十勝清水IC Bランプの路肩が陥没
鋼矢板で陥没箇所の安定化を行い陥没箇所の盛土及び排水管復旧
――狩勝第二トンネル以外にも十勝清水IC付近などで大きな被害があったと聞いていますが
加納 十勝清水ICは盛土構造のランプとなっていますが、Bランプの路肩に陥没が発生し、盛土や排水管にも被害が出ました。原因は台風の大雨による排水のオーバーフローだと思います。高速道路以外でも台風による災害が各地で発生しており、災害箇所の復旧も行われている状況でした。その中で、Bランプの復旧を行うために調達可能な資機材集めて復旧を行いました。
Bランプの復旧は、夜間(左写真)のため、本線外の詳細な状況がわからないため、本線側から大型土のうを陥没部に大量に投入しました。しかし、復旧箇所で再度陥没が発生したため、陥没箇所の安定化と拡大を防ぐために、施工や資機材調達を考えて鋼矢板による復旧を考えました。幸いにも、鋼矢板と打ち込み機械を準備することができたため、鋼矢板による対策を行うことが出来ました。
鋼矢板の施工は本線側からとなるため、9月4日から5日の夜間通行止めで施工を行いました。なお、本線外の復旧は、本線外の側道から盛土と排水管の施工が行えることが確認で来ましたので、復旧は本線外からの施工で対応しました。
――Bランプもこの状況でよく早期供用できましたね
加納 陥没が発生した箇所が路肩の部分であったため、路肩規制とランプの車線規制で対応することができたのが大きいと思います。
路肩の一部陥没以外に盛土内に設置されている高速道路の排水を外の流末に流すための排水管に破損が確認されたため、排水管破損箇所からの水漏れにより陥没箇所の拡大や盛土崩壊が心配されるため、排水管補修も急いで行いました。
陥没箇所を含めた損傷箇所全体を見て復旧や補修を考えることが必要です。
狩勝第二トンネル東坑口と同様に、必死に復旧を行いました。排水管の復旧は、排水管に流れ込む水量を上流側でポンプアップを行って低減し、破損箇所に仮設ポリエチレン管を接続して排水流末を迂回させて、損傷箇所への排水の流れ込みを防ぎました。
11個所で洗堀が発生
洗堀防止は護岸工や護床工で対応を検討
――橋梁下部工の洗堀による損傷状況は
加納 橋梁下部工で11か所の洗堀が生じています。
今回の台風で基礎杭の埋め戻し土が河川増水により流出し、基礎天端が露出したものやケーソン基礎では杭体が杭天端から2.5m程露出したものがあります。
――開発局所管や市町村所管の橋梁では直接基礎形式で流失も含めた大きな被害が見られていますが、NEXCO所管の橋梁ではそうした形式の被害はありますか。また、こうした事態を踏まえて、直接基礎形式の橋梁を補強する、ということはありますか
加納 河川全てに護岸工が行われていませんので、河川の氾濫等で被害が懸念される箇所に関しては何らかの護岸工を考えておく必要があるかも知れません。
今回の国道274号の被害を受けた橋梁群でも河川が氾濫し水が橋台背面を回り盛土が崩れ、更には橋台も損傷しているようです。
想定外の事態が起きたわけですが、今後は、そうした状況が起こらないように護岸工の設置はしておくべきなのかな、と思います。
――直接基礎の橋梁に対し増杭補強するという選択肢はありませんか
加納 今回、高速道路で被害を受けた箇所に直接基礎はありませんが、そのような構造があれば一つの選択肢とは思いますが、供用中の橋梁に行うというのは難しいですね。それよりは河川内の橋脚に対して洗堀防止を行うことが重要だと思います。
河川内の橋脚は洗堀を想定してフーチング天端や杭天端の位置を決めているはずです。さらに増水等による洗堀に対して抵抗できるように橋台や橋脚の周りに護岸工や護床工などという防護をやるべきと思います。
――洗堀された橋脚11か所に対する恒久対策は
加納 護岸形式にするか、河川内橋脚の洗堀対策を行うかは我々だけで決めることができません。河川管理者と協議した上で具体的な対策を決定します。河川内の施工については、今渇水期以降を計画しています。
――真冬の施工ですか。しばれますね
加納 出水期にできることは前準備ぐらいで、施工そのものはできません。施工可能期間は11月~翌3月末と考えています。冬季でも除雪さえできれば施工できます。
環境的には極寒ですがやるしかありません。気温条件からコンクリートが必要な箇所もできるだけプレキャストコンクリート部材やコンクリート二次製品を使う形で施工を考えています。生コンなど冬季施工が難しい工程は極力避けます。
――JR北海道、国道274、同38号という交通インフラが大きな被害を出して不通になった中でNEXCOが所管する高速道路が暫定的にせよ供用を維持できたため、道東の孤立化を防ぐことができました。これは地域住民や、道、北海道開発局からも高い評価を得ています
加納 本当にありがたいことです。高速道路が延伸する際に、維持管理等のコスト面等から不要論も出ましたが、それを払拭できる成果、リダンダンシーを発揮できたと思います。
法面損傷部はドレーンかごや布団かごで確実に穴埋め
洗堀対策は11月以降の渇水期に施工
――橋梁、トンネル以外の損傷は
加納 法面が47箇所ほど損傷しています。応急復旧では金網に流出防止シートを設置した篭に砕石を投入したドレーンかごにより復旧を行いました。
法面の復旧は、昨冬までに完了しています。恒久対策では、復旧で使用したものが使える場合は使用し、使用できない状態のものはドレーンかごや布団かごで確実に補修を行う計画です。これらの緊急復旧等や台風後の点検は、グループ会社や災害時応援協力会社が一丸となって徹夜で作業を行い対応することが出来ました。