感がありませんでした。昨年の秋に塗装して様子をみている段階です。新しい技術の導入については、引き続き取り組んでいきたいと考えています。
押切橋 歩行者用転落防止柵の錆転換塗料での補修
また、照明灯が腐食するケースがよくあります。根元の腐食は安全上、建替えが必要ですが、意外に多いのが開口部蓋の腐食です。蓋の突起部に水がたまり、そこが腐食するのです。これも建替えではなく開口部の補強部材を考案して、それで補修を行うというコスト削減を図った取り組みを行いました。さらに老朽化した照明灯の建替えで、対象の10mの照明柱を切断加工して再利用した上でLEDに取り替えるといった材料費の削減を目的として取り組みも行っています。
照明灯開口部の補修
照明灯の改修(再利用後)
これらは地味な取り組みですが、照明灯の場合は大量の本数がありますから、積み重ねでかなりのコスト削減になると思います。
予算や経費について非常に厳しくなった一方で、利用者から求められる安全性の水準は高くなっています。工夫できるところはどんな小さなことでも工夫して、経費を節約し、安全性の確保と機能向上をしていかなければならないと考えています。
――ありがとうございました