会員に対して安全・環境汚染対策を発信
橋塗協 奈良間会長インタビュー
一般社団法人 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会
会長
奈良間 力 氏
日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会(以下、橋塗協)は、約90社の会員を有する鋼橋塗装会社の技術・安全を研鑽し、発注者等に発信し、会員各社や鋼橋塗装会社の地位向上に努めている。社会インフラの老朽化や長寿命化修繕計画が進展する中、鋼橋防食の必要性はさらに高まっているが、そうした中でどのように活動してるか、PCBや鉛を含有する塗装塗り替えなどのトピックも交えて、奈良間力会長にインタビューした。(井手迫瑞樹)
――有害物質を含む既設塗膜除去における環境や人体への影響に対しての日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会(以下、橋塗協)の取り組みをお聞かせください。
奈良間会長 PCB、クローム、鉛といった環境汚染物質や発がん性物質の対策では、行政指導に準拠してそれら物質のケレンや剥離を行い、その上にコーティングをしているわけなので、作業員の安全性や環境汚染に対する問題として、技術的なことを含めて会員に対するさまざまな指導に取り組んできました。しかし、環境汚染対策における効果的な塗膜除去を含む塗替え方法については、まだ提案はできていません。
日本塗料工業会さんや日本塗装技術協会さんも多少は関与していると思いますが、国交省さんや厚労省さんの指導に対する技術対応の話になると、橋塗協に問い合わせがきます。協会としては、実際の施工のなかでどこまで対応ができるのかを研究会や委員会に参加して、施工サイドとしての問題点や今後の対応についての意見具申や陳情をさせてもらっています。
当然ながら国が定める基準や通達に準拠することが協会の立場です。それに即した作業者の安全対策を会員に発信しています。技術的な点については、毎年、県から10近く依頼されて、橋梁塗装の研修会を橋塗協として行っています。防食便覧や厚労省通達を守るという点で、素地調整や塗装に絡む安全などのことは県や市町村レベルではわからないことが非常に多く、その方法を伝えています。
最終的にどのケレン手段・方法を選ぶかは、発注者の判断になります。東京都で厚労省鉛通達がでたときに、東京都から3回ほど呼ばれて、橋塗協の考えを求められました。東京都の塗装工事の大半を占める3種ケレンだったら動力工具でさび部をケレンし、活膜部は鉛を含まない上塗を軽く目粗しするだけなので、鉛粉じんは殆どなく大丈夫であると考えると、また、1種ケレンで行う場合には剥離剤で落としてブラストをしっかりやるしかない、という話はしています。
「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落としにおける労働者の健康障害防止について」文書の取り扱いは、各行政に扱いがかなり違って、一律的ではありません。首都高速道路はじめ首都圏は非常に厳しい規制、管理を考えていただいていると思っています。
――ある自治体の技術者から次のような話を聞きました。ある物件で錆が相当出ているのでブラストを打ちたいが鉛規則があってできないので、次善の策として循環式エコクリーンブラストを考えている。しかし、足場の積算がないので、それをやる理由を上司に説明しなければならず、技術者としてはやりたいが、官僚としては抵抗がある、ということでした。関連団体に国などを動かしてもらって、いったん積算ができると非常にスムーズに入れやすいので、もっと中央で発信して欲しいし、そういうものがないので塗装をなかなか本格的に指導できない、とも話をされていた。それはこの自治体だけのことではないと思います。
奈良間 そういった声は技術者サイド、現場サイドからもかなりあります。
――そのために、橋塗協が団体として活動していくことは。
奈良間 当協会は国交省さんや各行政の委員会のメンバーに入っていますので、その都度話はさせてもらっています。
循環式エコクリーンブラスト工法や塗膜剥離剤は、最終の廃棄物を少なくするという点では有力な選択肢のひとつですし、作業環境に対しても有効だと思います。
クローズドな空間でのブラストは、作業環境として(オープン状態よりも)作業者に大変負担がかかります。そのための安全対策は、剥離剤を使用する場合でも、バキューム式のブラストを使う場合でも、歩掛としては相当実費用としてかかってきています。それは1割、2割ではなく、何倍といったレベルになっています。
――廃棄物処理まで考えて歩掛をやるのでしょうか、それとも分けるのでしょうか。
奈良間 協会が技術的アドバイスをするという前提でいえば、全部入れるということになるでしょう。ただ、業界全体の問題と考えて日本塗料工業会さんも含めて取り組みをしないと難しいと思います。
足場ひとつでも、環境対策を行い、クローズドな塗装システムにすると、費用が当然余計にかかってきます。それが確実に積算上に反映されていて受注しているかといったら、必ずしもそうではありません。結局、歩掛コストの問題と発注者の予算の問題になります。