橋梁383橋とトンネル25本を管理
――保全について、管内の橋梁とトンネルの内訳について教えてください
淡中 橋梁は383橋で、鋼橋が169橋(44%)、コンクリート橋が214橋(56%)となります。供用年次別では、50年未満が209橋、50年以上が146橋、その他建設年次不明が28橋です。
トンネルは25本(総延長3,990m)で、50年以上のものが19本、50年未満が6本となり、延長別では100m以上が22本、100m未満が3本です。50年以上のトンネルが多いのは、国道16号の横須賀付近に旧日本海軍が掘ったトンネルが多いためとなっています。国道246号のトンネルは比較的新しいものが多くなっています。
保土ヶ谷バイパス高架ランプ橋で床版損傷が発生
供用開始後40年以上が経過し、床版などの損傷が進む
――点検を進めての全体的な損傷状況は
淡中 橋梁の桁自体が大きく損傷を受けているような重篤な症状は管内では発生していません。ただし、水回りの影響で支承部分などに腐食が発生している事例はあります。
昨年度、保土ヶ谷バイパスの南本宿高架ランプ線で床版に破損が発生しました。47年前の昭和47年に建設された床版厚210mmのもので、増厚などの対策は未実施でした。
穴が開くまでにはいってなかったのですが、平成29年2月8日の近接目視点検時に道路中央部の表面の舗装と床版下面にき裂が見られ、貫通のひび割れが何本か入っていることがわかりました。さらに砂利化も進んでしまっていたので、全面通行止めにして床版部分打替えの緊急工事を行いました。車線規制時間の制限があり、工事をできるだけ短くするため、2月18日 20時から既設舗装と床版損傷部を撤去し、補強鉄筋設置後にジェットコンクリートを打設のうえ、舗装仮復旧を翌7:30に完了させて、2月20日21時30分から翌5:00に床版上の防水工と本舗装工を実施しました。
保土ヶ谷バイパス 南本宿高架ランプ線での床版部分打替え
――同様のケースは他でも発生していますでしょうか
淡中 緊急工事を行わなければならないケースはありませんが、保土ヶ谷バイパスの橋梁は、横浜町田立体区間を除き昭和40年代に建設されており、長期にわたり重交通を直接支えてきた床版やジョイント部において損傷が集中しています。サグ部が関係しているのか、施工時の問題なのかは不明ですが、1日約16万台の交通量ですので、かなりの構造物に疲労が蓄積している可能性があると考えています。現段階では、全面的な床版取替え工事などの計画はありませんが、定期的な点検サイクルを回していくことで、重篤な損傷にならないうちに早めの措置をできるように努めています。
水回りの処理がうまくできていない橋梁もあります。元設計で排水処理がきちんとされていない場合もありますし、排水溝に土砂が詰まっているのにメンテナンスができていないという問題もあります。水はけが悪い橋梁については、腐食が進んでいる場合があります。そうした細かいところをどのように手当てしていくか。予算と手間の問題がありますので、点検にあわせてメンテナンスを行う、足場を2回組むのではなく1回ですむようにするなどの工夫を事務所で検討をしています。一歩一歩の工夫を体系化していかなければならないと考えていますが、発注時の問題もあります。点検業者が排水溝に土砂が詰まっていることに気づいたとしても、点検が終了し足場を外した後、その報告を受けても、維持業者が再度足場を組んで作業する二度手間になってしまいます。こうしたことについては、一度に作業したほうがいいわけであり、点検サイクルを回していくなかで、見えてきた課題です。
国道246号のトンネルで幅数mmのひび割れが発生
耐震性能3の補強は全橋梁完了
――トンネルについてはいかがでしょうか
淡中 横須賀市内の国道16号には供用開始後40年以上経過したトンネルが16箇所中15箇所あります。老朽化の進行とともに内空が狭く、高さ制限を設定しているため、新浦郷トンネル、新船越トンネル、新田浦トンネル、新吉浦トンネルの4トンネルで、内空断面の拡幅を行い、交通の安全性の確保や円滑化を図る改修事業を行っています。
また、国道246号の諸淵トンネルの静岡側坑口から約70m付近のアーチ部に変状が発生しています。水平方向(トンネル道路軸方向)のひび割れと横断方向円周(トンネル目地方向)の部分的なひび割れがいずれも幅数mm単位となっているので、応急対策を行いながら様子を見ているところです。老朽化というよりも地山自体が動いているための問題と考えています。
ひび割れの応急対策/(右)左の写真のひび割れを赤線で表示したもの
――橋梁の耐震補強の進捗状況は
淡中 落橋、倒壊を防止する対策(耐震性能3)はすべて完了しています。現在は、大きな地震があっても軽微な補修で緊急輸送道路として使える速やかな機能回復が可能な性能を目指す対策(耐震性能2)を進めています。具体的には、橋脚全体の補強、支承部の補強(支承交換や水平力を分担する構造や段差防止構造装置の設置)となります。その達成率は約8割となっています。
――熊本大地震を受けてのロッキング橋脚対策は
淡中 国道1号の横浜駅東口地下広場を跨ぐ新高島橋、同1号の東海道本線・京急本線を跨ぐ青木橋、国道16号の東名高速道路を跨ぐ第1跨道橋、第2跨道橋の4橋があり、3年以内の対策完了を目指して準備を進めているところです。
――橋梁の長寿命化計画に対してどのようにお考えでしょうか
淡中 点検サイクルをきちんとまわしていくことが重要だと考えていますし、5年に1回、近接目視を基本とする定期点検が法定化されましたので、それに従って実施していきます。
現在、平成30年度までにすべての点検が完了できるように計画を立てて進めているところです。早期の補修が必要とされる橋梁については、順次計画に組み込んで補修を行っていきますが、今回の一巡目の点検結果をふまえて修繕の実施計画も立てていきます。しかし、できるだけ早く、軽い損傷の段階で補修するのが望ましく、そのための予防措置として何ができるのかを検討しています。そのためには、細かい損傷でもしっかり対応していくことが大事です。その代表的なものが先ほど述べた排水処理の対応だと思います。元設計で排水のパイプが小さくて枯葉などが詰まるのであれば、大きいものに変えたほうがいいとか、変えるのであれば点検のときにあわせたら、足場や交通規制を1回で済ませられるからいいのではないか、という議論を始めています。
補修の仕方を工夫しないとかえってダメージを与えることもあります。できることならつくった橋をそのままずっと使い続けるようにするということが大事だと思っています。壊れたら直すという時代から壊れる前に手当てをする時代に変わってきているので、日々の積み重ねがますます重要になっています。
――架け替えを予定している橋梁はありますか
淡中 重篤な損傷を受けている橋梁はないので、現段階での計画はありません。
――大規模修繕の予定は
淡中 こちらもありません。まだ部分補修で対応できています。
――部分補修での例がありましたら
淡中 ゴムジョイントが損傷して水が漏れるケースがあります。その場合は場所に応じてですが、フィンガージョイントに変えるなどの補修を行っています。
――床版防水ではどのような対応を取っていますでしょうか
淡中 一般的なもので、塗膜系防水とシート系防水を使い分けています。