床版取替でグループ会社との連携を強化
IHIインフラ建設 社長インタビュー 橋梁部門保全分野へのシフトを加速
株式会社IHIインフラ建設
代表取締役社長
徳山 貴信 氏
PC・鋼製橋梁の新設と補修・更新、水門設備のメンテナンスを行う同社は、橋梁部門の大規模更新事業での売上を伸ばしている。栗本鐵工所に入社後、栗本橋梁エンジニアリング社長、IHIインフラシステムを経て、昨年6月に社長に就任した徳山社長に、今後の取り組みを聞いた。(大柴功治)
「誠実、進取、勤倹」で仕事に取り組む
――昨年6月に社長に就任されて1年が経過しました。この1年の感想は
徳山社長 楽しいですね。社長業が楽しいというよりは、弊社のお客様満足度が高いことを肌で感じられることを嬉しく思っています。社員がお客様の望んでいることを先回りして行い、真摯にきめ細かい対応をしているため、お客様から感謝の言葉をいただくなど、信頼されていることを実感しています。
――これまでの職歴と仕事に対する考え方を聞かせてください
徳山 橋梁の設計がやりたくて栗本鐵工所(2007年11月に橋梁部門を栗本橋梁エンジニアリングとして分社化。2009年11月、栗本橋梁エンジニアリングはIHIインフラシステムに統合)に入りましたが、設計は7年しかやっていません。その後、CADや原寸のシステムが立ち上がる時期でしたので、社内ネットワークを含めシステム構築の業務を担当しました。原寸システムの構築時に製造で必要な技術的なことはすべて把握しました。そして、原価管理や経営管理の部門を経て、新規事業開発に携わりました。新規事業開発では、小型風車や小水力発電の開発に取り組みましたが、テレビ番組の企画で8mのお好み焼きをつくることになって、その鉄板づくりに参加させてもらったことはいい思い出になっています。ベースとなっているのは設計などの工場系ですが、新規事業や経営企画などのさまざまな仕事をしてきたことが、いま役に立っていると思っています。また、どんなことでも新しいことが好きで、挑戦することを探し求めていました。
どんなことにでも挑戦――8mのお好み焼き鉄板
2005年7月に鉄構事業部長に就任しましたが、業界全体が揺れ動いた厳しい時期と重なり、事業としては完全な赤字で「仕事をしないほうがマシ」とまで言われました。それでも、技術の伝承はしていかなければならないので、受注をしていましたが、社内で理解はされませんでしたし、それまで積み上げてきた利益を食いつぶしていたどん底の時期でした。この経験があったことで、困難な状況にあっても平静でいられます。
2007年11月に橋梁部門の生き残り戦略のひとつとして分社化が行われ、栗本橋梁エンジニアリングの社長に就任しました。営業評価指標を切り替えるなどの経営改革を行い、現実には分社化して2年で統合されましたが、3年目には利益が出る予想になっていました。社長就任時につくったキャッチフレーズが「誠実、進取、勤倹」です。この3つが私のポリシーで、現在も変わっていません。
大規模更新事業の売上を
3年後には50億円に
――社長としての抱負と今後の売上計画を教えてください
徳山 橋梁の新設と保全、水門設備の保全が事業分野となっていますが、橋梁部門は、保全分野へのシフトを加速していきます。また働き方改革を行い、週休2日の実現を含めた「よく働き、よく休む」会社にしていきたいと考えています。
現在の橋梁部門の年間売上額は約120億円です。大規模更新事業がこの3年間で10億円に満たないところから、20億円強まで売上が伸びてきていますので、3年後には約50億円にすることが目標です。そのため、今年度は30億円から35億円ぐらいを受注しないと目標の達成が厳しくなります。大規模修繕を含めた補修の現在の売上は、約10億円となっています。これも3年後に約20億円にしたいと考えています。新設の現売上が90億円から100億円ありますが、今後目減りすることが予測されるので、3年後には60億円から70億円になると見込んでいます。長期的には、補修事業50億円、床版取替をはじめとした大規模更新50億円、PC橋新設50億円で、合計150億円が売上のベースになって、さらに20億円くらいをプラスできる構成にしてきたいと思っています。
東北道 吾妻橋床版取替工事(撮影 大柴功治)
床版取替ではグループ会社の
IISとIKKと連携を進める
――保全分野へのシフトを加速するとのことですが、具体的に取り組んでいることは
徳山 まずは床版取替ですが、市場としてそれほど注目されていなかった5年くらい前から受注戦略を立てて取り組んでいます。そのなかでノウハウが蓄えられてきましたので、それを活かし市場が伸びていくのにあわせて、確実に受注することが重要課題になります。弊社単独で動くものもありますが、グループ会社であるIHIインフラシステム(IIS)やIHI建材工業(IKK)とも連携して動いていきます。そのために、3社で床版取替に関する部会を4月に立ち上げました。親部会は四半期に1回程度、WG活動を月1回程度のペースで行い、専門技術や設計・開発に関する情報、営業情報の共有をはかっていきます。IKKの工場でプレキャスト床版をつくることも視野に入れていて、3社で受注対応をしていく形です。
床版取替以外ですと、鋼構造物系の長寿命化工事のさらなる受注を目指して取り組んでいきます。鋼構造物のみの補修工事は現在も行っていますが、大規模更新で床版取替と一緒に発注されるものがかなりあります。そのような工事は両方の技術を一社で有し、かつ技術者を融通できるという強みを活かせます。
また、これまで橋梁部門にはPC事業部と橋梁事業部のふたつの事業部がありましたが、4月1日の組織改革で橋梁事業部に統合しました。PC・鋼構造物、新設・保全の区別なく、設計および工事部門を集約することには大きなメリットがあると考えています。事業部のなかには床版取替の専門の部隊も置きました。
今年度の受注案件から
原則週休2日の呼びかけを行う
――働き方改革について具体的に教えてください
徳山 絶対に進めなければならない改革です。なぜ現場だけ休めないのか。疲れた体で仕事をすれば、ミスも増え、事故も起きます。「災害を起こすな、健康は大事」と言いながら、休めないのは良くない状況です。なによりも大事なのは社員が心身ともに健康であることで、それが実現してこそ安全も担保できると思っています。
具体的には、今年度に受注した案件から原則週休2日の呼びかけをしています。復興事業は工期の問題で難しいものがありますが、それでも前向きに取り組んでいきます。また、協力会社には週休2日を前提とした見積もりを出してもらうことを検討していますし、4月1日からはこれまで月に1回しか支給されなかった現場従事者の帰宅費用を月に2回としました。そのような取り組みをしながら、できるだけ休める環境をつくっていきます。
――女性技術者のキャリア形成についてはいかがでしょうか
徳山 女性技術者は今年も3人入社しており、漸増傾向です。ただし、定着してもらうためには男社会的な要素をなくしていかなければなりません。
女性も男性も同じですが、技術者としての教育プランを対話のなかでしっかりやっていく必要があります。年度目標やキャリア形成目標について部下と上司の対話がまだちょっと少ないと感じていますので、職場での対話会をやりたいとも思っています。さまざまな対話をとおしてコミュニケーションを活発化して、女性をはじめ社員がものを言いやすい雰囲気をつくっていきます。